蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

目指せ! イコプラマスター!

リアクション公開中!

目指せ! イコプラマスター!

リアクション

○第三試合 真アグニレイ

 傍らでカメラを設置しているルカルカ・ルー(るかるか・るー)の後姿を眺め、南 鮪(みなみ・まぐろ)はにやありと笑った。
「いいケツした姉ちゃんじゃねぇか。おい、後で俺とイイコトしねぇか?」
「悪いけど婚約者がいるの。仕事の邪魔だから、どいてくれる?」
 ルカルカは大会本部の許可を撮り、試合を撮影していた。彼女に睨まれ、鮪はヒュウッと口笛を鳴らした。
「その冷たい目がたまんねぇな。ヘッヘ」
「嘆かわしい。こんな男が対戦相手とは。審判、変えられないのか?」
 殊更大きなため息をついたのは、夏侯 淵(かこう・えん)だ。
「気に入らなきゃ、ぶっ倒せばいいだろ」
 大鋸に言われて、うん、と淵は頷いた。
「確かにそうだ。おいおまえ、とっとと始めるぞ」
「こりゃまた結構な美少年だな。うん? 美少女か? どっちでもいいや。俺は別に、おまえでもいいぜ? ピーピーなことすっか?」
 淵が顔を歪ませた。
「落ち着いて、淵。それが向こうの手かもよ?」
 ルカルカに囁かれたが、しかし淵の不機嫌は治らない。
 元々淵は、イコンが好きだ。乗りたくてたまらない。だが、サブパイロットとして搭乗するのは、ルカルカのもう一人のパートナーであることが多い。自分にはそれほどの能力がないと自覚しているから、代わりにイコプラを始めた。
「これがまた、病み付きになる楽しさでな」
 苦笑混じりにルカルカへ語ったように、子供っぽいと言われようが、楽しいのだから仕方がない。イコプラバトルは、男の子のロマンである、と淵は言い切る。
 それだけに鮪のようなタイプは――どうにも気に食わない。苦手と言ってもいい。
「行くぞ、“レイ”!」
 淵のイコプラは、教導の鋼竜、ルカルカの愛機レイと同様に蜂蜜色塗装だ。天学機等より一見基本性能が劣ると思われがちだが、それを補うようにバランスよく強化してある。長所である継戦時間の長さは健在なので、仮に十戦の長丁場でも戦い抜ける。
「カーッ、だっせえ!! 波羅蜜多実業空京大分校のエリートイコプラバトラーのこの俺が、ダサい汚物イコプラを消毒してやらァ!」
 鮪の“真アグニ”がフィールドに出る。
「試合開始と同時に、レイの鎌が二度炸裂!」
 アリサがマイクを手に叫んだ。――どうやら、かなりのめり込んでいるらしい。
「チッ、だせえくせにやるなァ!」
 次に間合いを取ろうとしたレイに、真アグニは手にした火炎放射器を発射した。
「二発ヒット!」
 大鋸が怒鳴った。
「トドメだ!」
「淵! 逃げて!」
 カメラから顔を上げたルカルカが叫んだ。
 真アグニは、両手の火炎放射器を全開放射しつつ、仏斗羽素でレイめがけて突撃をかけた。しかも回転しながらなので、炎の渦がフィールド全体に広がり、そのままレイへと突っ込んだ。
「これぞ必殺、『ヒャッハァー汚物は完全消毒だ!』
「レイー!!」
 淵は大破したレイを抱きしめた。ルカルカはそんなパートナーにどう声をかけるべきか、迷った。
「油断した……あのような姿だからと油断した俺が悪い」
「淵……」
「ルカ、俺は二度と負けん。次こそ!」
「うん。それでこそ淵! よし、帰りにパーツを買いに行こっか」
「いいとも。ルカもやってみるか? 何がいい?」
「ネクスト!」
「残念ながら未発売だ……」

  ○真アグニ−レイ×


○第四試合 高機動型シパーヒーツイン・ガスト

「にーちゃんにーちゃん、今のすごかったねー!」
 彼方 蒼(かなた・そう)は目をキラキラさせて言った。
「そうだね。蒼、次は蒼の出番だよ」
 椎名 真(しいな・まこと)は、蒼が抱きしめていたぬいぐるみの代わりに、“ツイン・ガスト”を渡した。
 蒼は昨日、この大会のために夜まで調整を続けていた。頑張りすぎて、夜はその姿勢のまま寝てしまっていたので、真がベッドまで連れて行ったのだ。その頑張りを見ているだけに、出来れば勝たせてやりたいと真は思う。
 それにしても、
「今気づいたけど、あれ、俺のイコンの真似したって言ってたけど、わんこの耳と尻尾がついているのはなぜだろう……」
 しかし蒼の不幸は、その対戦相手にあった。
 スモークが焚かれた。その中から現れたのは――、
『会場のライトに照らされて、マントはためくはいつも全裸の変態――違った、変熊 仮面(へんくま・かめん)!』
「何だ、この煙はっ!?」
 変熊仮面はアリサに怒鳴った。
『見たくないものを隠すためだ。お子様の前だ、我慢してもらおう』
 変熊仮面は蒼を見下ろした。
「……致し方あるまい」
「にーちゃん、何で裸?」
「知りたいか、小僧。ならば教えてやろう、じっくりたっぷりねっちりと」
 変熊仮面の後ろで、大鋸が指の骨をベキバキ鳴らした。
「……まあ、後でな」
 黙って服を着ていればそれなりにカッコイイ男だが、何しろ全裸の変態である。大会は彼の参加を知ったとき、ありとあらゆる手段を講じた。審判を大鋸に頼んだのも、その一つだった。
「とっとと試合しやがれ! ファイッ!」
 大鋸の掛け声と共に、ツイン・ガストがソニックブラスターを構えた。
「ふふふ……貧乏人共め。俺様の美しきイコプラの前にひれ伏すがいい!」
 変熊仮面のイコプラ、“高機動型シパーヒー”――ちなみにネットオークションで買った完成品――が、いきなり必殺技を放った。悪魔のデュエリング・ピストルだ。
 続けてツイン・ガストの攻撃を受け流し、スマートガンで攻撃、ヒットした。
「ファイトだ! 蒼!!」
「まけないぞーっ!」
 負けじとツイン・ガストがパンチを繰り出した。よろけた高機動型シパーヒーの攻撃を避けたが、そこで試合終了を告げられた。
「ふふふ。どうだ? この俺様のイコプラは。赤い塗装に、頭の角……諸君ならもうお分りだろう。通常の……むぐむぐぅ……誰だっ俺様の口を抑えるのは!? 高機動型シパーヒーって言いたいだけだって!」
 だが変熊仮面は、そのまま大鋸に引きずられて行ってしまった。
「にーちゃん、まけちゃったよお」
 蒼は真の元にとぼとぼと戻った。
「いい試合だったよ、蒼。後で何が悪かったか反省会しよう。それより今は、他の人の試合も見ようじゃないか。きっと参考になる」
「……うん」
 蒼はツイン・ガストとぬいぐるみを自分の隣に置き、真の横に座った。真の大きな手が伸びてきて、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。

  ○高機動型シパーヒー−ツイン・ガスト×