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ひな祭り…ほのぼのと過ごす? それとも段を占領?

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ひな祭り…ほのぼのと過ごす? それとも段を占領?

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第3章 ひな段争奪戦開始!

「実況は蒼空の椎名真が全力でお伝えします!とりあえず・・・段から距離離とらなきゃこっちに飛び火する!」
 椎名 真(しいな・まこと)が小型飛空艇を片手運転しながら実況する。
 高度を上げて巻き込まれないように段から離れた。
「さぁて、いよいよ始まった争奪戦!・・・ってやっぱり最初から飛ばしていきそうな予感がプンプンするけど・・・な、何人が無事に登れるんだろう!?」
 駆け上がっていく生徒たちが、何人登り切れるか真にはまったく予想不可能だ。
 おひな様とおだいり様のポジションを狙う生徒たちを落とそうと、光学迷彩で姿を隠した巨熊 イオマンテ(きょぐま・いおまんて)が駆け上がる。
「面白そうなことをやっているわね、私も参加しようっと」
 巨大なひな壇を見つけた東條 かがみ(とうじょう・かがみ)は、目を輝かせて走っていく。
「あれ、かがみなに見つけたノ」
 何を見つけたのかウィリアム・吉田(うぃりあむ・よしだ)が見に行く。
「・・・ってあんなの登るノ!?」
 何百段もあるひな壇はもう壇とは呼べず、段というほうが正しい。
「チョォオオー高いヨ!?落ちたら怖いヨ!?トマトみたいにべちゃって潰れちゃうヨォオ!!」
 登ろうとするかがみを必死に止めようとする。
「ヨーゼフ、狼になって私を乗せなさい」
 かがみを背に乗せるために、ヨーゼフ・八七(よーぜふ・やしち)は2mのハイイロオオカミに変身した。
「なんでヨーゼフまでやる気なの!?ああ待って待って、おいてかないデー!!」
 ウィリアムは2人を追って慌てて登る。



「パートナーは全段、座れないのかぁ」
 地球人しか座れないと分かった曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)は、壇とは呼べないひな段の傍で花見をすることにした。
「何でちゃんと調べてこなかったんですか」
 マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)が呆れたと、ため息をつく。
「まぁ、ここら辺で花見でもしよう」
 そう言うと瑠樹は草の上に敷物を敷いた。
「ここまで来て帰るのもなんですからね・・・」
 呆れながらもマティエは花見に付き合う。
 マティエがカフェでミルディアにもらった桃の花茶に口をつけると、花びらが茶の中に入った。
「綺麗ですね、桃の花・・・」
 段に飾りつけられた花を見上げる。
「イルミンスールは緑がいっぱいで、空気が美味しいですね」
 周りの木々を見て、マティエはふぅっと呼吸する。
「こういう空気が美味しい外で食事するのもいいかも」
「戦場だと埃っぽいですし、急いで食べなければいけませんからね」
 瑠樹の言葉に、マティエはうんうんと頷く。
「まだ争奪戦が始まっていないからそれまで静かにゆっくり過ごせそうです」
「争奪戦が終わる頃には、どんな状態になっているんだろうねぇ」
 瑠樹は段を見上げて、終わる頃の状態を想像する。
「それも観戦する1つの楽しみでもありますね」
 桜餅を食べながらゆっくりと過ごした。



「いよいよ始まったね。狙うはやっぱり、おひな様のポジション!」
「あ、ちょっと待て。これを持っていけ」
 登ろうとする霧雨 透乃(きりさめ・とうの)を呼び止めた霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)は、赤いランプを手渡す。
「どうしてこれを持っていくの?」
 ランプを渡された透乃が首を傾げる
「誤射しないためだ」
「なるほどね。分かったよ、やっちゃん」
「私はここで観戦してますね」
 段から100m離れた地点で緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は泰宏の傍で観戦することにした。
「行ってくるよ!」
 腰にランプをつけ、透乃はようやく段を登り始めた。



 かわいい花柄の振袖を着て、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)も主役の争奪戦に参加する。
「おひな様の席を狙っている人たちがあんなに・・・」
 段を駆け上がっていく生徒たちの人数に唖然とした。
「でも、ボクも最上段に座りたい・・・。皆に負けないように頑張ります!」
 先に登っていった生徒たちの後に続き、ヴァーナーも段を登る。



