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【2021正月】羽根突きで遊ぼう!

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【2021正月】羽根突きで遊ぼう!

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第11章 正月「羽根突きバトル拡大中」

 フェンリルの勝負はひと段落ついたが、ハイブリッド羽根突きはまだ終わらない。いまだに修練場内では、羽子板が羽根を打つ音が響き渡っているのだ。
 そしてそんな音を聞きつけて、ニケ・ファインタック(にけ・ふぁいんたっく)がパートナーのメアリー・ノイジー(めありー・のいじー)を連れて現れた。
「ん〜、いい音……。鋭くって、頭に響いて、実にいいですねぇ。羽根突きっていうのは知りませんが、こんないい音が出せるんですから、さぞかし楽しいんでしょうねぇ」
 ニケが羽根突き大会に参加を決めたのは、この「音」が理由であった。葦原明倫館に通うニケには1つの嗜好があり、それは「破壊音」である。何かがぶつかる、何かが壊れるといった音をとにかく好み、趣味が大音量での音楽鑑賞というあたり、どれほどのものか想像がつくだろう。
「あ、そうだ。この際だから……」
 おもむろにニケは同行していたメアリーに近づき、右頭部の機器にドライバーを差し込んで何事かいじった。
「え〜、メアリーさん、聞こえますか?」
「……聞こえてるから、耳打ちしないで」
「おっと失礼。え〜、メアリーさん、突然ですが羽根突き楽しんできてください。私は後ろで見てますんで。なんなら派手に色々壊してきても構いませんよ?」
「またそういう……。ニケ、あたしは……」
 文句を言おうかと思ったが、それでニケが言うことを聞くような人物でないことを知っていたメアリーはその言葉を飲み込んだ。
「……行ってくるわ」

