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【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

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【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

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第6章


 全ての料理が作られると、料理を作った人達は全員、厨房のあった地下から食堂のある1階へと移動した。
 厨房と同じく、かなりの広さの食堂を今回わざわざ作ったとのことで、厨房の上の建物で、本館である屋敷とは別だ。
 食堂の横の部屋にはセラーが作られていたり、調度品は華美ではないものの上品で、機能的なものが多く、かなりのお金がかけられているようだ。
 さすが美食家のドロウさんといったところだろうか。
 食堂のテーブルはロの字型になっていて、入口から一番奥の上座にドロウさんが座り、その横一列に師王 アスカ(しおう・あすか)ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)、鳳明、ヒラニィ、咲夜 由宇(さくや・ゆう)アクア・アクア(あくあ・あくあ)が座っていて、他の場所にそれ以外の人達が座っている状態となっている。
 ちなみにホイップは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)と一緒に去年着た超ミニスカウェイトレス姿でドロウさんの横に立っている。
 始め、美羽は試食係を申し出たのだが、おかしな事になってもそれも料理だからとドロウさんに止められてしまったのだ。
 なので、試食は勿論だが、給仕も去年と同じようにやる事になったのだった。
「どうも〜! 皆様の自慢のお料理を食べさせて頂くアスカで〜す! 今回はただ食べるだけじゃ私的に面白くないのでお料理審査をやらせていただきま〜す!」
 アスカが立ち上がるとそう告げた。
 そう、このドロウさんの横に一列座っているのは皆審査員なのだ。
「審査員は私と美食家ドロウさんに料理に関してだけはとても正直な反応を示すルーツと悪魔の舌に合う料理は出てくるか? オルベールで〜す! 言っておくけど、地球にいた頃、絵の勉強の為に各国をまわってたから下手な料理評論家より舌は肥えてるわよぉ?」
 紹介されるとにやりと妖艶にオルベールは笑い、ルーツの方は普通に食べさせて欲しいと呟いていた。
「まあ……美食家のドロウさんには負けてしまいますけど」
「そんなことはありませんよ。ほむほむ……地球の食材に関してはまだまだですからな」
「またまたそんなご謙遜を〜。さーて、他の審査員はいつもは料理を作る側なのに食べる方にきているミルディアー!」
「勉強は苦手だけど、みんなの料理で勉強させてもらうね!」
 ミルディアはぺこりと頭を下げた。
「食べて食べて食べまくる〜! 鬼のように食べまくる宣言をしているのは鳳明とヒラニィ〜!」
「くくっ、このわしの舌を満足させる料理を果たして作ることが出来るかのぅ!?」
「そ、そんな……ヒラニィちゃんっ! なんでそんな上から目線!?」
 ヒラニィが楽しそうにしている反面、鳳明はそんなヒラニィの態度を見て、おどおどしていた。
「食費を浮かせるためにやってきた〜! 食材の効能にも興味があるぞー! 由宇とアクア〜!」
「みなさんが作った料理をお腹いっぱい食べたいのですぅ。わくわく!」
「うふふ……」
 目を輝かせて由宇が言うのとは違い、アクアは笑みを浮かべるばかりだ。
「みんなで一緒に食べた方が美味しいよね! そしてナンパメインにやってきた! エールヴァントとアルフ〜!」
「アルフ……」
「あはは!」
 ナンパ癖をなんとかしようと薔薇学に一緒に入ったエールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)は頭を抱え、アルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)は女性がいっぱいいるので実にいきいきとしている。
「それと、ホイップと美羽も審査してくれるよ〜!」
「ホイムゥと一緒に頑張るよ〜!」
「えっと……がんばるね!」
 ホイップと美羽はスカートの中が見えないぎりぎりの角度でお辞儀をした。
「ああ、そうそう! 優秀賞は男性だったらホイップ先輩かオルベールのキスで!」
「わ、私!?」
 ホイップはアスカの言葉に驚き、首をおもいっきり横にふり、拒否をした。
「それなら私とのキスで。ふふ……ホイップさんの方が魅力的だと思うけど……するなら優しくしてね?」
 雰囲気を壊さないようにオルベールが話しを持って行ってくれた。
「女性が優勝したらドロウさん厳選のお菓子詰め合わせでーす!」
「ほむほむ。お口に合うと良いのですが……」
 ホイップと美羽が持ってきたのは白い陶器の箱で、箱には金と青の装飾がほどこされている。
 その箱をホイップと美羽が開けると、中からは綺麗に並べられた焼き菓子が現れた。
「あ、最下位の人には茹でたスケスケ銀杏10粒を一気に食べてもらうから〜。さあ、この料理達の中で全員を満足させる料理は出てくるかっ! それじゃ〜……審査開始!」
 こうして厳選なる(?)審査が開始された。


