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闇世界…村人が鬼へ変貌する日早田村

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闇世界…村人が鬼へ変貌する日早田村

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第2章 思いのほのかな残り香

「オメガさんの魂が彷徨っている村ってここだよね。寺子屋から出てきたあの子供に聞いてみようかな。ねぇキミ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)はオメガを見かけなかったか、村の子供に聞こうと声をかけてみる。
「なぁに、お兄ちゃん」
「肩よりもちょっと髪が長くて、橙色がかった金色の目をした女の子をこの辺りで見かけたことない?」
「見てないよー。その子、迷子なの?」
 その少女を探しに来たのかと、子供が首を傾げて言う。
「迷子・・・といえば、そうかもしれないね。他の人に聞いて見るよ。(近くに集会場があったからそこに行ってみよう)」
 今度はこういうことをよく発見して噂しそうなおばさんに聞いてみようと探す。
「とりあず誰かに地図を描いてもらわなきゃ。あのー、僕たちここに初めて来たんだけど、ちょっと迷いそうだからこれに建物の場所とか描いてくれないかな」
 メモ張のページをめくり、日早田村の地図を村のおばさんに書いてもらうと声をかける。
「おやこんな辺境にやってくるなんて珍しいねぇー」
「うん、ちょっとね。そうだ、この辺で最近、見慣れない女の子を見なかった?これくらいの背丈で、青色の髪色の子なんだけど」
 地面に手をかざして探しているオメガの身長を教えて髪の色などの特徴を言い、村の中で見かけなかったか聞く。
「いやぁ見てないけどねぇ?はいよ、これで分かるかい」
「じゃあ他の人に聞いてみるよ。地図描いてくれてありがとう」
 片手を振り描いてもらった地図を見ながら、別の人に聞いてみようと村人を探す。
「ねぇこんな子、見かけてない?魔女なんだけど」
「んや、見てないねぇ」
「(村人たちが知らないみたいだね・・・)」
 誰に聞いてもまったく知らないと言われ、どう探そうか考え込む。
「何か変わったところなかった?」
「今のところはないな」
 狼に変身した白銀 昶(しろがね・あきら)は不思議な匂いがしないか鼻をひくつかせる。
「集会場の中とかは、まだ見てないよね」
「そうだな、行ってみるか!」
 昶と北都はオメガの魂が通った痕跡がないか、集会場の中へ行く。
 その頃、十六夜 泡(いざよい・うたかた)もその場所へ向かっていた。
「オメガ、なんでいつも何も言わずにどこかへ行っちゃうのよ・・・。私たち友達なのに、悲しいことや辛いことがあるならもっと頼ってよ」
 苦しいなら自分たちに話して欲しいのにと、寂しそうな声音で呟く。
「ちょっと聞きたいんだけど。日が沈む前と夜が明けてから、物が無くなったり移動してたりした事は無い?」
 集会場に入り椅子に座っている2人の若い女たちに、村の中で不自然なことが起きていないかというふうに聞いてみる。
「特になかったけんど?」
「そうさねぇ。おかしなことは何も起きてないねぇ」
「分かったわ、ありがとう」
「ねぇ、何か見つかった?」
 魂が通った痕跡がないか探している北都が泡に声をかける。
「いいえ、それらしい情報はなかったわ」
「やっぱりここの人たちに聞いても、何も分からないんだね。夜になったら鬼になることも分かってないみたいだし」
「次は焼却炉に行ってみようかしら」
「集会場を出てその橋を渡ったところだね」
 北都は村人に描いてもらった地図で焼却炉の場所を確認して泡たちと橋を渡る。
「ここだよ」
「何か手がかりがあるといいんだけど・・・」
 ドアを開けた泡は中へ入り、周囲をキョロキョロと見回す。
「特に変わった様子はないわね。外も見てみようかしら」
 コンクリートの壁に手を触れ、屋根に登り見落とさないように隅々まで見る。
「うーん外壁とかにもないわ。この中は・・・ないみたいね」
 焼却炉の中も見てみるが、何も見つからなかった。
「ん?この匂いは・・・いや、まさかな」
「どうしたの昶」
 鼻をひくつかせながら歩き回る昶の呟き声を聞いた北都が彼の傍へ寄る。
「たぶんけどオメガの匂いがしたような気がしてな」
「本当に!?」
「焼却炉の焦げ臭い匂いに混じってるから正確にそうだと言いきれないけどよ。闇世界に変わってからここにくれば、何か分かるかもな!そんじゃあ他のやつにも知らせておくか」
 仲間たちに知らせようとそこから出て遠吠えをする。
「何か見つかったんですか!」
 その声を聞いたメイベルたちが走り寄ってくる。
「うん、匂いだけで行く先の手がかりは見つからなかったけどね。闇世界になってからなら何か分かるかもしれない、そうだよね昶」
「あぁ。変わった時にそれっぽいのが現れるかもしれないんだ」
 北都に軽く頷いた昶はメイベルたちに教える。
「他の場所も微かな匂いが残っているかもしれないからな。探してみるか!」
「そうだね、行こう」
 別のところにも通った匂いを見つけられるかもしれないと、北都は昶と一緒に村の中で探す。
「夜になったら私と一緒にもう1度ここにこない?」
「えぇ、そうですね」
「それまで近くの寺子屋で休ませてもらおうかしら」
「そうしようよメイベル。闇雲に歩き回っても疲れちゃうだけだし」
「なるべく体力を温存しておいたほうがいいですわ」
「うーん、そうしましょうか」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)に言われ、しばらく休むことにした。



