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取り憑かれしモノを救え―調査の章―

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取り憑かれしモノを救え―調査の章―
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●武器―情報―

 そこはある意味一種の戦場であった。
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は、一人情報のとりまとめをしている。
 いつの間にか、調査の情報をリアトリスが率先して共有していた。
「はい、ちょっと待ってね。まずは前の人のを纏めてしまうから!」
 最初はリアトリスも調査をしていたのだが、集まる情報が芳しくなく、持ってきた原稿用紙に他の人の調査を纏め始めたことからそうなった。
 あがってくる情報を取りまとめているだけでも、見えてくるところがあった。

 例えば、玉石は三種類別々のところに安置され、破壊を防ぐために人造のモンスターに守らせていること。
 赫玉石は、遺跡の中のゴーレムが守護していること。
 翠玉石は、沼地の湖が変質しスライムになること。
 蒼玉石は、人の魂を変質させたゴースト。ただし、蒼玉石のゴーストに関しては話をすることが可能かもしれないこと。
 そして、対象地点には人払いの結界が敷かれており、それをどうにかしなければ近づけない可能性があることも分かった。

 例えば、結界の本来の姿は、強大なモンスターを閉じ込めるために存在するはずだったこと。
 それが、村を守る一人の人間が死んだことによって、狂い、剣の持ち手以外の戦闘能力を大幅に下げる術式が組み込まれていたこと。
 更に言うなれば、結界から逃げ出すことは不可能ではあるが、どこかに抜け道があるということだった。
 結界の要である玉石をどうにかすれば、結界の力は弱まり弱体化されている人たちの能力も少しずつでは戻ることも分かった。

 例えば、剣には、本来何の力もなく、唯一つの武器であったこと。
 それを、結界の開発者が弄り、剣の持ち手の力を増幅させるような術式を組んでいること。
 その剣で処刑された結界の開発者は死後怨念となり、結界の完成と経過、ほころびなしで機能しているかを調べるために持ち手を捜しているのだろうという予想まで立てることはできた。
 ミルファのうわごとのように呟いていた、壊そうという言葉は、敵対者の敵対意思を壊そうという風に取れた。
 実際は少しばかり違うのかもしれないが。

 それだけではなく、紐解かれていたのは、人物像までだ。
 結界の開発者と、剣の持ち手は姉弟関係であり、勇ましい姉が死んでしまったことにより、弟が狂ってしまった。
 明確なイメージを想起させるような肖像画もあり、資料として事欠かない魔術書もあった。

 リアトリスはそれらを原稿用紙に纏めていく。
 そして出来上がった資料を他の人にも見せ、納得のいくものが出来上がった。
「これで、僕たちのやれることはやったね」
 既に日は傾き始めていた。
 事件発生からどれだけ時間が経ったのかは定かではないが、足止めに向かった人たちが一向に戻ってこないことを考えると早急にこの情報を伝えなければいけない。
「これを伝えればいいんだね?」
 ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)がまとまった資料を手に言った。
 足止めに行っているリュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)に伝えればいい。
 電波くらいなら届くだろうと踏み、リュースに連絡を取る。
「ああ、リュー?」
 どうやら連絡がついたようだった。
「そっちも大変なのは分かるけれど、調査で分かったことを伝えるよ。情報を共有してもらえると助かる」
 向こうは向こうで大変なようだった。
 それでも、今結界の中で連絡を取ることができるのはヴィナとリュースだけだった。
 ヴィナは要点だけ掻い摘んで話す。
「だから、結界の要をどうにかするまで、持ちこたえて貰ってもいいかな?」
 短い了承の言葉を聞き連絡を終える。

「姉……か」
 小さく高峰雫澄(たかみね・なすみ)は呟き、懐にある古びたデリンジャーをぎゅっと握り締めた。
「雫澄?」
 魂魄合成計画被験体第玖号(きめらどーる・なんばーないん)――ナインが雫澄を気遣うように声を掛けた。
「なんでもないよ」
 それに雫澄は軽く首を振り何事も無かったかのようナインに小さく笑みを見せた。