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【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

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【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

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第4章


 最後の食材はシャンバラ地鶏だ。
 生息している場所の木々は倒れているものが多い。
 倒れている木に共通しているのは、鶏の足跡が1つだけくっきりと付いているという点だ。
 まれに熊が倒されているのも見かける。


 犬と剣竜の子供を連れ、箒で低空飛行しながらシャンバラ地鶏を探しているのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。
 さらに上空ではトナカイがひくソリに乗ったダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がルカルカを見つめていた。
 慎重に慎重に探していく。
 瓦500枚を割ってしまうような鶏だ。
 もし、攻撃が当たってしまえばタダではすまない。
 足跡の付いた倒木の側に落ちていた地鶏のものと思われる羽の匂いを覚えさせ、探しているのだが、なかなか見つからない。
「この辺りには、もういないのかな? 痕跡があるからこの辺りにいると思ったんだけど……食糧がなくなって移動した……とか?」
 少し考え、ルカルカは場所をもう少し東へと移動した。
 すると、すぐに発見することが出来た。
「ビンゴ!」
 やはり食糧を求めて移動していたのだ。
 丁度良く1羽でいるところだ。
 その目はギラギラし、獲物を探している目ようだ。
 鶏がこちらに気づく前に、地面にワイヤートラップを幾つか仕掛けた。
 そして、剣竜の子供をわざと鶏の見える位置かつワイヤートラップの手前に行かせ声を上げてもらう。
 すぐに地鶏は気づき、物凄いスピードでこちらに向かってくる。
 瓦500枚を割るのは伊達じゃないということだ。
 ワイヤートラップまで来た……と思ったが、そのワイヤートラップすらその脚力により全く意味を為さなかった。
「くっ! さすがね! でも……美味しく食べて上げるんだから!」
 ルカルカは氷術をシャンバラ地鶏の足元に、上空のダリルは鶏の周りを囲むように使用し、動きを封じた。
 しかし、すぐに足の氷術が外れそうになる。
「させない!」
 ルカルカは少しだけ浮き上がると神速を使い、速度を上げ、鶏へと一気に突っ込む。
 そのスピードに乗せ鳳凰の拳を発動。
 鶏の頭に素早く2撃入れた。
 ぐしゃりと嫌な音がする。
「……一撃で仕留めた方が鶏も辛くないよね」
 ルカルカはそう呟くと、鶏を逆さに持ち、上空で待機しているダリルへと持って行った。
「お疲れ様。さ、次に行こうか」
「うん!」
 ダリルがルカルカの頭を撫でると嬉しそうにし、下へと降りて行った。
「臭みを取らなければな」
 ダリルは鶏の首を切り裂き、血抜きを始めた。
 下では、もう次の獲物をルカルカが見つけたところだ。
「心配し過ぎてないと良いのだが……」
 ダリルは少し元気がなかったホイップを気に掛けているルカルカを心配するのだった。
 ルカルカとダリルはその後、20羽近くを仕留めたようだ。


「この季節は紅葉がすばらしいな」
 赤や黄に染まった葉を見ながら歩いているリア・リム(りあ・りむ)が呟く。
「そうだね!」
 シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)がそれに賛同する。
「まったくです! 秋は素晴らしいですよ! 食欲の秋、読書の秋……そしてトレーニングの秋!」
「スポーツの秋だから。本当に脳味噌プロテインで出来ているんじゃないのか?」
「ははは! そうかもしれませんね!」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)はリアの突っ込みに動じる事なく、歯を煌めかせて言った。
「ところで何を採りに来ているの? 何も聞いてないんだけど」
「なんかね、シャンバラ地鶏っていう今の季節美味しい鶏なんだって! 楽しみだよね」
 リアの質問にセラエノ断章が楽しそうに答えた。
 しばらく歩いていると、ルカルカ達が戦っている音が聞こえてきた。
「……ねぇ、何か言い忘れてる事があるんじゃないか?」
「えとね! 瓦500枚を割る事が出来る超キック力を持った地鶏なんだって!」
 セラエノ断章はリアに説明しながら、目がキラキラと輝いている。
「それってかなり用心しないとじゃないかっ! 秋の味覚狩りだし必要ないと思って武器を置いて来たのに!」
「はははっ!」
「笑いごとじゃないからなっ!」
「あ、ほら居ましたよ! 下がっていてくださいね!」
 リアとルイで漫才のような会話をしていると、シャンバラ地鶏が現れてくれた。
 ルイはリアとセラエノ断章を背に庇うと鳥の方へと駆けて行った。
「おや、2羽ですか! これは燃え……3羽、4羽、5羽……なんか数が多くありませんか?」
 結局、ルイの前に出てきたのは10羽になった。
 拳を握りしめ、気合いを入れると群れの中に突っ込んでいく。
 繰り出される蹴りをぎりぎりでかわしながら、鶏に拳を入れようとするのだが、なかなか入らない。
「なんか凄い数だよね! ワクワクするよ!」
「セラ! ごにょごにょごにょ
「了解!」
 リアはセラエノ断章に作戦を伝えると、スタンバイした。
 2人で詠唱を始める。
「はははっ! 大事な部分は蹴らないようにして下さいね……って、おうふっ!!」
 ルイの言葉空しく、鶏は本能的に急所と感じたのか股間を10羽いっぺんに攻撃してきた。
「今だ!」
 リアとセラエノ断章は詠唱が終わった魔法をルイごとシャンバラ地鶏に浴びせた。
 見事、魔法……雷術とサンダーブラストは命中した。
 そう、ルイごと。
「これで捕獲出来たな」
「やっぱり面白いことになったね!」
 10羽の痺れたシャンバラ地鶏の中に股間を押さえたルイが転がっていたという。