 最初に出てきたのはベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がいつの間にか作っていた料理でシイタケステーキだ。
「ほむほむ……これはまたシンプルですな」
 ドロウさんが言葉を発してから、みんな手を付けた。
「どうでしょうか? たぶん味は大丈夫だと思うんですけど……」
 おずおずとベアトリーチェが聞く。
 しばしの無言が流れた。
「おいしい……おいしいよぅ」
 最初に口を開いたのは鳳明だった。
「うん、美味しい」
 次に言ったのはルーツだ。
 オルベールはちょっとつまらなさそうな表情をしている。
「ガーリックとブラックペッパー……それにパセリと、本当にシンプルな味付けですな。いや、しかし美味し――!?」
 ドロウさんが言おうとした瞬間、食べた審査員全員がいきなり踊りだした。
 美羽はやけにノリノリだが、ホイップは裾を抑えながら恥ずかしそうに踊っている。
「あら最高じゃない、この料理!」
 なんと、効果が出てからオルベールは評価を変えた。
 どうやらアクアも興味津津のようだ。
 さて、結果はどうなることやら。


 踊りが一段落してから、涼介とアリアクルスイドの料理が運ばれてきた。
 秋刀魚の刺身に鶏肉としいたけと大根の煮物、キノコの味噌汁、大根の浅漬け、白飯、そして鶏肉、秋刀魚、しいたけ、銀杏の陶板焼き、梨だ。
「ほむほむ、秋刀魚の刺身とは……やはり新鮮で最高ですな!」
「陶板焼きもなかなかじゃのう」
 ドロウさんとヒラニィが言うと、涼介とアリアクルスイドは胸をなでおろした。


 続いて鬱姫、パルフェリア、ホロケゥの料理。
 銀杏おこわ、シイタケと地鶏のスープ、焼秋刀魚が運ばれてきた。
 鬱姫とパルフェリアはおどおどしてしまっている。
 みんながスープに口を付けようとした。
「ん……なんだこの甘ったるい匂いは……? ちょっと待ってくれ!」
 ホロケゥがストップを掛け、スープを味見した。
 その様子を冷や汗をかきながら見ている鬱姫とパルフェリア。
「お前達……このスープに何をした?」
 ホロケゥが2人ににじりよる。
「あの……その……私の不注意で……ごめんなさい……」
「わ、私……知らないもん〜」
 鬱姫は素直に謝ったのだが、パルフェリアはホロケゥと目を合わせずにしらを切った。
「…………」
「う……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! 私が抱きついたからです! ごめんなさい!」
 無言の圧力に負けて、パルフェリアはとうとう白状したのだった。
「ちょっとこっちに来い」
「うわーん! お仕置きいやー!」
 ホロケゥに首根っこつかまれ、パルフェリアは強制退場となってしまった。
「あら、でもこれ美味しいじゃない!」
 明らかに不味いスープをオルベールは1人、笑顔で完食したのだった。


 大吾、アリカ、千結の作ったチキン南蛮がテーブルに並べられた。
「ほむほむ……家庭的な料理ですな!」
 ドロウさんは美味しそうに箸を進めた。
「美味しいのです〜!」
 ほっぺたを押さえながら由宇は言うと、ぱくぱくと平らげていった。
 感想を聞き、大吾達3人はハイタッチをした。


「今年はキノコを使った和風パスタだ!」
 ケイが自信満々に出したのは踊るシイタケを使ったパスタだ。
「ほむほむ……去年より腕が上がっておりますな!」
「そう言ってもらえて嬉しいぜ!」
 ドロウさんは去年のジャタ松茸を使った料理を思い出した。
「ふっふっふ……それだけではないぞ?」
 これで終わりかと思いきや、カナタがこっそりと作っていたパスタが出された。
「キノコと秋刀魚の和風パスタよ!」
 ケイが作ったパスタにイケイケ秋刀魚を加えたパスタが出された。
「これで……ベアには勝ったも同然!」
 食べてもらう前から自信に満ちていた。
 1口、2口……皆が食べたところで異変が起きた。
「ま、また踊りー!?」
 ホイップが叫んだ通り、審査員全員が踊りだした。
 踊りは何故かお立ち台でセンスを持って踊られていたものだ。
「まさに料理は楽しく、食事も楽しく体現する料理と言えよう」
 その効果にカナタは何故か満足そうだ。
「良いわね! 最高よ!」
 オルベールはベタ褒めだ。