 2人が相手として定めたのは立川 るる(たちかわ・るる)オリオン・トライスター(おりおん・とらいすたー)のコンビであった。
 主に羽根突きを楽しんでいたのはるるの方で、オリオンはそんな彼女を写真撮影していた――もっとも、写真撮影を頼んだのはるるであり、コスプレイヤーとしての写真栄えをいかんなく発揮していた。
「それにしても……」
 それにしても、とオリオンは思う。先程からデジカメで自分が撮っているのはパートナーのるるばかりだ。正月らしさを撮るとなれば、パートナーだけでは華に欠ける。もう少し他の何か――特に別の女子を写したいところなのだが、今の時点でるると対戦する者はいなかった。
 だが「それにしても」と思っているのはオリオンだけではなくるるも同様だった。ひとまず簡単に、羽子板を振り上げるシーンなどは撮ってもらえたが、それでは単なるモデルの写真撮影である。自分が望んでいるのは勝負中の躍動感溢れる瞬間なのだが……。
「う〜ん、みんな他の人と羽根突きやってるから勝負のシーンを撮ってもらえないなぁ。誰でもいいから空いてる人はいないのかなぁ……」
「そう都合よく出てくるもんかよ。大体にして写真撮るってのも、この大会でMVP狙うためとか言ってたが――」
 デジカメのメモリーカードを交換しながらオリオンがパートナーに周囲を見るよう促す。誰も彼もが羽根突きに興じており、別段何かのコンテストをやっているような雰囲気ではない。
「呼んでくれた3人も個人で羽根突きやってるし、時々審判やってるってぐらいで、何かの審査やってるようには見えねえぞ?」
「うっ……」
 るるが写真撮影を頼んだのは、ひとえに思い出作りなのだが、それとは別で自分が活躍している写真を残し「今大会のMVP」として審査してもらおうと思っていたのだが、どうやらこの羽根突き大会は、単純に「みんなで楽しもう」というのが目的だったらしく、るるの考えは計画倒れに近かった。
「べ、別にいいもん! 第1の目的は思い出作りのためなんだもん! 現像してフォトブックに載せるためなんだもん!」
「対戦相手が見つからなかったらいい写真も撮れずに終わるけどな」
「う、う〜っ!」
 パートナーからのツッコミを受け、うなだれるるる。だがそんな彼女の前に待望の対戦相手がやってきた。メアリーである。
「パートナーに言われて、羽根突きやりに来たんだけど、いいかな?」
「もっちろん!」
 るるとしてはその申し出を断る理由は無かった。
「じゃあ俺が写真撮影のついでに軽く審判してやるよ」
「お願いね、オリオン!」
 オリオンを審判役に据え、るるとメアリーのハイブリッド羽根突きが始まった。
「いっくよ〜!」
 先攻のるるが羽根を打つ瞬間、彼女は自分の背後を光術で照らした。逆光による目くらましを兼ねているが、その最大の目的はやはり写真写りをよくするためである。
 メアリーは逆光で目がくらむが、彼女はあまり動じない。それ以上に、今後ろにいるパートナーを守る――と思い込むことが大事なのだ。ガードラインの技術を応用し、るるのスマッシュに対抗する。
「お、やる〜! どんどんいくよ〜!」
 その後もるるは見栄えがいい形で羽根を打つことに専念し、メアリーはそれら全てを軽く打ち返していた。審判役のオリオンは当然両者の写真を撮りまくるし、メアリーについてきていたニケは後方で楽しそうに笑っている。
(いいです、いいです! この木の板と木の球が衝突する音! 羽根突きに参加して……、よかった……ほんと……!)
 だがその時間が永遠に続くことは無かった。るるとのラリーにイライラが募ったメアリーが轟雷閃の雷を羽子板に纏わせ打ったのである。
「おおっ、ついに必殺技が!」
 それを打ち返せば写真写りはさらによくなるはず、と思い込んだるるが歓声をあげるが、彼女の願いは叶えられなかった。
 特に狙いを定めず打たれた羽根は、雷電エネルギーと共に、オリオンのデジカメを直撃したからである。
「うおわっ!?」
 これに驚いたのはオリオンだった。メアリーのショットの瞬間を撮影しようとデジカメを向けた瞬間、なぜかそのショットがまっすぐこちらに向かって飛んできてカメラに吸い込まれたのである。驚かない方がおかしいというものだ。
 そしてそれはるるも同様だった。メアリーがわざとカメラを狙ったわけではないのはわかるが、デジカメを破壊されたというのは大きい。
「そ、そんな! ね、ねえ、メモリー残ってる!? るるゾーンは大丈夫!?」
「なんだそりゃ! っつーかわかんねえよ! さっきメモリーカード交換したからいくらかは残ってるはずだけど……!」
 大慌てでデジカメの安否を確かめるるるとオリオンを尻目に、ニケとメアリーはその場から逃げ出していた。
「わざとじゃない……。あれはわざとじゃない……、本当に手が滑っただけ」
「いえいえいいんですよ! あちらさんもそこは理解してくれますって! でも一応はこの場から退散した方がよさそうですよね!」
 デジカメが破壊される音を聞いて大爆笑しながら、ニケは走り続けた……。

「う〜ん、別にあげてもいいんだけど、簡単に渡しちゃったら面白くないんだよね……」
「そ、そこをなんとか、はぁはぁ……!」
「ねんがんのねじくれたスプーンをてにいれたぞー」
「こ、ころしてでもうばい……いやいや、ゆ、ゆずってくれ、たのむ!」
「う〜ん、どうしようかなぁ」
「お願い! あなたの持ってるそのスプーンが欲しいの〜!」
 自他共に認める【スプーンコレクター】宇佐川 抉子(うさがわ・えぐりこ)は、羽根突き会場に来ていた朝野 未沙(あさの・みさ)に迫っていた。と、書くと響きが怪しくなってしまうが、要するに抉子は未沙が持っている「ねじくれたスプーン」にコレクター魂が反応したのである。
「ん〜、それじゃあこうしましょ! ハイブリッド羽根突きで勝負。5回勝負して、3回勝った方が相手に命令できる。あなたが勝てば『スプーンをよこせ!』、で、あたしが勝ったら……あなたを好きにさせてほしいんだけど――」
 そこで未沙は一瞬言葉を切った。
「まだ、『例の言葉』を聞いてないよね……?」
 抉子は理解した。自分が何を言うべきなのかを。そして彼女は自分が持つねじくれたスプーンとスプーン型羽子板――後者はルール違反ということで未使用となったが――を見せながら言った。
「いいよ。あたしの『魂』を賭けるわ……」
「グッドッ!」
 こうして彼女たちのハイブリッド羽根突きが始まったのである――審判には手が空いていたテスラ・マグメルを呼んでおいた。
 ここからは少々ダイジェストでお送りしよう。

