蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

リアクション公開中!

【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

リアクション

 ええじゃないか踊りが終わったところで、出てきたのは加夜が作った茶わん蒸しだ。
「これは……美味ですな、ほむほむ」
 ほっこりとした笑顔でドロウさんが言った。
「あ、あの……おかわりを……」
 鳳明もちょっと申し訳なさそうにおかわりを要求していた。


「テリーヌはわたをバターで溶かしたソースをかけて召し上がれ。また、サングラスは甲殻質らしく、さっと油で素揚げしたものに上記のソースを絡め、サクサクとした食感をお楽しみください」
 テスラはそう料理の説明を加えた。
「ほむ……これは……」
「そう、メスの秋刀魚には飴で作ったサングラスをトッピングしております。オスか、と思ったところに実はメスのアタリ食材で、驚きと感動を提供致します」
「素晴らしい仕掛けですな!」
「有難うございます」
 テスラはドロウさんの賛辞の言葉を素直に受け取った。
「ふ……ふふ……ふ……ホイップちゃん……可愛いね!」
 揚げたサングラスとテリーヌを食べたアルフが突然、ホイップをじっと見つめ出した。
「えっと……ありがとうござい……ます?」
 なんだかおかしな視線にホイップは少したじろいでいる。
「アルフ! ナンパは――」
「ガールフレンドが増えるのは良い事だぜ?」
 ナンパしそうになっているアルフにエールヴァントがホイップ達に聞こえないようにこっそり突っ込みを入れたが、見事に返されてしまった。
「ホイップちゃん! 携帯交換しよう? ついでに、その下着も欲しいなぁ――」
「それはセクハラ! 何がどうして……いつもはさすがにそこまで露骨なことは言わないのに……って、この料理か!」
 どうやら、アルフの目には銀杏の汁を点したときと同じ効果と、サングラスを砕くという行為が、心理面における心の覆い(サングラス)が砕かれる代替行為となり、普段隠している想いが白日の元に晒されるという効果が発動されてしまったようだ。
 2つの料理を同時に食べたのがアルフだけだったので、他の人は片方のみを食べたのだった。
 そして、アルフは携帯番号は交換出来たが、その後、黎から強制退場を食らわされてしまったのだった。


 次の料理は洋介とアヴァネッサのシャンバラ地鶏のクリーム煮だ。
 スプーンですくい、口へと運ぶ。
「ほむ……まったりと……そして、コクのある仕上がりですな」
 ドロウさんは感想を言いながら、はにゃ〜んという顔になってしまっている。
 他の人達も皆、同じ顔だ。
「さすがあたしの料理!」
 それで良いのかという突っ込みは残念ながら誰からも入らなかった。


 紫音、風花、アルス、アストレイアが作った秋刀魚の白塩焼き、シイタケの炙り焼き、銀杏を使った茶わん蒸し、ハマグリの澄まし汁、釜で炊いた炊き込みご飯が出てきた。
「ほむほむ……和の定食はやはり良い物ですな。特に釜で炊いた炊き込みご飯は絶品ですな」
 うんうん、と頷きながらドロウさんは食べていく。
 食べ終わったところで、デザートのブドウ、梨、柿を使ったフルーツゼリーと八女茶を出した。
「デザートまでとは……」
 ドロウさんは実に満足そうだ。


「次は僕達の料理ですね」
「ああ」
 レイスとリュカイオンは卵と地鶏のコンソメスープとキノコオムライスを出した。
「ほむほ…………」
 キノコオムライスを食べていたドロウさんの手が止まってしまった。
「これは……生焼けですな……地鶏が……」
「ええっ!?」
 ドロウさんの言葉に驚きの声を上げたのはレイスだ。
「料理……だ、だいじょうぶなんじゃ……?」
「知識としては知っている。作ったのは今日がはじめてだ。……そんなにひどかったのか……?」
 リュカイオンは自らもスプーンを手に持ち、食べてみた……が、途中で吐き出した。
「生だな……」
「……今度、一緒に料理を作りませんか?」
「気が向いたらな」
 苦笑しながら言うレイスに、リュカイオンは満更でもなさそうな顔をした。


 今度出てきたのは紫翠の作った地鶏の煮物とレラージュのチョコケーキだ。
「このデザートは……ほむほむ……パーティーなど大勢のいる場で出すと良さそうですな。煮物はシンプルだが奥深い味わいとなっていますな」
 ドロウさんはぱくぱくと口に運んで行く。
「うんうん〜」
 美羽はチョコケーキがだいぶ気に入ったようで、かなり速いスピードで食べている。
「あれー!?」
 突然、食べていた美羽のフォークがぐにゃりと曲がった。
 ドロウさんの箸もぼきりと折れ、手を置いていたテーブルにひびが入った。
 どうやら効果として一時的に馬鹿力が出るようだ。


「オレの作ったフルコースは絶品だぜ?」
 そう言い、1品ずつ出していくのは椎名だ。
「なるほど……フルコースとは……ほむほむ……」
 アントレ、ポタージュ、ポアソン、ビヤンド……と順調に出していっていたのだが、ソルベにきて、ほとんどの人の手が止まった。
 持っていたスプーンが滑り落ち、床と当たる音が響く。
 ソルベは柿のシャーベットなのだが……激甘過ぎて、これ以上喉を通らない状況になってしまった。
 さすがのドロウさんも一瞬吐き出しそうになったが、なんとかこらえ、飲みこんだ。
「おかしいなぁ……普通のデザートだぜ?」
 しかし、このデザートは砂糖をそのまま食べるよりも甘い、とても普通の味覚の人では食べるのは困難だ。
「美味しいわね! お店に出せるんじゃない?」
「おお! わかってくれるか!」
 オルベールを除いて、全員がデザートを辞退したのだった。