「次は私達ですね!」
 ソアとベアが作った踊るシイタケとシャンバラ地鶏のみらくるソース炒めがホイップと美羽によって運ばれてきた。
「カナタ……お前には負けない!!」
 ビシッと指をさして、ベアがカナタを敵対視した。
「これはこれは……ん――!?」
 ドロウさんの箸が止まった。
 またも全員が立ち上がり、踊りをはじめてしまった。
 今度のはブレイクダンスだ。
「うふふ……素敵ね!」
 オルベールは楽しそうだ。
「思わず踊り出したくなるような美味しさを追求しました」
「本当に踊りだしちゃってますからー!」
 きりりとした表情で解説を加えるベアにソアが突っ込みを入れた。
 流石に続けてのダンスに高齢のドロウさんは肩で息をしてしまっている。


 魔法少女に変身したまま現れたのは菫だ。
 菫が作ったがんも、そしてホイップが作った地鶏とレンコンのもちもち焼きと、秋刀魚の煮付けが出てきた。
「ほむほむ……今年も美味しい料理ですな。そして、がんもも美味しく出来てますな」
 ドロウさんからは普通の反応がきたようだ。
「うんうん! 美味しい、美味しい……って、鼻血……」
 がんもに入っていた銀杏でミルディアは鼻血を出したが、ポケットから取り出したティッシュで素早くかみ、何事もなかったように食べ続けた。


 地鶏とシイタケを使った炊き込みご飯と秋刀魚の塩焼き、シイタケを使ったお吸い物、葵とイレーヌが作ったものが出てきた。
「あらあら、お行儀が悪いですわねぇ」
 アクアは由宇がほっぺたに付けていたお弁当をつまむと自分の口の中へと入れてしまった。
「恥ずかしいですぅ」
 由宇はすぐに顔を赤くしてしまった。
「ほむほむ……実に素朴な味わいですな」
 ドロウさんが食べ終わると次へとうつった。


 次の料理は作った人が出てこず、料理だけが運ばれてきた。
 キノコの炊き込みご飯とオス、メス両方の塩焼きだ。
「ほむほむ…………秋刀魚の塩焼きは、それぞれ塩を変えてありますな……実にチョイスが良い」
 ドロウさんは今までで一番の評価を出したようだ。
「美味しいな……」
 ルーツも見た事がないほど嬉しそうな笑顔を見せた。
「うんうん、分かりやすいわねぇ〜」
「嘘つけない子なのね、可愛い」
 ルーツの表情を見たアスカとオルベールが口ぐちに言った。
「うぐっ……」
 どうやら恥ずかしかったようだ。
「美羽さん! お肌が凄くつやつやになって光を反射してるよ!」
「ホイムゥも!」
 どうやら料理にコラーゲンがたっぷりと含まれていた為につやっつやのお肌になったようだが、残念ながら一時的なものですぐに効果は切れてしまった。


「出張! 焙煎嘩哩『焙沙里』のスープカレーだよ! 召し上がれ!」
 ネージュは鍋からお皿によそい、自ら審査員の前へと持って行く。
 カレーの香りが食堂全体を覆った。
「カレーとはまたおつですな……ほむほ……げふっごふっ!!」
 1口食べた途端、ドロウさんは咳き込んだ。
 他のメンバーもほとんどが咳き込み、息苦しそうだ。
「あ、あれ? おかしいなぁ……からっ!!」
 ネージュはカレースープを味見すると、そう叫んで気絶してしまった。
 使っていたシャンバラブートアップジョロキアの効果は絶大だったようだ。
「あら……素敵な食材のようですわね」
 シャンバラブートアップジョロキアに興味を示したのはアクアだった。


 なんとも危険な香りがする料理が運ばれてきた。
 危険物扱いを受けた郁乃と灌のパエリアだ。
「や、やっぱり……食べてもらえないよね……」
 落ち込む郁乃に灌は言葉が見つからず、ただ見つめるだけだった。
「ほむほむ……これ……は……斬新な味……ですな」
「最高に美味しいじゃない!」
 なんとか1口食べたドロウさんと、1口食べて気に入ったオルベールは対照的な表情をしている。
「甘、辛、酸、苦……全ては押し寄せてくる味……ですな……」
 水で流し込みながらドロウさんが解説をした。
 誰も手を付けられないなか、オルベールただ一人実に美味しそうに食べていたのだった。
「……」
 郁乃は言葉がないほど喜び、灌はそんな郁乃を見て、嬉しそうだ。
 と、ここまでは良い話しで終わりそうだったのだが……食べたドロウさんとオルベールがええじゃないか踊りをすることになってしまった為に笑い話へと変貌した。