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ブラッドレイ海賊団1~パラミタ内海を荒らす者たち~

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ブラッドレイ海賊団1~パラミタ内海を荒らす者たち~

リアクション

(相手側の戦力が不確定だわ……)
 そう思いつつもパートナーのバル・ボ・ルダラ(ばるぼ・るだら)と共に、八王子 裕奈(はちおうじ・ゆうな)はブラッドレイの船へと乗り込んできた。
 乗り込みながら、原始的な荒ぶる力がわき上がらせ、バル・ボは己と裕奈の攻撃の力を底上げする。
「ここから先は通させねえぜ!」
「それはどうだろうな!」
 立ち塞がる海賊に対し、何処からともなく呼び寄せた虫の群れを放つ。虫たちは毒を持っており、立ち塞がった海賊とその周りの海賊をも巻き込んで、猛毒を与えた。
「フラワシ、お願いよ」
 裕奈が告げて呼び出したのは焔のフラワシだ。フラワシは、猛毒を受けた海賊たちに向かって、炎を放ち、炎熱の痛みを与えていく。
「熱っ!」
 炎熱を受け、痛みと熱さに顔をしかめながらも海賊たちは、仕返しとばかりに、短剣や長剣を振るい、その奥からは構えたピストルの引鉄を引こうとする。
 その海賊たちからの攻撃を裕奈を庇うようにバル・ボが出て、防ぐ。
 防ぎきれず受けた傷みは、リジェネレーションや百獣の王の力により、少しずつ回復するのを見せた。
 海賊たちがバル・ボに気を取られているうちに、裕奈は辺りに彼らを嵌めるための罠を張る。
 バル・ボは、その罠を活用するため、海賊に向かって、2本の矢を同時に番えると、放った。
 右から、左から飛んでくる矢に逃げ場をなくした海賊はその一撃を喰らってしまい、よろめいた。
 ふらつく脚が辿り着いた先に、裕奈の仕掛けた罠が潜む。
 踏みつけられた罠はトラバサミの如く、海賊の脚へと喰らい付き、身動きを取り難くさせた。
 そこへ再び、バル・ボの放った2本の矢が飛来し、致命傷にもなる一撃を与える。

「面白そうな奴じゃあねえか! そして強そうだ! こりゃ挑みてえ!」
 その勢いを持ち、ブラッドレイの船へと乗り込んできたのは夢野 久(ゆめの・ひさし)だ。龍の鱗をイメージすることで皮膚を硬質化させて、防御の力を高める。
「ちぇー、折角意識が黒髭なのを良い事に揉んだり揉ませたり出来るかなって思ったのにー。やる気激減ー」
 パートナーのルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)は、美緒の身体を弄ろうとしていたのに思惑が外れて、ぶつぶつと文句を並べている。
 そんな彼女を他所にアーダルベルトの下へと向かうべく、デッキの海賊たちと対峙していた久は、ルルールの方へと視線を送って、口と開く。
「ルルール、グジグジ言ってねえで真面目にやらねえと蹴り落とすぞ」
「うぐ……あの顔はマジでやる気ね」
 久にすごまれ、顔を引きつらせたルルールは、ふと思い立つ。
「こうなったらブラッドレイ海賊団の海賊ちゃんから良い感じの子とっ捕まえてお持ち帰りしちゃうんだから!」
 ぐっと意気込んで、辺りを見回した。幾人か己好みの顔立ちを見つけて、ルルールはやる気を取り戻す。
「……何か不穏なこと言ってやがるが、まあ相手は海賊だし……黙認しとくか……」
 ルルールの言葉に久は大丈夫だろうか、なんて呟いた。
「普通に考えて捕らえた海賊は当局、よくてもラズィーヤ女史の元に連行じゃないかなあ。雇われの身でお持ち帰りとか難しそうな気が……」
 もう1人のパートナーである佐野 豊実(さの・とよみ)は、ルルールがやる気になったのを見て、何よりだと思う反面、そんなことを考え、ぽつりと口にした。
「うん? 豊実ちゃん、何か言ったー?」
「いえ、何も」
 当の本人には聞こえていなかったようで、訊ね返された豊実は、やる気を損なわせないためにも己の心のうちに秘めておく。
「アシッドミストで皆溶けちゃいなさい! 溶け残った子は持って帰って愛したげる☆」
 告げて、ルルールは強めの酸の霧を発生させた。
 酸は海賊たちの防具や武器を溶かし、直接肌に当たれば強い痛みを与えていく。
 更に、豊実の放つ2本同時発射の弓が逃げ場をなくした海賊たちに辺り、道が開いていった。
「久! 頑張って倒しなさい! そして捕まえてお持ち帰りするの! 回復なら任せて! 私のためにファイトー! 行けー!」
「ぐぬぬ何だその全く嬉しくない応援……寧ろやる気が削げるから止めれ!? ああもう、やる気無くてもやる気出ても鬱陶しいなお前は!」
 ルルールの応援の仕方に久は文句を言い返しながら、アーダルベルトに向かって踏み込んだ。
 必殺の拳を叩き込む。
「ぐ……なかなかやるな!」
 拳を受けて、一瞬呻いたアーダルベルトは両の手にそれぞれ構えたカットラスを握り直し、久へと斬りかかる。
 久も聖杭ブチコンダルを構え直し、そのカットラスを受けた。
「くっ、おまえもなっ!」
 一撃の重みに、握る手に痺れが走るのを感じて、応える。

「覚悟しなさいよ、アーダルベルト!」
 物陰から美羽がさざれ石の短刀を手に、飛び出して来た。
 死角からの不意打ちを狙ったその攻撃は、アーダルベルトも避けることが出来ず、片手のカットラスで受けるようとする。
 けれど、受けようとしたところから外れた短刀が深く腕へと突き刺さり、傷口から石化が始まった。それは徐々に身体中に広がっていく。
「なっ!?」
 驚き、声を上げている間にも彼の身体は石化していった。
「やりましたね、美羽さん」
 様子を窺っていたベアトリーチェが全身を石化させていくアーダルベルトを見ながら、声を上げる。
「ええ。大人しくしてなさい、アーダルベルト。今、向こうに突き出してあげるんだから」
 顔や脚すらも石化したアーダルベルトに美羽はそう告げて、“黒髭”海賊団の船へと運び始めた。