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女王陛下のお掃除大作戦!

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女王陛下のお掃除大作戦!
女王陛下のお掃除大作戦! 女王陛下のお掃除大作戦!

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「それじゃあ、手分けして頑張りましょう」
アイシャの言葉に力強く頷いたみんながとりかかろうとしているのは、公務室の掃除です。
「公務室は女王様が一番たくさん使う場所だからな。念入りに綺麗にしよう」
「ええ、【心理学】の観点から見ても公務室が綺麗だと印象も効率もぐっと良くなるでしょうしね」
セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)も頷きます。
「特に机と椅子はなくてはならないもの、綺麗に磨きあげましょう」
「うん、しっかりやらないと」
セルフィーナに促されて騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は張り切って磨き始めました。
「アイシャちゃんの為だもんね!」
「ええ、頑張って陛下に喜んでいただけるように綺麗にしましょう」
「高いところのお掃除だって魔法少女にお任せだよ♪ だって〜魔法少女はメイドの上級職なんだもん♪」
な〜んてね、と【空飛ぶ魔法↑↑】をかけて高いところからお掃除するのは秋月 葵(あきづき・あおい)
天井も意外と汚れやすいもの、丁寧に端から拭いていきます。
埃が落ちないように埃を絡め取るモップの後、濡れ雑巾を使い、仕上げに乾拭きして綺麗にします。
その下では、恐る恐るといった体で掃除を始めている面々がいました。
「しかし……調度品ひとつとっても豪華だな……」
匿名 某(とくな・なにがし)は遠慮がちに棚のインテリアを持ち上げてはハンディモップをかけていきます。
「女王様が使う所だもんな。しっかり磨かないと!」
大谷地 康之(おおやち・やすゆき)は張り切った様子で雑巾を握りました。某が埃を取った後を、かたく絞った雑巾で拭いていきます。
「縦も横も後ろも綺麗に掃除するぜ」
「壊さないように、丁寧にお掃除しないとね」
インテリアの置物は結崎 綾耶(ゆうざき・あや)フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)が埃を取って拭くことにしました。
「頑張ろうね、フェイちゃん」
「綾那が頑張るなら……がんばる」
綾耶とお揃いの髪型で満足そうなフェイは、布巾を手にしてこくりと頷きました。
「……ところで」
フェイは小首を傾げて、すっと指差しました。その先にはアイシャの姿が。
「女王は髪を結んで作業しないのか? あの長い髪邪魔すぎると思う」
「こら、失礼だぞ」
止めようとする某の言葉には耳をかさずに、フェイは手をわきわきとさせながらアイシャへと歩み寄って行こうとします。
「結 わ な い か ?」
「おおおおい待て待て待て気持ちはわかるけど色々わきまえろって!」
「フェイちゃん落ち着いて」
「……騒がしいな」
恐る恐ると言った手つきでシャンデリアを掃除していたエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、呆れたように降りてきました。
「おーい、上の埃取り終わったぞ」
蓮見 朱里(はすみ・しゅり)にそう告げると、アイシャと朱里に教わっていたピュリア・アルブム(ぴゅりあ・あるぶむ)が、意気込んでモップを握りました。
「じゃあ次は床をきれいにしないとね!」
さっそくごしごしと磨き始めるピュリアの手を朱里がやんわりと止めました。
「あ、力任せではダメよ。こうやって……」
自らやって見せながら正しい掃除の仕方を教えて行きます。
妊婦の体ではあまり無理もききませんから、教える以外は小物を磨いたり、棚を整理したりするくらいになってしまいましたが。
「こうやるとほら、汚れが落ちやすいでしょ?」
「ほんとだ……ちからいっぱいゴシゴシではだめなんだね」
「そうね、床は材質によっては傷ついてしまうから気をつけましょうね」
「は、はいっ」
「でもその力強さは大事よ」
アイシャに教わったことを懸命にやってみようとするピュリアに、アイシャも微笑みます。
「さすが女王さまです! ピカピカですね」
サポートを受けて床や棚を次々綺麗にしていくアイシャの姿を見て、目を輝かせたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が、是非その手管をビデオに収めたいと申し出ます。
「そのテクニックをじっせんで身につけて、百合園のみんなにつたえたいですよ!」
そして卒業したらそのテクニックを持って宮殿を掃除します! というヴァーナーに、
「実践もちゃんと頑張ってくださいね?」
とアイシャが笑うと、ヴァーナーは強く頷きました。
その反対側からはユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が手際よく床をモップ掛けしてきます。
「こういうのは手際が大事なのですわ〜」
「それなら障害になる調度品は移動しておこう」
「あ、それは私が磨き上げさせていただきます」
「ああ、それじゃ少し重いからここに置くぞ」
イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が移動させた調度品を引き受けて、アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が丁寧に拭きあげます。
動かされた調度品の部分についていた床の汚れをふき取り、乾拭きして磨き上げ。
「あ、雑巾が汚れてきたなら変えますよ」
タイミング良く新しい雑巾や水を取り替えてくれたのは非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)です。
「こちらにもくださいな」
赤羽 美央(あかばね・みお)が新しいモップを受け取って、そのままアイシャのもとへ向かいます。
その姿は可愛らしいメイド服。
クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)に勧められて着たものでした。
今回は雪だるま王国の女王として、シャンバラ女王であるアイシャに挨拶に来たのです。
そのための正装としてクロセルが誂えたのは可愛らしいメイド服でした。
最初はこれが正装なのかと訝った美央でしたが、「郷に入っては郷に従え、これが謁見時の正装だ」ともっともらしく説かれてしまっては頷くしかありませんでした。
そんなわけでメイド服でアイシャに対面すると、優雅に一礼して見せました。
そのままちょっと緊張した面持ちであいさつを交わすと、並んで掃除を始めました。