 1戦目。
 最初は未沙がヒロイックアサルト『戦場に舞う姫将』の効果を発動し、演舞のような動きで羽根を打ち抉子を追い詰める。
「あたしの英霊のパートナーは弓腰姫! この動きについてこれる!?」
 だが追い詰められた抉子が、打った羽根にサイコキネシスを上乗せし、その軌道を操作する。
「文字通りのねじくれショットだよ!」
 結果、未沙はその羽根を打ち返せず、抉子の勝ちとなった。

 2戦目。
 再び『戦場に舞う姫将』の動きを再現し、勝負を優勢に進めようとする未沙だったが、抉子はそれに対し「ミラージュ」を発動する。
「さて、どこから羽根が飛んでくるかわかる!?」
 何人分も生まれた幻影を相手に、未沙はどこから羽根が飛んでくるのか読めず、そのまま敗退した。

 3戦目。
 後が無くなった未沙は、羽根を打つ際に「ライトニングブラスト」を織り交ぜ始めた。打った羽根にブラストを叩き込んでその威力を上げる、という戦法だ。
「さっきは踊ってばっかりだったけど、今度はそうはいかないよ!」
 だが抉子とて負けてはいない。ライトニングブラストは毎回飛んでくるわけではなく、フェイントとして使わない瞬間がある。そこを狙って彼女は羽根を低めに打ち、未沙の足元を狙う。
「そんなちゃちな低めのショットなんて!」
 もちろん未沙はこれを掬い上げるが、それこそが抉子の作戦だった。
 抉子は未沙が羽根を打つタイミングに合わせてレビテートで浮かび上がり、打ち上げられた羽根を高高度から打ち下ろした。
「じゃあ高すぎるショットはどう!?」
 これに未沙は対処しきれず、羽根は無情にも床に着弾した……。

「……もう3勝しちゃったけど、どうする?」
 残り2戦を行ったところで未沙が勝つ見込みは無かった。それを実感した未沙は投了を宣言する。
「……無理。もう完敗です……。あなた強いのね……、約束通り、これはあげるよ」
「やったー! ありがと〜!」
 未沙から勝利の褒美としてねじくれたスプーンを受け取り、彼女は非常にご満悦であった。
「では、私は別のところに行ってきますね」
「ありがとう、テスラさん!」
 2人と分かれたテスラは、また別の審判役を引き受けるために会場を歩き回り始めた。
「えっと、ところで未沙さん、でしたっけ。この後、暇?」
「? 一応予定は無いけど?」
「あ、じゃあせっかくなので、他の試合も見ていきませんか?」
「……乗った!」
 その後彼女たちは、様々なところで行われる羽根突きを見学することとなった……。

