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リアクション
★ ★ ★
「へーそんなヤツぁ俺くらいなモンかと思ってたけど、他にもいるもんなんだなぁ」
自分のネタハガキが読まれてニコニコ顔のアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が、ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)に言った。先ほどから、「よし、シャレさんに勝ったぜい」と異様に高まったテンションを今も維持している。
「えぇ、そうですねぇ」
答えながら、ルシェイメア・フローズンは、シャレード・ムーンのアドバイス通り、教育的指導をぶちかますかどうかを考えあぐねていた。
あれほどもろ分かりな投稿を聞いても自分のことだと気づいていないド阿呆のパートナーには、無限に怒りがこみあげてくるやら、情けないやら、呆れるやら。とにかく、思いつく教育的指導の数が多すぎて考えがまとまらない。
「セレスー、コーヒーおかわりー」
「はい、ちょっとお待ちくださいね」
のほほんとセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)にコーヒーを頼むアキラ・セイルーンを見ていると、セレスティア・レインもセレスティア・レインだと、ルシェイメア・フローズンの中で別の怒りがわきあがってくる。
だいたい、胸を揉まれてもたいして怒らないセレスティア・レインもいけないのだ。光条兵器のハリセンでスパーンと叩いても、相手にダメージを与えない設定ではなんにもならない。いつもアキラ・セイルーンをボコボコにするのはルシェイメア・フローズンの役目と言うことに、いつの間にかなってしまっている。
もしかして、セレスティア・レインの方も喜んでいるのだろうか。
これは、二人まとめて教育的指導をしなければならないのか?
まったく、二人ともそんな変態に育てた覚えはない。いや、別段長く生きている魔女だからといって、子供時代の二人の世話をした覚えはないのだが。
かといって、アドバイスのように、自分自身の美乳をアキラ・セイルーンに揉ませる気はない。とりあえずは、セレスティア・レインにそれほど負けているとは思えないし……。
チラリとセレスティア・レインの胸を見て、次に自分の胸を見て、ルシェイメア・フローズンはうーんと考え込んでしまった。
「はい、ルーシェちゃんも」
「む……すまんな」
セレスティア・レインが差し出すコーヒーを受け取ると、ルシェイメア・フローズンはそれを一口啜った。
熱くもなくぬるくもなく、そしてちょっと甘さが強い。
「はあ」
少し落ち着いたルシェイメア・フローズンは、あっけらかんとしている二人を見つめて、何を指導したらいいのか分からなくなっている自分に小さく溜め息をついた。それが自分でもおかしく感じて、わけの分からない笑いがこみあげてくる。
「これはこれで……」
ルシェイメア・フローズンはそうつぶやいて、小さく苦笑した。
★ ★ ★
「シャレードさんこんばんは。今回、初めて投稿します。
初めましてー。
僕の悩みを聞いてください。
実はパラミタで知り合った同居人(男)の女癖がひどくて困っています。
あらあら、また困ったちゃんの彼氏の話でしょうか。
女性をみるとナンパしなくてはいられない性質らしく、
隙あらば女性に声を掛けまくっています。
それはある意味私たち女性の敵ですね。ただし、イケメンはのぞきますが。
当然失敗する事も多いのですが
「お茶ぐらいなら」「食事くらいなら」と考える方も多いのか、街で見かける度に違う女性を連れています。
このままでは勉強に身が入らなくなるのでは、と、とても心配です。
うんうん。
せめて学校にいる間は邪念が入らない様に、と男子校を通学先に選びました。それでも校内で電話やメールでまめまめしく彼女達に連絡を入れ、会う約束を取り付けているようです。
もちろん、夜ごとデート?に出かけてしまうのは言うまでもありません。
トラブルがないなら良いじゃない、と言われそうですが、女性同士がマンションの前で鉢合わせして修羅場!なんて事がもう既に2度ほどあるのです。
