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空京の街をきれいにしよう

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空京の街をきれいにしよう

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「戻り戻って、またここか!」
 追われたドクターハデス達は、最初の広場に逃げ込んだ。人出に紛れ込んで、なんとか身を隠す。
「兄さん、もう帰りましょう」
 逃げながらも貼っていったため(もっとも全て片っ端から剥がされたが)、ポスターは残り100枚程。このまま持ち帰るようなことはしたくなかった。
「いや、最初の目的をやり遂げてこそ、オリュンポスの名が響き渡るのだ! あと一息じゃないか」
 ハデスは咲耶とヘスティアの肩を叩く。咲耶は今日何度目かのため息で、ヘスティアは「はい、ハデス博士」と返事をした。
「そうとは言え、どこに貼ったものか」
 悩むハデス達に近寄ってくる酔っ払いがいた。
「おっ! 良いものもってるじゃねえか。ちょうど薪が切れて困ってたんだ。おーい、薪が見つかったぞー」
 アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)ウーマ・ンボー(うーま・んぼー)を呼び寄せて、ヘスティアの持っていたポスターを乗せる。
「あっ、何を!」
 ハデス達があっけに取られているうちに、ポスターは焚き火の中に投じられた。
「燃えるねー。焚き火はこうじゃなきゃな」
 焚き火を取り囲んでいた人数は、アキュートが酒肴を提供したこともあってか、数十人以上に膨らんでいた。
「ま、お前さん達も飲んで飲んで」
「私は未成年ですから」と咲耶は断ったが、ハデスに輝晶姫で年齢不詳のヘスティアは相伴に預かった。
 咲耶は不安に思ったが、一番の不安の種だったポスターが焼けてしまったのは彼女を安堵させる。
「兄ちゃん、元気だねー、一杯どうだい?」
 広場でも演説を始めようとしたクロセルだったが、ここでも中断が入る。
「いえ、これから演説を始める予定なので……」
「おっ、そりゃあちょうど良い、一杯飲むと喉が滑らかになるよ」
「本当ですか?」
「今まではどうだったんだい? 誰か聞いてくれたかい?」
「いえ、あまり……」
「だろう。同じコトしてちゃいけないよ。ま、一杯」
 結局、これがきっかけとなって、クロセルもスノーマンも杯を重ねていく。
「よーし、拙者のスキルで雪を降らせて見せるでござる」
 酔っ払ったスノーマンがスキルを発動させる。酔っ払いの集団の上に白いものが降ってきた。
「ペッ! こりゃ灰だ!」
 燃え上がったポスターの灰が吹き飛ばされて、降りかかってきたに過ぎなかった。
「もう一度やってみるでござる」とスノーマンは挑戦したが、何の変化も起きなかった。

「さすがにちょっとまずいよね」
「そうね」
 焚き火の集団が大きくなりつつあることに気付いた七瀬 雫(ななせ・しずく)リリア・アクイーア(りりあ・あくいーあ)は連絡を取る。
 駆けつけたのは松岡 徹雄(まつおか・てつお)達。
「あー、君達、ちょっとまずいんだけどなぁ」
「お、ボランティアご苦労様です。ま、ま、休憩どうですか?」
 アキュートが勧める酒を「ちょっとだけ」と徹雄は傾ける。掃除に疲れた体に隅々まで染み渡る。
「よ、良い飲みっぷり」
 勧められるままに2杯3杯と重ねていく。こうなると黒凪 和(くろなぎ・なごむ)では止められない。
 アユナ・レッケス(あゆな・れっけす)などは「コレ飲むと、トモちゃんに会えますか?」と飲もうとして、和に止められる始末だ。
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)に引っ張られていた刀村 一(とうむら・かず)も焚き火の周りに集まる。
「あー、オリュンポスの人だ!」
 目ざとくドクターハデス達を見つけたのはアリッサ。ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)レティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)が捉えようとしたものの、酔っ払いの集団に阻まれる。
 アリッサは協力するどころか、「アリッサちゃんもオリュンポスの仲間入るー! 一緒にベルクちゃん倒すんだもんねー!」とまさしく、焚き火に油を注いだ。

 酔っ払い連中と清掃ボランティアの間で、一進一退の押し問答がされていたが、やがて東條カガチや小鳥遊美羽も集まって来ると、がぜんボランティアの勢いが強くなる。
「よーし! 分かった!」
 間に入ったアキュートが人差し指を高々と上げた。一同が「何事か」と静まり返る。

「解散!」
 
「ワーッ!」と、酔っ払い達がてんでんバラバラの方向に逃げだした。
 ドクターハデスに咲耶とヘスティアも、それに紛れて逃げていく。
「達者でな! これに懲りたら、もう無茶はするなよ!」
 ウーマを抱えたアキュートが叫ぶと、咲耶は会釈で応えた。