「今年も秋の味覚のお手伝いですわね」
「あ、そうだね! 去年も手伝ってもらったんだよね!」
 ルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)が笑いかけるとホイップも笑顔で返す。
「えいっ」
「にゃ、にゃにするにょ」
 ルディはいきなりホイップの両頬を軽くつまんだ。
 手を放してから、肩をたたく。
 ルディに触れられた場所が温かい。
 無理矢理だった笑顔がほぐれて、本来の笑顔に少し戻った。
「ふふ……そっちのホイップさんの方が可愛らしくて好きですわ」
 ルディは今度は左手でそっと頬に触れた。
「ありがとう」
 元気が少しないことに気が付いてくれたのだと分かり、心からお礼を言った。
「ホイップ殿、ルディ殿、来た」
 前を歩いていた黎が静かに緊張した声を出す。
 立ちはだかっていたのは目当ての食材であるシャンバラ地鶏だ。
 黎はヴァーチャースピアを構え、防御の姿勢を取り、ホイップとルディは急いで詠唱に入る。
 気が立っている鶏が自分の一番近くにいる黎を見据え、攻撃態勢に入った。
 しばらく1人と1羽の睨みあいが続く。
 ルディの詠唱が終わる直前、動きがあった。
 シャンバラ地鶏が地面を蹴り、一気に黎との間合いを詰め、そのままキックを入れる。
 黎はそれを構えたヴァーチャースピアで受け止めた。
 しかし、さすがシャンバラ地鶏、受け止めたは良いが、勢いがおさまらず2メートル、3メートルと後ろへやられてしまった。
 踏ん張っていた足の跡が線になっている。
 もう一撃黎に入れようと動こうとしたところで、ルディの詠唱が完了し、氷術が発動。
 見事に足が氷漬けになった。
 だが、すぐに外されそうになる。
 ホイップの詠唱が終わると、黎はそれを察知して後ろへ飛び退いた。
「サンダーブラスト!」
 ホイップの攻撃は足の氷が外される前に放たれ、なんとかシャンバラ地鶏を仕留める事に成功した。
「2人とも怪我はないか?」
「そっくりそのまま言葉を返させてもらいますわ。さ、腕を出してください」
 すぐに駆け寄ったルディが黎の腕を診る。
 手首の骨にひびが入ってしまったのか、青くなってしまっている。
「黎さん……大丈夫?」
「ああ、心配ない」
 ホイップに黎は無理矢理笑って答える。
「大丈夫じゃないですわ」
「つっ……」
 ぺちりと、ルディが黎の手首を叩いた。
 ルディはヒールを唱え、腕の治療をする。
 それほど時間がかからずに治療は完了した。
 黎が手を握ったり、開いたりしてから手首を回す。
 問題はないようだ。
 とりあえず1羽あればということで、このチームのシャンバラ地鶏確保は終了した。


 こうして、無事に全ての食材を調達し終えたメンバーは空京にあるドロウさんのお屋敷へと急いだのだった。


■□■□■□■□■


 夕刻。
 食材を手にドロウさんのお屋敷に着くと丁度、屋敷の前に琳 鳳明(りん・ほうめい)南部 ヒラニィ(なんぶ・ひらにぃ)が来ていた。
「あの……ヒラニィちゃんがご飯おごってくれるっていうから来たけど……。なんか違うと思うよ!? みんな食材を調達してきて調理するんじゃない!?」
「あ、うん! これから料理だから、食べて行ってね!」
 鳳明にホイップが明るく言った。
「うむ! 食べてやろう! 感謝するが良い!」
「ええっ!?」
 ヒラニィは堂々と中に入っていく。
 鳳明はその後ろを所在無げについて行くのだった。
 食材を厨房に持って行くと早速、調理が開始された。