アイシャが話しながらも掃除に集中しているのを見たクロセルは今がチャンスとばかりに童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)を促しました。
「準備出来ましたか?」
「うむ、無論でござる」
「さぁ、女王の為にも早く調度品を雪だるまに替えて差し上げよう。模様替えすれば気分も一新!」
「承知した」
スノーマンは促されるまま、調度品と持参した雪だるまを交換し始めました。
「その雪だるまはこちらではなくてあの棚がいいと思いますわ」
リリ・ケーラメリス(りり・けーらめりす)も雪だるまの大きさや家具の色などを見て助言します。
この大きさなら此処、このデザインならこの棚の上……。
そうして次々と雪だるまが宮殿に配置されていきます。
けれど過ごしやすい温度に設定された宮殿内の室温では雪だるまたちには少々居心地が悪いようでした。、
「しかし……暑いでござるな」
スノーマンが言うように、雪だるまたちは少しずつ汗をかき始めていました。
このままでは彼らがいなくなるのは時間の問題でしょう。
「そのままでは溶けてしまうわね」
レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)はそれを止めるために部屋の気温を下げようとします。
エアコンの気温を最低まで下げ、それだけでなく【氷術】で氷点下まで下げようと試みます。
そのあまりの寒さにみんながざわざわと騒ぎ始めます。空調の故障だろうか、とあたりを見回します。
美央ももちろん例外ではありません。すぐに原因を見つけた美央はすぐさまクロセル達に駆け寄りました。
「何をしているんですか!」
「クロセル殿の命で調度品と雪だるまを取り替えているでござるよ」
「私たちはこのままでは溶けてしまうから部屋を冷やそうとしたのよ。ほら、最近寒くなってきたとはいえ雪だるまには暑いからね」
「……クロセル?」
逃げようとしたクロセルをしっかと捕まえて、小声で怒鳴り付けます。
「何をしているんですか! 女王の公務室で失礼ですよ! 誰が調度品を盗めと言いました!?」
そのまま手足を縛りつけ始めた美央を見て、リア・レオニス(りあ・れおにす)レムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が止めに入ります。
「ちょっと待った! 掃除しに来てるんだろ?」
「まずは冷房を切っていただいて、落ち着いて話しましょう」
レムテネルの言葉にクロセルを離した美央は、ため息をついて頭を下げました。
「すみません……」
「いや、わかってくれたならいいって」
そしてそれから雪だるまを持ちこんだ理由を聞いたリアは、なるほど、と頷きます。
「さすがに雪だるまだらけにしてしまうと宮殿自体の調和が乱れてしまうし、アイシャが風邪をひいてしまうかもしれない」
「しかし、友好の証は嬉しいものですし、雪だるまも可愛いですね」
「そうだな。だから友好の証にひとつ頂きたいと思う。そしてそれをアイシャに見せて何処に置くか直々に決めてもらおう」
その提案に納得した美央たちは、頷いて撮っておきの雪だるまをリアに預けました。
「それじゃ、溶けないうちにちょっと見せてくるよ」
さっそくアイシャの元へ向かったリアを見送って、レムテネルはメイドロボを振り仰ぎました。
「さて、それじゃあ私たちはお掃除に専念しましょうね」
リアに代わって指示を出すと、美央達と共に掃除に戻るのでした。