「ハイブリッド羽根突きって、去年やってたあれだよね。面白そうだから今年は参加してみたんだけど……」
 羽根突きの相手を探して会場を歩き回るのは割といる。アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)もその1人だった。
 だが程なくして対戦相手となる人物の方から声がかけられた。
「あれ、アルメリアじゃない?」
「って、沙幸ちゃん?」
 声をかけた人物の名は久世 沙幸(くぜ・さゆき)という。正月だからか、彼女の服装は丈がマイクロミニとなっている振袖――彼女はどのような服装でもマイクロミニにしてしまうが――だった。
「こんなところで何してるの?」
 沙幸がアルメリアに問う。
「ん〜、面白そうだったから今年こそ参加してみよう、って感じかな?」
「なるほど〜」
 そこで沙幸は思いついた。今は葦原明倫館に転校してしまった彼女に対するはなむけとして、ハイブリッド羽根突きで勝負することを。
「ふふふ、やるからには負けないわよ、沙幸ちゃん!」
「こっちだって、やるからには本気を見せてあげるね、アルメリア!」
 そこにテスラが通りがかり、審判役を買ってでた。
「一体何回これをやったのかわかりませんが……、それでは、試合開始」
 互いに羽子板を構え、沙幸を先攻に羽根突き勝負が始まった。
「まずはラリーで……」
 沙幸はまず力を入れずに羽根を打ち、相手の出方を伺う。
 それはアルメリアの方も同様だったが、彼女は全体的に羽根を低めに集めるように打っていた。
(む〜、やるわね、アルメリア。こんなに低く打たれたら、考えてきた必殺スマッシュが使えないじゃない)
 沙幸の言うスマッシュとは、打ち上がった羽根に向かって「空飛ぶ魔法↑↑」で飛び上がり、高高度から打つというものだったが、アルメリアが打ち上げない限りこの技は使えない。
 それならば、と沙幸は別な手を使った。羽根を打つ瞬間、光術によるフラッシュで目くらましをはかり、フィリップ・ベレッタが使っていた「雷球ショット」を放ったのだ。
「足元目がけて、えいっ!」
 打たれた羽根は低めに飛んでいく。このまま対処を怠れば床に落ちるのは明白だ。
「さすがは沙幸ちゃんね。でも――」
 羽子板を構えたアルメリアは、目くらましをあまり意に介さず、空いた手に火球を、そして持った羽子板に炎を纏わせる。
「これで終わりにしてあげるわ!」
 叫んで彼女は火球を爆炎波上乗せの羽子板で打ち、羽根に火球を叩きつけた。
「そんなのでどうにかなるとでも――」
「思ってないわよ。だからこれはオマケ」
 言ってアルメリアは沙幸が羽根を打ち返す寸前で光術を放った。もちろん目くらましが目的である。
「うそおっ!?」
 一瞬目がくらんだ沙幸は羽根を見失い、そのまま敗北が決定となった。
「勝負あり。勝者、アルメリア・アーミテージ」

「うう……、一体どんなことを要求されちゃうんだろう……」
 羽根突き勝負で負けた沙幸は、この後やってくるであろう「バツゲーム」に対し顔を赤らめながら震えていた。どんなものが来ても我慢するつもりではあるのだが、やはり怖いものは怖い。
「う〜ん、何してもらおうかしら……」
 しばらく内容を考えていたアルメリアがふとひらめいた。
「そうだわ、沙幸ちゃんならあの服も似合うかも……。というわけでバツゲームは、今日1日ワタシに付き合って、着せ替え人形になってもらうこと!」
「き、着せ替え人形!?」
「というわけで、この後ザンスカールの町まで付き合ってちょうだいね」
 もちろん断れない沙幸であった……。

 リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)篠宮 悠(しのみや・ゆう)は互いに羽子板を持って、にらみ合いを続けていた。別にケンカしているというのではなく、単に「勝つのは自分だ!」と気合を入れているだけである。
 その原因は、リースと悠が最近恋仲になったことにあった。恋人同士になったのなら次はデートだ、そしてその次は……。
 と考えたところで両者は思った。そのデートはどっちがリードするのか、と。両者共に「自分が」と譲らず、話は平行線をたどった。
 そこで思いついたのが「ハイブリッド羽根突きで勝った方が、次のデートをリードする」というものだった。
 そんないきさつについて、悠のパートナーである真理奈・スターチス(まりな・すたーちす)はかなり冷ややかな意見を持っていた。
(ホントにバカなことしてるわね……。あんなにがっついたら逆に引かれるか対抗されるのがオチでしょうが。というか、ここで血眼になるくらいなら、お互いデートの時に血眼になればいいじゃない……)
 確かに真理奈は正しかった。だが当の本人たちにしてみれば、そんなことよりも今決める方が大事なのである。
「何と言いますか、これ、審判役の必要性ってあるんでしょうか……」
 事情を聞いた審判のテスラは、両者の間で渋い顔をしていた。何せ、ほとんど痴話ゲンカである。それなら審判役を呼んで白黒はっきりつけさせるよりも、お互いとことんまでやりあった方がいいのではないだろうか……。
「いえ、この際はっきりさせた方がいいんです! だって私がデートをリードしたいんだもん!」
「はっきりさせるって部分には同意だ! だがリースには悪いが、この勝負は譲れねえ!」
「はあ、左様ですか……」
 色々諦めたテスラが試合開始を告げた。

 試合はほぼ悠の一方的な勝利に終わりそうであった。
「ちょ……悠さん……、激しすぎ……!」
 息も絶え絶えにリースは羽根の動きに合わせて走り回されていた。彼女が考えてきた羽根突き用の技といえばアシッドミストなどの魔法だが、防御用のスキルは「超感覚」くらいしか考えていなかった。そのため悠が放ってくる「ソニックブレード」上乗せの羽根に対抗するのが難しく、攻撃のチャンスが無かったのである。
「ち、ちょっと、待って……。ちょっと、待って……!」
 さらに数合打ち合った頃だろうか、リースから一時中断の申し込みがかかった。
「中断ですか。許可します」
「ん、どうした?」
 テスラから許可も出たため、悠は羽根を受け取り、試合を止める。
「ち、ちょっと……、変身してきていい? せっかく、最近、魔法少女に……なったことだし……」
「変身って、着替えてくるのか? まあそれぐらいならオレはいいけどさ」
「あ、ありがと……、じゃ、行ってきます」
 息を切らしながらリースは着替える場所を探しにその場を離れた。

 そして15分ほどが過ぎ、リースが帰ってきた。だが、どこか様子がおかしい。
 その理由は彼女が近づいてきた頃にようやくわかった。
 リースが着替えてきた「魔法少女コスチューム」が、奇妙なまでにサイズが違っており、うまく着られていない――身体サイズに比べて、コスチュームの方がかなり小さかったのである。
「ちょっ、おま、なんつー格好で出てきて……!?」
 当然それを見た悠は慌てざるを得なかった。最近恋人になった女性が唐突にサイズが合わない服で登場したのだから。
「こ、こないだ体が急成長したっていうのを忘れてて、それで、前のコスチュームしか持ってなくて……」
 だったら無理に変身しなくてもいいだろうに。悠、真理奈、そしてテスラは同時にそんなことを思った。
 そして事件は起こった。
「あ、ちょ、そんな……! 服が……!」
 リースの身体サイズに合わなかったのが原因だろう。着ていたコスチュームが音を立てて破れ始めたのだ。
「ぶっ! ちょ、待てリース! ええい、さっきの服貸せ!」
 偶然にもリースは変身前の服を持ってきていたため、それで体を隠すことには成功した。
「……これはもう、試合どころではありませんね。ノーゲームとしましょう」
 すっかりあきれ果てたテスラの宣言により、2人の勝負はうやむやとなる。
「あぅ……悠さん、これ恥ずかしいよぉ……」
「あ〜、もう、わかったわかった。だからそんな目で見るな。ひとまずここ出て、どっかに身隠しておこうぜ」
 そのままリースと悠は修練場を出て、どこかに行ってしまった。どこへ行ったのかはご想像にお任せするとしよう。

 一方、忘れられた形となった真理奈はその場でぼそりとつぶやいた。
「本当に……バカばっか」