校長室
取り憑かれしモノを救え―調査の章―
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●追走録5 魅了された、アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)はリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)に襲い掛かってきた。 同じところにいた、ソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)は魅了されずに済んだので、今回は村に置いてきている。 きっと、アストライトが魅了されたのは、時折リカインに本気の殺意を向けてくることが合った。 そこを刺激されたのだろうと考えている。 アストライトは元は兵器として生み出された個体だった。だからこそ、怨念の宿る剣というものを見てみたかったのだろう。 「貴方に破壊活動はさせないわ」 そう言って、リカインはアストライトに立ちふさがった。 殺意を向けていいのは、リカインだけ。それを念頭においてアストライトと契約した。 だから驚くというよりも、当然の帰結という調子でリカインは[ブルーラインシールド]を構えた。 そんなリカインにアストライトはぽりぽりと頬を掻いた。 「まあ待て、落ち着け」 リカインに向き直るアストライトはいたって普段の調子で話しかけた。 「はあ、何を言ってるのよ」 それを怪訝な表情でもってリカインは返した。 「もし何かあったときのために、あの女から離れたんだ」 アストライトの言葉しっかりとしていた。明らかに魅了されていない。 「どういうことよ」 「どうもこうもない。あの剣についてみていたが、あれは違う。俺のような決戦兵器ではない」 アストライトの言葉がリカインにはいまいち理解ができない。 「もっと性質の悪い……あれは本当に狂っている……」 「何を見ていたのか話して」 「ああ」 アストライトは短く答えて、ミルファの戦いの一部始終を伝えた。 「命を取らない……いえ、取る必要がない。取るに足らない存在だと完全に見下しているのか……」 話を聞いてリカインは独り言のように言葉を紡ぐ。 「それに、不意打ちの致命傷すらものともしないって……本当に化け物?」 「いや、それは違う。多分これは俺の予想だが、あの剣がないときっとあの女もこの結界の影響を受ける」 「そうなの?」 「多分な」 そういって、アストライトはどさっと地面に腰を下ろした。 「頃合を見計らってあの剣を破壊するわよ」 「別にそこまでしなくともいいだろう」 「いいえ、あの剣に取り付いた怨念は、殺すことよりももっと酷い、生きているけど死んでいる状態を作り出すわ」 リカインはアストライトから聞いた話を自分の中で吟味し、答えを出した。 「何より腕っ節に自慢のある人の心を折る行為が一番怖いわ」 リカインはそういって、ミルファを探すために歩き出した。