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学生たちの休日7

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学生たちの休日7

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ツァンダのデータベース

 
 
「うん、整備……っていうか、綺麗にしてあ・げ・る。お手入れは完璧だよね」
 ヤクトを前にして、朝野 未沙(あさの・みさ)が悦に入った。
 いかにもメカメカしい形相になってしまったワイバーンのヤクトではあるが、全身を被うコバルト色の装甲部分は朝野未沙によってピッカピッカに磨きあげられている。それこそ、近づけば顔が映りそうなくらいだ。
 綺麗にしてもらって気持ちがいいのか、ヤクトも御機嫌なようで、朝野未沙に頭をすり寄せてきている。
「うんうん。パワーアップ。じゃあ、少し散歩に行こうかあ」
 朝野未沙がそう言うと、ヤクトが嬉しそうに翼を広げて軽く雄叫びをあげた。
行くよ、出発ー!」
 ヤクトの上に乗って朝野未沙が叫んだ。翼を広げたヤクトが羽ばたいて、一気に上昇する。
 眼下に、朝野ファクトリーの建物が見えたが、あっという間にミニチュアほどの大きさまで小さくなった。
「空で、誰かと会って、一緒に飛べたらいいかもね」
 水平飛行に移りながら、朝野未沙がそうヤクトに言った。
 ヤクトが、翼を水平に広げて端から雲を引きながら飛んでいく。そのスピードに、爆風が大気をかき回して風を起こした。
「ふわふわあ〜、ふわふ……きゃっ!」
 のんびりと光の翼を広げて空中を風と共に漂っていたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が、突風を受けてひょろひょろと墜落しかけた。
お菓子落ちちゃった。いったい、何が起きたっていうんだもん。もうちょっとで、おにーちゃんの所に逝っちゃうところだったじゃない!」
 危なく影野 陽太(かげの・ようた)がでかけていたナラカに自分も別の方法で行ってしまうところだったと怒るノーン・クリスタリアだったが、突風を起こした犯人の姿はもうどこにも見えなかった。
 
    ★    ★    ★
 
 空を細い飛行機雲が飛んでいく。
 もし見あげたならば、近くの滝壺から舞いあがった飛沫で虹が見えたかもしれない。
「お前は回避からの攻撃パターンがだいたい一定なんだよな。だからある程度交戦したら対応されてカウンターもらうんだよ」
 ライトニングブラストで大谷地 康之(おおやち・やすゆき)を遠くへ蹴散らした匿名 某(とくな・なにがし)が、テクノコンピュータで冷静に分析した結果を口にする。
「ところで、康之が最近身体鍛えるのに力入れてるのは、やっぱりアレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)が絡んでるのか?」
「もちろん!」
 匿名某の言葉に、大谷地康之が力強く即答した。
「約束したんだ。強くなって初めて会ったときの約束を果たすって」
 そのための特訓だ。
 なんとしても、今この手に持っている大剣トライアンフを使いこなせるようになってやるという思いが、全身から滲み出ている。
 運命さえ断ち切れる大剣――その言葉を信じて、アレナ・ミセファヌスを悲しませるような運命はすべて叩き切るつもりでいるのだった。
「まあいい。理由なんて物はあればいい。それを口にする前に、ここへ辿り着いて見せろ!」
「もちろん!」
「がんばるにゃー」
 後ろで日の丸扇子を持って踊るニャンルーの応援に後押しされて、大谷地康之が飛び出した。
「だから、動きが読めてるって言……」
 構える匿名某にむかって、大谷地康之がロケットパンチを放った。だが、それすら予測していた匿名某が、真正面から同じロケットパンチを放って、それを弾き返す。むやみに突っ込んできた大谷地康之はそれに巻き込まれて転倒することだろう。迂闊なことだ……。
 だが、そう思った匿名某の眼前に、大谷地康之がスライディングしてきた。ぎりぎりの所で危険を察知し、身を低くして避けたのだ。女王の加護があったとは言え、それなりの反射神経がなければできる芸当ではない。
「入った!」
 念願の敵の懐に飛び込めた大谷地康之が、トライアンフを下から斬り上げた。かろうじて、それもまた予想の範囲内であった匿名某が、アーティフィサー・アーマーで増幅された力で、ロケットパンチの発射基部を大剣の平に叩きつけてかろうじて難を逃れた。
「やるな。よし、続けようぜ!」
 ちょっと満足そうに、匿名某が叫んだ。