「あの手紙に書かれている村はここで間違いないようだな」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は日早田村の入り口辺りで、ウェリスが拾った手紙を見てやってきた。
「消えていいはずないじゃないか。誰もそんなこと思ったり、望んでないはずだ・・・」
「唯斗、言わずとも良い。行くのだろう?もう他の生徒たちが探索を始めているはずだ。急ぐぞ」
 小さな声音で呟く彼に、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)はもう次の行動は決まっていると読み、先に村の中へ入る。
「黒い霧の中に現れた村の中に消えた魂・・・ですか。村事態は今のところ普通の村ですね」
 周囲を見渡し紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は、おかしなとこがないか見る。
「この辺りから探し始めるか」
「えぇそうですね」
 唯斗に頷き砂利道を歩く。



「もう1度入り口の民家の方にもいってみようよ」
「さっきみたいに何か分かるかもしれないからな」
 オメガの匂いが残っていそうな場所を探そうと、北都と昶は村の入り口付近の民家へ行く。
「この辺りはどう?」
「んー・・・。おっ、木のドアの辺りから匂いがするぜ!」
 昶は遠吠えでその魔女を探している仲間たちに知らせる。
「獣の声・・・?何か分かったみたいだな」
 唯斗たちは昶の声を聞き民家へ走る。
「ドアの前で匂いがしたぜ」
「じゃあ手がかりはこの辺りにあるのか?」
「そうかもな」
「他のところはどうだったんだ?」
「さっき焼却炉の中でも匂いが残っていたけど、何もなかったんだ。闇世界に変わった後に、分かるかもな」
「そうか、なら夜になるのをここで待つか。(闇世界か・・・そんな暗い場所に一人ぼっちだなんてな)」
 今もどこかで彷徨っている魔女の魂のことを考えながら、民家の傍で日が沈むのを待つ。
「唯斗、探すだけではなくて、利用しようとよからぬことを考えている者たちのことも警戒するんだ」
「あぁ分かっている。どこかでこの状況を楽しんで見ているんだろう・・・。見つけたらきっちりお仕置きしてやらないとな」
 冷静な表情を保ちながらも、事件の原因となった者たちに対しての怒りを呟く。