「これもおいしそうだからもってきたー!ちょこっと味見を」
 持ってきたお菓子に、彼方 蒼(かなた・そう)がパクつく。
「おいしそう・・・」
 食べたりない蒼は真から預かったお菓子を見て、じゅるりとよだれを垂らす。
「あれ?無くなっちゃったー・・・これでもいいかな?ちーょこーばるかーーん!」
 みかんも食べてしまい、残ったチョコバルカンを抱えた。
「うぅー・・・がまんがまん・・・」
 食べたい気持ちをなんとか抑えたが、どのみちわんこだからチョコは食べられない。
「みんなー!甘いもの食べてがんばってぇー!」
 段を駆け登る生徒たちに向かってチョコの雨を降らせる。
「んぎゃぁああっ!?」
 運悪くかがみの後頭部にチョコの塊が激突し、ぴゅーぴゅーと血を噴出す。
「ぁああっ、女の子に当てちゃった!ごめんねぇ〜」
 飛空挺の上から蒼は大声でかがみに謝った。
「悪いな、先に行かせてもらう」
「ふぎゅうっ!」
 後から登り始めた毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)に頭を踏みつけられ、ヨーゼフの背に顔を埋もれさせる。
 大佐に向かって雷術を放つが、相手はすでに何段も先に行ってしまった。
「フフフ・・・・・・上等じゃないの。こうなったら、いじでも登ってやるわ・・・」
 ブチキレたかがみはヨーゼフを全速力で走らせる。
「うぁあ、ペース速すぎ!待ってヨー!!」
 その後をウィリアムが必死に追いかける。



「ほら満夜、早く登れ。まだ100段目だぞ」
 ミハエル・ローゼンブルグ(みはえる・ろーぜんぶるぐ)は空飛ぶ箒に乗り、朱宮 満夜(あけみや・まよ)の鬼コーチとして声をかける。
「そんなこといっても・・・こんな何百段も登ったことないんですから」
「弱音を吐いたらそこで終了だぞ。エベレストよりも楽だと思えばいい!」
「うぅ・・・」
 無茶なことを言う彼に、満夜は小さく呻く。
「空からちょ・・・ちょこれぇと!?わひゃあぁあーーっ!!」
 ベチョォオッ。
 甘いチョコをあげて元気になってもらうと、小型飛空挺の上から蒼が放ったチョコレートバルカンの餌食になってしまう。
「だっ大丈夫か満夜っ。傷は浅いぞ!」
 慌ててミハエルは段の上でチョコに埋もれた満夜の傍へ箒を寄せる。
「―・・・・・・フッ・・・フフフ・・・」
「満夜・・・?どうした・・・どこかぶつけたのか?」
 立ち上がって不気味な笑いを漏らす彼女の顔を覗き込む。
「上等じゃないですか・・・意地でも登ってやります!」
 復讐の炎に燃えた満夜は凄まじいスピードで段を駆け上がっていく。



「瑠璃はこういうの見るのは初めてですよね?どうですか?」
 ひな祭りを体験したことがない紫桜 瑠璃(しざくら・るり)に見せてあげようと、緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)はイルミンスールの祭りに連れてきた。
「これがひな壇っていうのねー、すっごく大きいのー」
 初めて見る瑠璃は目を輝かせた。
「これはなぁに?」
 段に飾りで置いてある餅を指差す。
「菱餅ですよ」
「ひし・・・もち?ってお餅?・・・美味しいの?」
「飾りだから食べられませんよ。カフェの方へ行けばあるかもしれませんから、後で行きましょう」
「ここにあるのは食べられないのね・・・」
 目の前にあるのがただの飾りだと分かり、瑠璃はしょんぼりと残念そうな顔をする。
「上のほうにも色々置いてあるのねー・・・ここからじゃよく見えないのー・・・。兄様、早く上に行こう!行こう!」
 瑠璃は笑顔ではしゃぎながら遙遠の手を握って段を登る。



「結構登っている生徒たちがいますな。幸は参加するんですかな?」
 ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)は段を見上げて参加しないのかと聞いた。
「―・・・何言っているんですか」
 その言葉に島村 幸(しまむら・さち)は、ふぅっとため息をついた。
「私の隣は貴方しか考えられません・・・。ぁっ・・・いや・・・その・・・・・・きゃあっ」 
 あまりの恥ずかしさに幸は両手で顔を覆い隠す。
 彼女の可愛らしい行動に、ガートナは照れて顔を俯かせる。
「ここからだと見にくいですね、もう少し近寄ってみますか」
 争奪戦を観戦しようと段の近くへ行く。
「幸!そちらは危険ですぞ!」
「まだよく見えませんね」
「登っては登ってはいけません・・・っ!ああああああああ・・・・・・」
 ガートナが止めるのも聞かず、幸は段を登ってしまう。



「よし、せっかくだから俺は五人囃子の座を狙うぜ!」
 どうせ座るなら他の席にしようと七尾 蒼也(ななお・そうや)は別のポジションを狙う。
「今時の雛人形は三人官女までしかないのも多いしな。五人囃子とかむしろレアだぜ!」
 五人囃子の席を狙い、段を登り始めた。