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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)は2度目の温泉に向かう途中、エルの部屋へ行こうとしているホイップにばったり出会った。
「あ、呼雪さん!」
「うん、久し振り」
 呼雪はホイップに笑顔を向ける。
「と、えーっと……」
 呼雪の隣にいるヘルを見て、ホイップを首を傾げた。
「そういえば、ホイップにはまだちゃんと紹介していなかったな。こいつはヘル・ラージャ。俺の――」
「彼氏でーす☆」
 ヘルはウィンクをする。
 なんだか、キラッ☆ という効果音が似合いそうだ。
「……」
(間違ってはいないんだけど、言い方……)
 そんな言動のヘルに呼雪は頭を抱えた。
「はじめまして、ホイップと言います」
「うんうん♪ ホイップちゃんの事は呼雪から色々聞いてるよー」
「じゃあね、ホイップ。せっかくだしホイップも温泉楽しんで」
「うん、ありがとう。呼雪さんとヘルさんもね」
 呼雪はヘルの首根っこを掴み、ずるずると引きずって温泉まで歩いて行く。
「ホイップちゃ〜ん、またね〜」
 ヘルは引きずられながら、両手を振ったのだった。


 男性用露天風呂に到着すると、軽く体を洗い、ゆったりと温泉に浸かる2人。
 ヘルは長い髪の毛をまとめ上げ、うなじが見えている。
「……近い」
 ヘルは呼雪にぴったりと寄り添っている。
「ええ〜? だって、せっかく2人なんだし呼雪とらぶらぶいちゃいちゃしたいじゃない?」
「こんなに広いんだから、もっとゆったり入っても良いだろう?」
 そう言うと呼雪は湯煙の向こうへと行ってしまう。
「むぅ……逃げらりた……ぶくぶくぶく」
 ヘルは鼻の下まで温泉に浸かり、膨れてしまった。


 奥の方へと移動すると、呼雪は刀真に出くわした。
 刀真は温泉の縁に頭を乗せてぼんやりしている。
「なんだ。てっきり個室の温泉の方に行っているのかと思った」
「ああ、呼雪か。そっちこそ、1人か?」
「いや、1人じゃない。あっちにヘルがいる」
 呼雪は自分が来た方向を指し示した。
「なるほど、ね。俺も本当はあいつらと一緒に入りたいんだけどさ」
 2人はしばらくぽつりぽつりと会話をしながらゆったりと温泉を楽しむ。
「そういえば、夜空の月も良いけど水面に写る月を見ながらの一杯も旨いと玉藻が言っていたが良く分からないな」
 そう刀真が言うと、呼雪は夜空の満月を見てから、水面に映る月を見た。
「呼雪はわかるか?」
「……」
「呼雪?」
 突然黙ってしまった呼雪を心配する刀真。
 すると次の瞬間――。
「いって! なにする!?」
 呼雪が急に刀真の首筋に噛みついて、吸血をしてきた。
「そのオオカミの耳としっぽのせいか!? 正気に返れ!」
 刀真がチョップすると、吸血をやめる。
「ふぅ……よか――」
 安心したところに呼雪のバンビキックを顎に食らってしまった刀真。
「ぎゃーーーーーー…………!」
 隣の女湯へと飛んで行ってしまった。
 騒ぎを聞きつけた、ヘルが慌てて呼雪を回収し、浴衣に着せ替え、部屋へと猛ダッシュ。
 その間、首にぎゅーっと抱き着かれたり、吸血されたりでちょっと幸せそうなヘルがいた。
 部屋に着き、お布団の上に呼雪を転がすと呼雪の口と自分の唇を重ねる。
「もう、なんて顔してんの……」
 ヘルは普段とは違う色気の漂う雰囲気の呼雪にノックアウトされてしまったようだ。