リアクション
リスナーたち 夜も深まり、放送時間が近づいてくる。 教導団団員寮の自室で、ベッドに寝ながらイヤホンでラジオを聞いていた曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)は、足許から何かがもこもこと移動してくるのに気づいた。 「な〜う〜」 布団からぷはっと顔を出した灰色猫の納羽(なう)が、一声鳴いて頭を頬にこすりつけてくる。 「んっ、お前も一緒に聞きたいのかなぁ」 曖浜瑠樹は、そう言って愛猫の喉を人差し指で撫でた。 二段ベッドの下のベッドでは、マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)が三毛猫のミーシャと共にすやすやと眠っている。ラジオの方は、レコーダーで録音しているようだ。 ★ ★ ★ 同じシャンバラ教導団でも、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は何かと戦っていた。何か……多分、自分自身の不運と。 「絶対に邪魔が入る。とにかく、まずは録音ボタンを……。話はそれからだよね」 ルカルカ・ルーは、ラジオのRecボタンに指をかけた。 ジリリリリリリリリ!! 突然、目覚まし時計が鳴りだした。 「うわおぅ!?」 まずい、こんな深夜に騒音をたてたら寮長に独房送りにされてしまう……。 ほとんど、本能的な行動で、ルカルカ・ルーは天のいかづちを発動させてしまっていた。時間を間違ってセットしていた目覚まし時計が爆音と共に木っ端微塵に吹っ飛ぶ。 「あわあわあわ、今の音の方が大きい……」 「なんだ、今の物音は!」 案の定、誰かが異変に気づいて走ってくる。 ぴんぽーん。 部屋のチャイムがあわただしく鳴らされた。 「ルカルカ・ルー、すぐに出てきなさい。命令です」 「な、なんでもないです。なんでも……」 あわててルカルカ・ルーは弁明を始めた。 録音ボタンはまだ押されていない……。 ★ ★ ★ 「目指せ常連!」 百合園女学院の寮では、まだ起きていた秋月 葵(あきづき・あおい)が、ラジオを聞きながら次の投稿ハガキを書いていた。 ★ ★ ★ 「くそう、解け、解きやがれ」 布団とロープで簀巻きにされたアストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)が、殺虫剤をかけられた芋虫のようにじたばたとしながら叫んだ。 「あー、聞こえない、聞こえなーい」 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が両手で耳を押さえながら言った。 前回リカイン・フェルマータの名を騙って投稿をしたアストライト・グロリアフルは、簀巻きで動けなくして衆人環視の状態にある。もしまた何かやっていたら、即座にみんなで踏みつぶす算段だ。 「ふっ、自分のように電話参加にすれば、いらぬ疑いもかけられないものを」 ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)が、詰めが甘い奴だと言いたげにアストライト・グロリアフルを見下ろした。 「甘いな。まだ手はある……」 だが、絶体絶命ながら、アストライト・グロリアフルは懲りずに悪巧みを巡らせていたのであった。 ★ ★ ★ 「やれやれ、贈り物はちゃんとどいたかな」 おっぱい党の活動を終えて家へとむかう車の中で、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)はラジオのスイッチを入れた。 ★ ★ ★ 「読まれるかなあ、読まれるよね。わくわく、わくわく」 イルミンスール魔法学校にある寮の自室で、天心 芹菜(てんしん・せりな)は机に頬杖ついてラジオを見つめていた。 すぐそばでは、床に座ったルビー・ジュエル(るびー・じゅえる)が、膝の上に剣を横において瞑想している。 ★ ★ ★ 「もう、ナレディったら、何を考えているんだもん」 箒に乗った名無しの 小夜子(ななしの・さよこ)は、上空からナレディ・リンデンバウム(なれでぃ・りんでんばうむ)の姿を捜していた。 「見てなさい。今にすっごく面白いことがラジオで起きるんだから」と言って携帯片手に飛び出していったナレディ・リンデンバウムが、何をしでかすのか気が気ではない。目を離した隙に何をしでかすやら。とにかく警察沙汰だけは勘弁してほしかった。いつも関係者に謝って回るのは名無しの小夜子の仕事だ。 「ナレディ! 出てくるんだもん!!」 名無しの小夜子は、ラジオを聞きつつ、夜の闇の中に叫んだ。 |
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