 最後はトマスと子敬の料理だ。
 トマスの料理はシイタケの串焼き、ホイル焼き、串カツ、天ぷらとシイタケ尽くしになっている。
 子敬は地鶏と普通の銀杏を使用したオイスターソース炒めだ。
「ほむほむ……安心出来る味ですな」
 先ほどのデザートがまだ尾を引いているのか、ドロウさんはそう評した。


 これで全ての料理が出された。
「さあ、ジャッジは……皆がご飯を食べ終わってからですよ〜! それまでに集計しておきますので、しばしご歓談をー!」
 アスカが立ち上がり、そう告げるとやっと、全員のテーブルに料理が並べられた。
 食材を取ってきたメンバーはかなりのがっつきようだ。
 そんな中、お手伝いで給仕しているのはシェイドとテノーリオ、レラージュ、美羽、ホイップだ。
 空いたお皿を下げながら、シェイドは紫翠に近づいた。
「紫翠、お前も食べろよ? こんな機会めったにないぞ。でも相も変わらず食べないよな……」
「作る方が好きなんですよ」
 シェイドの言葉に紫翠は苦笑いした。
「食欲の秋で、皆さん、良く食べますから、無くなるの早いですわね」
 レラージュはというと、こちらもお皿を片付けたりしているのだが、ちゃっかり自分の分はとりわけ、食べていた。
「そうでした……お酒を飲まれる方の為に色々と用意してありますから、どうぞご自由に飲んで下さい」
 まだまだ結果を出している最中のドロウさんがそう大声で言うと、屋敷のメイド達がワインや日本酒などドロウさん秘蔵のお酒を持ってきた。
「これは、頂かない手はないな」
 シェイドはそう言うと、いそいそとお酒を取りに行ったのだった。


 ホイップは加夜が取っておいてくれたメスの秋刀魚に舌鼓を打ちながら、武勇伝を聞かせて欲しいとねだる加夜にちょっとだけ困っていたようだ。
「武勇伝なんてないよっ! そんな凄いことしてないよ!!」
「でも、台風の一件とか色々あるんですよね? くっしゃみサルーンの話しとか……」
「う……それは……私が持ちこんじゃったから……」
 台風はともかく、くっしゃみサルーンについては口ごもってしまった。
「ホイップちゃん! ホイップちゃん! これ食べてみて〜!」
 話しているところにやってきたのは葵だ。
 自分が作った炊き込みご飯を手にしている。
「あ、うん! ありがとう!」
「はっ! そっか! さっきジャッジしてるときにもう食べてるんだよね? ……ま、いっか! 直接感想が聞きたいな!」
 葵が言うと、ホイップは炊き込みご飯をもう一度食べた。
「うん、美味しいよ! イチョウ切りになってるニンジンも綺麗だね」
「ありがとう! イレーヌちゃんに教わりながら作ったからね! さすが、イレーヌちゃん!」
「そんな……秋月家のメイドたるもの当然ですよ」
 イレーヌは葵に言われ、手をぱたぱたと振ったのだった。
「ホイップ、喉が渇いてないか? ほら」
 談笑しているところへ、コップを持ってやってきたのは大佐だ。
「ありがとう! もらうね!」
 ホイップは大佐からコップを受け取ると、中に入っていた透明の液体を飲みほした。
「あ……れ……?」
 飲みほした途端に、ホイップは足元がふらつき始め、顔が赤くなってきた。
 ホイップに手渡したのは日本酒だったのだ。
「あつーい!」
「わーーーっ!!」
 ホイップは暑いとミニスカウェイトレス制服を脱ごうとしてしまった。
 それを加夜と葵、イレーヌが慌てて止めた。
「おおー!」
 大佐はその様子を楽しそうに撮影している。
「貴殿は……大事な嫁入り前の娘に何をしている?」
 大佐の背後に現れたのは黎だ。
「やばっ!」
 そう言うと、大佐は一目散に逃げ出し、どこかへと身を隠してしまった。
「まったく……ホイップ殿ももう少し警戒を――なんだ寝てしまったのか」
 ホイップは黎のお小言を聞く前に疲れとお酒でダウンしてしまったようだ。
 ホイップを椅子に寝かせ、黎が膝枕をした。
 そんな中、優勝者が決定したとアスカが叫んだ。
「優勝者は……名もなき料理人で〜す!! って、これじゃあ賞品が渡せないわねぇ〜……残念」
 優勝の言葉を聞き、弥十郎と真名美はこっそりと屋敷を後にした。
「んじゃあ、次! ぺけは……ある意味天才的なデザートを作った……椎名〜!」
「ぐはぁっ!!!」
 結果を聞き、椎名はがくりと膝をついた。
「決定打はやっぱりそのデザート〜! 郁乃の危険マークも捨てがたかったんだけどねぇ……」
 郁乃はその結果を聞き、ホッと胸をなでおろした。
 罰として、しっかりと椎名は銀杏を食べ、鼻血を吹いていた。
「今回もよく頑張ったな……」
 まだまだ盛り上がりを見せる食事会の中、黎は寝ているホイップの頭を撫でてやったのだった。


■今回の返済■
借金
−96,500G
報酬
 30,000G
今回の合計
−66,500G

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 お待たせして本当に申し訳ありませんでした!
 ほのぼのホイップ、秋の味覚編です!
 いかがでしたでしょうか?
 少しでも楽しんで頂けたのでしたら嬉しいです。

 このリアクションでホイップのシナリオはしばらくお休みとなります。
 またひょっこり出てくるかもしれませんので、その時は宜しくお願いします。