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リアクション
一方……。
「歩夢、出しすぎだよー! しかも、すっごく濃いし……」
「ゴメン、アゾートちゃん。私、興奮しちゃって……」
「ボク、こんなにベトベトにされたのは初めてだよ。しかも手だけじゃなく、顔まで……」
「だって、アゾートちゃんのせいだよ?」
「ボクの?」
「うん。とても喜んでくれるから、私、張り切りすぎちゃった……」
「歩夢だって、嬉しかったんだよね……」
「いっぱい、アゾートちゃんのために出してあげることが、私の願いだったから……」
「じゃあ、私の手についたの、舐めて?」
「え……えぇっ!? 舐め合いっこして取っちゃうの? た、確かに、近くに水場もないけど、それは……」
「もー、じれったいなぁ。キミが出したんでしょ?」
と、アゾートが歩夢の前にトロミのある液体の付いた指を出す。
「う、うん……じゃあ、するね?」
頬を赤く染めた歩夢が「ちゅぱちゅぱ……」とアゾートの指を舐める。
「あ……」
アゾートがギュッと目を瞑る。
「(うう……私、好きな子の指を……)」
「どう? どんな味がする?」
「……甘い」
説明しよう!!
歩夢とアゾートと真言は、幾多の困難を乗り越え、鋭意研究の結果、蜂蜜の採取に成功していたのである!!
「ふぅ……中にいた蜂はあらかた追い払いましたよ……何、してるんです?」
「あ、真言ちゃん! おかえりー!」
落とした蜂の巣の前で、座ってモジモジするアゾートと歩夢を見る真言。
「何か有りました?」
「歩夢が張り切って蜂蜜を沢山出そうって巣を叩いてたら、飛び散っちゃったの!」
「そうですか……まぁ、とりあえずこの瓶に蜂蜜を絞りましょう」
真言が言ったその時、近くで獣の咆哮と悲鳴が聞こえる。
「声よ!?」
咄嗟に真言が駆け出す。
「真言ちゃん!! 待って!!」
「二人はここで蜂蜜の採取をお願いします! 私が見てきますからッ!!」
やはり、不幸の神に溺愛されているらしいみすみ。
朔を飛び越えたり、回りこんだりしてパラミタウルフ達がみすみに襲いかかる。その近くではエリヌースも戦隊タネモミジャーを突破され、同様のピンチを迎えていたが、朔はスルーした。
「(チィ、ここまで不幸とは……駄目だ! 間に合わない!!)」
咄嗟に朔が可愛く上目使いでアテフェフを見て、精神感応で呼びかける。
「(お、お姉ちゃん。朔のお願い聞いて……)」
「クスクス……今回は朔が妹のように、可愛くお願いしてくるから仕方なく協力するのよ?」
そう言ってアテフェフが瞬時に弓を引き絞り、同時に二本の矢を出す必殺技、サイドワインダーを繰り出す。
みすみへと跳びかかったパラミタウルフにヒットする二本の矢。
「ギャゥゥンッ!?」
「普通は助けるの、あ……あたしじゃないノオオォォーーッ!!」
直ぐ様、目の前のパラミタウルフをはじき飛ばした朔が、みすみの前に立つ。
「大丈夫? みすみ!」
「平気ですッ!!」
やや強い口調でみすみが叫ぶ。
「私だって、種もみ剣士!! エリヌースさんが頑張っているんだから、私だってこれくらいの困難くらい……絶対負けないよ!!」
「みすみ……強くなった……」
朔がみすみの成長に思わず瞳を潤ませる。
「み、みすみを………倒すのはあ……た……し……な……ん、だ……か、ら」
そんな中、力尽き苗床化していく犠牲者を華麗にスルーして弓を構えたアテフェフが、朔とみすみを現実に呼び戻す。
「まぁ、いずれにしてもまだ、あたし達のピンチは変わらないわよね……」
「数が多すぎるよ……」
朔が、調達したパラミタイノシシを振り返る。
「アレをあげれば、万事片付く気がするけど……」
「駄目です! アレはお店に届けなきゃ!!」
即座に却下するみすみ。
その時、
「皆さん、こちらに走って下さい!!」
「!?」
朔達が見ると、真言が手招きしている。
「早くッ!!」
「みすみ! 行こうッ!!」
走りだす朔達。それを追うパラミタウルフ。
「あ痛ッ!!」
コテンと地面の窪みに足を取られたみすみがコケる。
「あっ……みすみッ!!」
立ち止まる朔だが、気づくのが遅れたため、既にみすみとの距離は遠い。
みすみに一斉にパラミタウルフが襲いかかる。
絶体絶命のまさにその時だった。
「たああぁぁぁぁーーーッ!!」
光条兵器でみすみに襲いかかるパラミタウルフをはじき飛ばすシルエット。
「!?」
乳白金のぼさぼさの髪に眠そうな顔をした七刀 切(しちとう・きり)がみすみを間一髪で助ける。
「ワイの目の黒い内は、食料調達に奔走する女の子を誰一人たりとも犠牲にはさせないんだよねぇ!!」
フッと笑った切がみすみを脇に抱えて、真言達の方へ走りよる。
「自分、何かするんだろう!」
「助かります……では、私の蜘蛛糸の力、お見せしましょう!!」
真言が迫り来るパラミタウルフに向かって両手を上げる。
「はぁッ!!」
そして、勢い良く両手を振り下ろすと、周囲に張り巡らせていた蜘蛛糸が次々と、カスミ網の様に、パラミタウルフ達を捕獲していく。
「おお! 自分、凄いねぇ」
「助かったよ、ありがとう」
朔が言うと、切が照れくさそうな顔をする。
「よせよぉ、自分の仕事位はちゃんとするさー」
「後は、引っかかった獣を木にでも縛りつけておきましょう。……ところで?」
と、切を見る。
「何だい?」
「随分、洋服や髪に葉っぱがついてますし……第一、その右手に持ったものは……」
切が右手に持っていたのはデジタルビデオカメラであった。
「えっ、なんで撮ってるかって? どこに何があるか分かれば次から探す時に楽になるからねぇ」
「……」
「あぁ、しかしかわいいのぉ。お二人以外の食材調達員の女の子達もかわいいのぉ」
ビデオカメラを再び回す切。
その近くで朔の頼みにより、アテフェフが苗床状態のエリヌースの組成を退屈そうに試みている。
「まさか……ずっと撮影を?」
「あぁ。今日はバイトとして入ったわけだが、食材調達員にはアゾートさんやみすみさんという少女がいると分かった。ならば(変態)紳士として彼女たちを助けなければな!って思ったんだよぉ」
「へぇ……」
「うんうん。ワイも色々撮ったけど、パラミタイノシシ狩りを頑張ってたみすみちゃんと、蜂蜜ベタベタプレイをしていたアゾートちゃんが、やっぱり今日のベストショットだねぇ」
「……どうして知っているんです?」
切は周囲にパラミタウルフとは違う獣の気配を感じた。