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リアクション
【ファーストキスと、あかね空】 〜 神崎 輝&シエル・セアーズ 〜
「はぁ〜。面白かった〜!スゴかったね、このジェットコースター!」
「ウン。確かに面白かった。最近は、地球のジェットコースターと見劣りしなくなったな〜」
最近話題の絶叫マシンの感想を述べ合う、神崎 輝(かんざき・ひかる)とシエル・セアーズ(しえる・せあーず)。
今日2人は、遊園地にデートに来ていた。
「ハー、イッパイ叫んだら、喉乾いちゃった」
「じゃ、なんかドリンク買ってくるよ。何がいい?」
「ん……、なんか炭酸お願い!」
「わかった。ソコ座って待ってて」
輝は手近なベンチを手で示すと、向こうの売店へと駆けていく。
(なんか、いつもより優しいよね、今日の輝。変に気を使ってるっていうか……。何か、企んでるみたいなんだけど……)
輝の後ろ姿を眺めながら、あれこれと思案するシエル。
一方、輝は輝で、
(ど、どうしよう。いつ、告白しようか……。このままだと、夜になっちゃうぞ!ナイトタイムまでには、告白しようと思ってたのに!)
などと、内心ヤキモキしまくっていた。
この遊園地は夜景が綺麗な事で有名で、ナイトタイムはカップルで一杯になる。
以前、男友達とこの遊園地に来た際、大変惨めな気分を味わったコトを、輝は忘れていなかった。
当の友人は、「フッ、やはりお前と一緒に来たのは正解だった。何せお前は、どっからどう見ても女の子、しかもかなりの美少女だからな!」などと胸を張っていたのだが。
結局、コレといっていい考えも浮かばず、輝はドリンクを持ってシエルの元へと戻っていった。
「お待たせ!ハイ、どうぞ」
「有難う♪」
「あ〜あ、イッパイ遊んだね〜」
「開園から遊びっ放しだからね」
大きく伸びをするシエルを、眩しそうに見つめる輝。
もう、日が傾き始めている。
夕日に朱く染め上げられたシエルは、一段と美しい。
その幻想的な光景に、シエルの胸が、一際大きく高鳴る。
胸の高鳴りに背中を押されるようにして、輝は口を開いた。
「シエル。ボク、シエルの事が好きだ」
「え……?」
驚いて、輝の顔を見るシエル。
同じように夕日の染まったその顔は、いつになく真剣だ。
「ど、どうしたの、輝。そんな、イキナリ……」
突然の展開に、シエルは動揺を隠せない。
何か企んでいるだろうとは思っていたが、まさか、イキナリ告白されるとは思っていなかった。
顔が火照っていくのが、自分でもわかる。
「イキナリなんかじゃないよ。ずっと前から好きだったんだ……。シエル、君の事が」
「輝、それ……本当?」
「もちろん本当だよ。シエル、ボクと付き合って欲しい。こんな……、女の子みたいなボクだけど、でも、キミを思う気持ちは、誰にも負けないつもりだ」
「輝……」
少し控え目な、それでいて、力強い一言。
シエルは、静かに首を縦に振った。
「……!シエル、それじゃあ!」
「私も輝のコト、大好きだもの。断るハズ、ないよ」
「シエル……」
沈む夕日に染め上げられた世界の中、見つめ合う2人。
その2人の間を、秋の風が駆け抜けた。
思わず、身体を震わせるシエル。
「あ、寒い?ちょっと待って!」
急いでジャケットを脱ぎ、シエルの肩にかける輝。
自然と、彼女の身体を後ろから抱くような形になる。
ジャケットをかき寄せるシエルの指が、輝の指に、触れた。
ハッとして、互いを見る2人。
その視線が、そっと交わる。
「ひ、ひかる……?」
「シエル……」
朱い残光の中、2つの影が重なり合い、そして、離れる。
「輝……」
「シエル……」
余韻冷めやらぬまま、見つめ合う2人。
たった今、彼女になったばかりのシエル。
そのシエルが、輝にはこれまでになく愛おしく思える。
場内の照明に、火が灯った。
「もう少し、遊んで帰ろうか?夜景のステキな場所があるんだ」
「……ウン」
コクリ、と頷くシエル。
2人はしっかりと手を繋ぐと、寄り添うようにして、夜景スポットへと歩いていった。