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リアクション
「ほらっ、こっちよ!」
場所は戻って地上。
天貴彩羽が黄昏の星輝銃で敵を狙撃し、注意をこちらに引きつけている。
そんな彩羽の存在に気づき、数人の鏖殺寺院の信徒たちが集まってきた。
集まってきた敵に四方を囲まれる形になった彩羽だったが、魔鎧の下の表情は落ち着いている。
そんな彩羽は叫んだ。
「来なさい、アルラナ!」
彩羽の声に応えるように、彼女の後ろから不気味な笑い声が響く。
と、次の瞬間――彩羽の影がぬるりと立ち上がる。
そしてその影は徐々に人の形を成していき、彩羽と契約を交わす悪魔アルラナ・ホップトイテがそこに召喚された。
「ミーのターンデース!」
アルラナは両腕を大きく広げてそう叫ぶと、その身からおぞましい気配を放つ。
するとその気配に誘われて、どこからともなく死霊の群れが姿を現した。
そんな死霊たちはケタケタと気味の悪い笑い声をあげながら、敵の周囲をぐるぐると回り始める。
そして気がつけば、彩羽に襲いかかろうとしていた敵たちは闇に囚われていた。
敵は荒事に慣れた鏖殺寺院の信徒たちだったが、信じられない現象を目の当たりにして思わず小さな悲鳴を洩らす。
「ミーと遊びまショウ」
と、そんな信徒たちの耳元に悪魔の甘い囁きが響く。
そして次の瞬間、周囲を覆っていた闇の中から様々な動物の特徴を無理矢理ひとつにしたような名伏しがたき獣が姿を現した。
その獣の上には闇の化身とでもいうべき畏怖すべきモノが立っている。
「アナタ達に、窮極の破滅をプレゼントしてあげマス!」
闇の化身はそう言うと、その身から無数の触手を伸ばした。そして地獄の天使が持つという翼を広げ、信徒たちへと迫る。
「ギャア嗚呼あアああ嗚アああッッ!?」
信徒たちの口から、この世のものは発する思えない絶叫が上がった。
「フフフっ、どうやら喜んでいただけているようデスネ」
膝をついて白目を剥いている信徒たちの前には、いつもと変わらぬ姿をしたアルラナが立っている。
鏖殺寺院の信徒たちはアルラナの恐ろしい魔力により、その身を蝕む妄執に取り憑かれてしまった。
恐ろしいことに、彼らは永遠に醒めない悪夢の中に閉じ込められてしまったのだ。
「ボクにはかなわないんだよ!」
『アル・アジフ』が叫ぶ。
空を飛ぶヴァリアントモンスターを奈落の鎖や天のいかずちで地上へたたき落とし、魅惑のマニュキュアで地上を這うモンスターを同士討ちにさせる。
次々に襲い来るモンスターを相手に『アル・アジフ』は圧倒的な力を見せつけていた。
そんな彼女の姿を見て、知能のある人間は恐怖する。
「なんだよ? おじさんたちはボクと遊ばないの?」
おぞましい気配を放ちながら、鏖殺寺院の信徒たちを見つめる『アル・アジフ』
信徒たちはその恐怖に耐え切れず、背を向けて逃げ出した。
そんな敵の後ろ姿を指さして、『アル・アジフ』は哄笑を上げるのだった。
「どこに行くの?」
と、戦意を失い『アル・アジフ』の前から逃げ出した鏖殺寺院信徒の前に、ひとりの若い女が立ち塞がった。
彼女の名前はグラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)。エリザベートも知らないある密命を受けてこの場に立つ彼女は、じっと鏖殺寺院の信徒たちを見つめている。
「そっ、そこをどけ!」
敵のひとりがしびれを切らし、武器を振り上げてグラルダに襲いかかった。
するとグラルダは、元から悪い目つきをさらに凶悪なモノへと変えて叫ぶ。
「跪け!」
その一言で、グラルダに襲いかかろうとしていた鏖殺寺院の信徒は武器を落とし、本当にその場へと跪いた。
だがそれは彼の意思ではない。彼の周りの重力だけ重くなり、まるで奈落の鎖に縛られているかのようになっているからだった。
「……我を畏れよ」
グラルダが跪く敵を見下ろしながら言った。
それは呪詛の始まりの句。
グラルダは淀みなくその呪文を唱え終えると、腰から呪鍛サバイバルナイフを抜き放ち、なんの躊躇いもなくその刀身を握った。
グラルダの手からナイフから、鮮血が滴り落ちて地面を紅く染め上げる。
「我が血が貴様を裁く――!!」
と、血を得たナイフからドス黒い瘴気が立ち上る。
グラルダは表情を変えずに、敵の眼前に瘴気を上げるナイフを向けた。
「罪は死を持って贖え!」
そしてグラルダがそう叫ぶと、黒い瘴気は敵を包み込み、肉を骨をすべてを土へと還した。
「灰は灰に、塵は塵に……」
グラルダはそうつぶやき、他の信徒たちへと視線を向けた。
ヒッ、と短い悲鳴をあげて敵はまた逃げていく。
「逃がさない」
グラルダはそう言いながら、傷ついた手をパートナーであるシィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)に差し出した。
シィシャは無表情のままその手の傷を癒し、ぽつりとつぶやく。
「潜入チームの援護とは、なかなか良い建前を考え付いたものですね」
その言葉にグラルダはシィシャを一瞥したが、すぐに逃げていく敵の背に視線を戻すと任務遂行のために動き出した。
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