リアクション
07
『さあ、トップグループはいよいよゴール目前です。ここ放送席からも、小さくその勇姿が見え始めてきました。
けれども、まだ試練が終わったわけではありません。このゴール直前に、なぜか罠が集中しています。
さあ、トップを走ってくるあの影は誰か……。
フォルテシモ選手です。フォルテシモ選手がトップです。ああ、けれども、そこにはライゼさんがトランポリンを用意して妙技を見せろと迫っています。
さあ、フォルテシモ選手、どうでる?
なんと、無視です。無視しました。
さすがに、ゴーレムの巨体では小型のトランポリンは無理があったか。
やや遅れて、ミヤルス選手がラストスパートをかけます。
ちりめんじゃこも勝負に出るために一列に隊列を組み直します。
それを、猫のクトゥグァ選手イタクァ選手が狙っています。
さらに順位を上げてきた新生ゆるゆるパイレーツはどこまで上に上がれるのでしょうか。
激しく競いあっているセッキー選手と納羽選手にもまだ勝機はあります。
ほとんど数珠繋がりで、ミーシャ選手、レイストリオ、小雪シスターズが続きます!』
★ ★ ★
ここは、ゴール地点の人質エリアである。
立川るるによって、立川ミケが首の後ろをつままれて、強制的に連れてこられている。
「なななー、なななな、なーななななななぁ」
「たとえ間違えられたからって、ルールは曲げちゃだめでしょ」
立川ミケと間違えられてゴールで縛られていたネコ軍団の猫を助け出すと、立川るるが代わりに立川ミケを椅子に縛りつけた。
「ななななー!」
「聞こえなーい」
必死に抗議する立川ミケに、立川るるはそう答えた。
★ ★ ★
『はい、こちら第二グループですぅ。こちらも、激戦となってきていますぅ。
小雪シスターズに後れはとっていますがぁ、旭さんが雪だるま族第二位の位置はキープしていますぅ。
その後は、右介さん左介さん、テオルさん、ダイヤさん、むるんさん、ディエゴさん、小ババ様、コットンさんラビーさん、レイちゃん、ミィさん、影虎さんと、ほとんど一直線に各選手がならんでいますぅ。誰が順位を上げても不思議じゃないですぅ』
★ ★ ★
『こちらは第三グループですぅ。
ついにこちらのグループも後半戦に突入して来ましたぁ。
うたまるちゃんと村雨丸ちゃんを先頭に、パラミタペンギンズとネコ軍団がわらわらと続きますぅ。
それを追うのは、はやぶさちゃん、白ちゃん雪ちゃん、ローゼンちゃんですぅ。
あっ、今、シルヴァーナちゃんが粘着シートの罠に近づきましたぁ。メイベルさん、カメラをむけてくださいですぅ。あれ? メイベルさん、どこ行っちゃったんですかあ?』
「さあ、こちらへおいでなさい!」
エッツェル・アザトースが手招きするが、雪だるまのシルヴァーナはぷいと横をむいて粘着シートを回避していった。
「さすがは、リトルスノーのペット。さあ、頑張って雪だるまのすばらしさをもっと見せつけるんです!」
すぐ近くで、誰も罠にかかってくれないので暇をもてあましていたクロセル・ラインツァートがシルヴァーナに声援を送った。
★ ★ ★
『毎度おなじみ、ゆっくりまったり最終グループ……、あっ大変、何か事件が起きてるみたいだよ』
「カツアゲだクマー! 助けてほしいクマー!」
ヤンキーと事務員の総勢四人にボコボコにされながら、道端で雪国ベアが選手たちに救いを求めた。
『見るからに小芝居なんだけど……。さすがに、賢いゲリくんとフレキくんはスルーしていったよ。
あっ、でもコトくんがもの凄く興味を示してる』
「みぎゃあ!!」
『なんと、コトくんが小芝居の白熊を助けたよ! でも、これで後ろから来る垂うさくんに確実に抜かれちゃうかも』
「助かったクマー。確かにお前はレースに遅れた……だが、もっと大切なものをつかんだのさ」
なんだか適当にいいことを言って、雪国ベアがコトに礼を述べた。
「にゃあ、にゃにゃにゃにゃ」
また何かあったら遠慮なく助けを求めてきなさいと言い残して、コトがレースに戻っていく。
「ふっ、さて、次のカモをカモるぜ。おいお前たち……、おおっ、誰だ、誰にやられた!?」
裏通りに戻って従者たちと次の作戦を相談しようとした雪国ベアであったが、そこで見たのは誰かに撲殺されていた従者たちであった。まさに死屍累々である。
『さあ、現在のビリはマカロンくんですがぁ、その前を這い進むヨルムーくんに魔の手が迫っていますぅ』
レテリア・エクスシアイが中継を続けた。
「ぬくぬくであります」
コタツにずっぽりと潜りながら、ルナール・フラームが幸せそうに耳をピクピクさせた。
「あっ、美味しそうな蛇ちゃんだよ。まむし酒もいいよね」
ミーツェ・ヴァイトリングが、ヨルムーを見つけて言う。
「おーい、ここ開いてるよー。さあ、君もおこたでぬくぬくしようよ」
シルヴィット・ソレスターが、しきりにヨルムーを手招きした。
「しゃー!」
ふらふらと迷っていたヨルムーだったが、ついに我慢しきれず、コタツに飛び込んでいった。
『ああ、やっぱり引っかかっちゃった。
これは、マカロンくんに抜かれちゃうかも』
一部始終を見ていたレテリア・エクスシアイが、感想を述べる。
「ふふふ、これで一匹脱落と……。うっ、なあに、この臭い!」
ほくそ笑んだシルヴィット・ソレスターが、あわてて自分の鼻をつまんで叫んだ。どうやら、ヨルムーの放つ障気にあてられたらしい。
「臭いよー」
たまらず、ミーツェ・ヴァイトリングがコタツの上に乗っていたミカンの皮をプシューっとして芳香剤代わりにした。
だが、獣人のルナール・フラームは、それどころではなかった。のたうち回る一歩手前である。
「て、撤収であります! ウィル殿の所まで撤退であります!」
コタツを背負うと、ルナール・フラームは一目散にゴールへむかって逃げだしていった。
「しゃー」
せっかく暖かかったのにと、一応変温動物の蛇であるヨルムーが不満の声をあげながら、ルナール・フラームたちを追いかけていった。