あちゃー。やっちゃいましたね。
あの凍てつく空気は本当に怖いです。
何とか彼を清く正しい道に戻すアイデアは無いでしょうか。
ペンネーム、普通が一番さんからですが、普通が一番さんにとってはたまったものじゃないんでしょうねえ。だって修羅場ですよ、修羅場。できれば、そんなもの見たくはないですよねえ。
しかし、男子校って言うと、薔薇の学舎でしょうけれど、あそこは女人禁制のはずじゃあ……。ああ、外にマンション借りているんですね。じゃあ、まずそこから潰していかないと。ちゃんと相方は学校の寮に閉じ込めておいた方がいいですよ」
★ ★ ★
「酷い話だなあ」
ラジオを聞いていたアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)は、開口一番エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)に言った。
「どういうことだ。何が酷いんだ。一人の男が、まともで清らかな男女交際に進むのはいいことだろう」
エールヴァント・フォルケンが聞き返した。
「男女交際に貴賤などないだろ。好きにつきあえばいいのさ。数は問題じゃない。好きにさせてやればいいじゃんか。とはいえ、エールヴァント……、こういうことはよくある話なのか? 男子校に行ってて、修羅場が二度程って言われると、やけに身近に心あたりがあるのは、俺の気のせいか?」
いや、分かっているなら気のせいにするのはおかしいだろうと、エールヴァント・フォルケンが心の中で思う。
「薔薇学じゃ、普通は男同士の修羅場だからな。女との修羅場は珍しいんだろ」
「むしろ俺は男として異質な価値観に惑わされず、そいつは真っ当な道を歩んでいると声を大にして言いたいね! 女の子、最高じゃん!? 男としてこれが普通! これを清く正しい道と言わずして、何と言おうか!」
「いや、まっとうな道なら、相手は一人だぜ」
「それが間違った価値観だって言うんだよ」
熱弁をふるうアルフ・シュライアに、エールヴァント・フォルケンは軽く頭をかかえた。
アドバイス通りにマンションを潰したりしたら、何をしでかすか分かったもんじゃない。それこそ、学校に女が押しかけてでも来たら大変な騒ぎになる。
「こいつの首輪にしっかりとリードをつけられる相手を探すしかないのか……」
どこにそんな女がいるのだろうかと、エールヴァント・フォルケンはまた小さく溜め息をついた。
★ ★ ★
「さて、ここでまたお電話が繋がったようです。もしもしー。お名前をどうぞー」
『ふゅゅん?! わ、わ、ほんとうに、きちゃった、の!』
「ふゅゅんさんですか。こんにちは。さて、どのようなお悩みでしょう?」
『うゅ、おともだちになりたい子がいる、の……おんなじアリスで、ピンク色のスカーフやシルクハットが似合う、とってもかわいい子、なの』
「あら、かわいい子ですね。いいじゃないですか、どんどんお友達にしちゃいましょうよ」
『……でも、おともだちになるきっかけがわからなくて、いたずらしちゃったりする、の。どうしたらおともだちになれる、かな?』
「うふっ。好きな子ほどいじめたくなっちゃうっていうやつですね。でも、気を引くのに、いじめるのは逆効果ですよ。仲良くなるには、文字通り仲良くしなくっちゃ」
『ふゅゅん……なの』
「いえ、お名前はもう分かりましたから。うーん、そうですねえ。そうだ、いっそのこと逆にいじめられるっていうのはどうでしょう。それで、相手に素直にごめんなさいって言ってもらえるシチュエーションにもっていくんですよ。そうすれば、バッチリお友達に……」
『――エリー? 何やってんの? 子機持っていったら他の娘たちが困るでしょう? 長電話は駄目よ?』
『うゅっ?! ローザ?!』
「もしもーし、ふゅゅんさん、どうしました? お母さんが乱入ですか?」
『只今、一部音声の乱れが入りましたことをお詫び申し上げます、なの』
ぷちん。
つー、つー、つー。
「あらら、切れちゃいました。なんで、今回の電話はどれもこれも……。失礼しました。気をとりなおして、次の電話いきたいと思います」
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