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リアクション
★ ★ ★
「何、何、何!? なんで私!? って、フルネームですし。まさか、シャレさんペンネーム読み落とした? って、おかしいじゃない。これ、私が投稿したのと内容が違います。だいたい、なんでパートナーのために献血を呼びかけて……。あーかーりー! 絶対あの子の仕業だわ! まったく、私の名前で投稿するなんて〜」
ラジオを聞いていた茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)は、納期を控えて制作中だった人形をほっぽり出すと、血相を変えてリンス・レイスの工房を飛び出した。
「ふふふふふ〜。これで毎日いろんな血液飲み放題……おっとよだれがぁ。病院の輸血パックは飽きたし、衿栖もたまにしか吸わせてくれないしね〜」
木の枝に腰かけてラジオを聞きながら、茅野瀬 朱里(ちのせ・あかり)は夜空の月を見あげてにこやかに笑っていた。
『うーん、吸血鬼さんからの献血お願いって、結構届くんですよねー。でも、これやっちゃうと、放送局が献血センターになっちゃいます。やっぱり、ここはパートナーに……』
「朱里!」
ラジオの音をかき消すように、茅野瀬衿栖の声が響いた。
「ばれた!? やばっ、衿栖もラジオ聞いてたんだ」
ひきつりながら、茅野瀬朱里はあわてて木の上から飛び降りた。
「逃がしません!」
着地する瞬間を狙って、茅野瀬衿栖がサイコキネシスで茅野瀬朱里をぺったんと大地に倒れ込ませる。
「むきゅう……」
「さあ、きりきりと話を聞かせてもらいましょうか」
茅野瀬衿栖は、ゆっくりと大の字で倒れている茅野瀬朱里に近づいていった。
★ ★ ★
「うーん、パートナー自慢のコーナーもいいかなあ」
水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)は、ラジオを聞きながらハガキを前にして悩んでいた。
「ラジオネームは、そうね、昔の歌の歌詞から取って、恋するウサギちゃんにしようかしら。まぁたいした内容じゃないから採用されないことを前提に好き勝手書こうかなあ。ええと……。
私のパートナーは昔の英霊でちょっと精神的に枯れた幹事がするんだけどね。
その割には外見が幼くてもう…こおぉ、じゅっと抱きしめたくなるのよね。
世間一般的にいうギャップ萌えっていうのかな?
それで本人は照れ隠しにつもりか口では嫌がってるのがまた何ともそそられるのよね〜。
うん、麻羅の可愛さを全ての人にわかってもらいたいけど
麻羅の可愛さは私一人で独占したい、このジレンマ…。」
誤字脱字も気にせずハガキを書いていると、ラジオから次の投稿が聞こえてきた。
『ラジオネーム、天目一箇神さんからです。
最近、パートナーがうさいのじゃ。
うさい? うるさい……、ああ、ウザイって言いたかったんですね。
可愛い服を選んでくらるのはまぁ百歩譲ってよしとしよう。
じゃが満面の笑みを浮かべ抱きついてきて頬ずりするのはいかがじゃろうか。
正直、過度のスキンシップにうんざりしておるのじゃ。
いいじゃないですか、スキンシップは大切……』
「あら? これって……。まさか……。でも、このラジオネームって麻羅しかいないじゃないっ!」
水心子緋雨は、二十一時には布団に入ってすやすやと寝ている天津 麻羅(あまつ・まら)をキッと見た。
「ウザイですって……。ウザイですって……。しかも、うさいって書き間違えて……」
自分のことは棚にあげて、水心子緋雨は唸った。
「ふふふふふ、ま〜ら〜」
水心子緋雨はゆっくりと天津麻羅の布団に手をのばした。
俺の必殺技を聞け!
「俺の必殺技を聞けのコーナー。わー、パチパチパチ。ぱふぱふぱふ〜。
さて、今日の投稿は
夕夜 御影(ゆうや・みかげ)さんです。
こんばんわー!パラミタ最強の黒にゃんこ、夕夜御影だよー!
はい、こんにちはー。
そうそう、聞いてよシャレさん!この前にゃーは必殺技を編み出したんだにゃ!その名も「肉球パンチ」にゃ!にゃーのこのやっこい肉球を最大限に活かし、相手の顔面にこれでもかこれでもかと肉球をたたきつける攻撃で攻撃はもちろん、相手へ癒しの効果もある素晴らしい攻撃なんだにゃ!シャレさん。採点お願いするんだにゃ!」
なんという凶悪な技なんでしょう。ギリシャ兵だったらいちころです。もちろん、パラミタでも十分通用する技ですね。きっと、自ら進んで食らいたいという人が続出ですよ。とりあえず、採点は大変よくできましたということで花丸をつけておきましょう。
さて、今回は、お電話も何本か入っています。
もしもし♪」
『喰らえ電光必殺馬フンニーッ!!』
突如、音割れがするほどの女性の絶叫が響き渡った。
「あのー、もしもし。どなたでしようか」
『匿名希望じゃけん!』
きっぱりと電話のむこうの声が叫んだ。
さすがに、キーンとする音にシャレード・ムーンがボリュームを限界まで下げるように指示する。
「えっと、それで、よく分からなかったんですが、必殺技……」
『……くっくっく。没ったか。だが、奴は投稿聖戦士のなかでも一番の小物……』
「あのー、もしもし!?」
会話が成り立っていない。
『王家秘伝の超奥義! 周囲に漂う王者の臭気(スメル)っ。病院直行華麗臭気弾!!』
ガチャン。
つー、つー、つー。
「あ、切れてしまいました。回線の調子が悪かったんでしょうか」
副調整室で電話回線をオフにしたアーサー・レイスに対して、シャレード・ムーンが、よくやったとサムズアップをして見せた。
★ ★ ★
「なぜ切るぅ!! カレーはソウルフードじゃのに!!」
カレーライスの皿を両手で持ったまま、縞パン一枚の姿の
リンダ・ウッズ(りんだ・うっず)が絶叫した。周囲では、連れが全裸で正装待機していたというのに、あっと言う間に出番が終わってしまったのだ。
「ボクのこのパラ実必殺のセンスが理解できないとは、シャレード・ムーン恐るるに足らず。勝った!!」
ショーツ一丁で、リンダ・ウッズは勝ち誇るのだった。
★ ★ ★
「気をとりなおして、次のお電話です。もしもし、お名前をどうぞ」
『はい、
シャイで奥ゆかしいタイプのヒーローと申します。
今宵は、リスナーのみなさんに、
俺の必殺技を聞いていただこうと思い、
電話させていただきました』
「まあ、さっきとはうってかわって奥ゆかしい方ですね。それでは、必殺技ボイスをお願いいたします。どうぞ」
『ははははははは!! お聞きください、俺の抱腹絶倒な必殺技!』
うってかわって、電話のむこうの声がボリュームを上げた。
『校長先生ゼッコーチョー!
コンドルが趣味にのめりコンドル!
朝食食べれず、超ショック!
モノレールにも乗れーる……』
ガチャン。
つー、つー、つー。
『ミッドナイトシャンバラ! はははははは……』
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