「この書類はどうするんだ?」
机を掃除するためにたまった書類を片付けていた樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)に問いかけました。
「それは今から処理するものね、ファイルしておきましょ」
月夜は刀真が出してきた書類を全て検分して次々と分類していきます。
「そこにあるものは古いものから並べて仕舞って……こっちはあのファイルに」
「あ、僭越ながらわたくしが……」
申し出たのは文官たちでした。
「それじゃ仕舞う前に埃を払うのを手伝ってくれ」
「はい」
「羽箒と乾いた布、持ってきましたよ」
追加で頼んでいた掃除道具を近遠が持ってきてくれたので、それを受け取って文官たちへと渡す。
「ありがとう、一緒に頑張ろうね」
「はい、足りないものがあったらまた言ってください」
「では、手があいている人は此方へ」
そう言ってイルゼ・フジワラ(いるぜ・ふじわら)が、宮殿の職員を呼びます。
誘導に従うと、シュピンネ・フジワラ(しゅぴんね・ふじわら)がパソコンの傍に立っていました。
それぞれ執政官たちを座らせると、
「私たちはパソコンのお掃除をしましょう」
と、パソコンのデータ整理を促します。
「操作方法はイルゼが指示しますので、お間違えの内容にお願いするであります」
見られては困るデータに配慮して、イルゼたちはパソコンに触れずに職員にクリーンアップやデフラグを任せます。
終わったあとはエアースプレーを用意し、電源をしっかり落としてから埃を吹き飛ばし、キーボードの隙間もしっかりと掃除しました。
宮殿の職員の手を借りてやったおかげか、書類もデータ整理も早く終わりそうです。
これが終わったら、コンピュータを移動して机も拭きあげてしまえばよりすっきりとするでしょう。
これで明日からパソコンもスムーズな動作をするに違いありません。
ソフトもハードもすっきりしたパソコンを見て、シュピンネは満足げに頷きました。

「やっぱり現役のメイドとして、元メイドの女王様に負けるわけにはいきません」
密かに対抗心を燃やしているのは神代 明日香(かみしろ・あすか)です。
執務机の下に敷いてある絨毯に丁寧に掃除機をかけ、ついたシミは洗剤を叩き込んだりして綺麗にしていきます。
黙々と掃除していると「すごいねぇ」と天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)が近寄ってきました。
「えっ」
「シミってそう落とせばいいんだね」
「流石ですね、すっかりきれいです」
次原 志緒(つぐはら・しお)にも褒められて、明日香は少し照れたようにはにかみました。
「でも広すぎて大変よね。手伝うわ」
クラウディア・テバルディ(くらうでぃあ・てばるでぃ)蘭堂 卯月(らんどう・うづき)の申し出に、明日香はそれじゃあ、と窓の磨き上げを一緒にすることにしました。
「上の方は私がやるから、下をお願いします」
「わかりました」
「思わずぶつかっちゃうくらいまで綺麗にするわよ」
「終わったらあいしゃちゃんに褒めてもらえるといいなぁ」

――そんな感じで、お掃除初心者も、ベテランメイドもみんなで協力し合って、にぎやかな宮殿掃除は幕を開けました。