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イルミンスールの怪物

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イルミンスールの怪物

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ACT2・陽動

 アジト周辺。
 イルミンスールの生徒に発見されたことから、その周りは警戒が厳重になっている。
 しかも何やら物を運び出している姿もうかがえた。
 そんな光景を息を潜めて見つめているのが、エリザベートの依頼を受けてやってきた契約者たちだった。
 彼らは無言で顔を見合わせると、ここに来るまでに決めた通りの行動をはじめる。
 まず最初に動き出したのは、アジトの入口を守る敵たちを誘い出す陽動部隊だ。
 彼らはアジトへの潜入を考えている契約者たちから離れた場所へと移動して、その準備を進める。

「皆さん。この場所がいいでしょう」

 陽動部隊のイルミンスール生非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は、敵が攻めてきた時のことを考え、土地勘を生かして”攻めにくく守りやすい”場所を見つけた。
 そしてそこを陽動作戦の拠点とすることを皆に提案する。
 異論を唱えるものはおらず、その場所に集まった契約者たちは各々準備を始める。
 近遠はパートナーであるユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)に自分の作戦を伝えた。
 それを聞いたパートナーたちは大きくうなずいた。

「心得た。我は敵をこの場所の近くまで誘導すればいいのだな」

 イグナは戦乙女らしい凛々しい顔つきでそう言う。

「あたしはイグナちゃんを支援しますわ」
「アルティアも応援をがんばらせていただきます」

 ユーリカとアルティアは、両手を胸の前でぐっと握ってやる気を見せる。

「ええ、皆さん頼みましたよ」

 そんなパートナーたちの力強い言葉に近遠は笑顔で応えた。

「おいっ、こっちの仕掛けも準備OKだぜ」

 と、光学迷彩で姿を隠して何かをやっていた国頭 武尊(くにがみ・たける)が姿を現し、ニヤリと笑う。
 彼はこの拠点から少し離れた場所に悪魔の目覚ましを使ったちょっとした時限爆弾を仕掛けてきたばかりだった。

「爆発はもうすぐだ。それがはじまりの合図だぜ」

 武尊はそう言いながら、土を盛って急遽作り出した弾除けの壁の上に血煙爪雷降をどっしりと置いて敵に狙いを定めた。

「準備はいい、みんな?」

 魔鎧ベルディエッタ・ゲルナルド(べるでぃえった・げるなるど)を身に纏った天貴 彩羽(あまむち・あやは)は後ろを振り返り、パートナーのアルラナ・ホップトイテ(あるらな・ほっぷといて)アルハズラット著 『アル・アジフ』(あるはずらっとちょ・あるあじふ)にそう聞いた。

「フフフっ、ミーに抜かりはありまセン」

 怪しい言葉でそう応えたアルラナは、その口元に喜々とした笑みを浮かべる。
 どうやら彼はこの状況を楽しんでいるようだ。

「ギャハハ! 早くはじめようよ、彩羽!」

 そしてもうひとりのパートナー、女の姿をしている魔道書『アル・アジフ』も、アルラナと同じような気持ちでこの状況の中にいた。

「そろそろか?」

 HCを使い、潜入組に爆弾の爆発が突入の合図であるということを告げ終えたレン・オズワルド(れん・おずわるど)は武尊にそう聞いた。
 ちらりと時間を確認し、武尊が応える。

「ああ、もうすぐだ。3、2、1……」

 ―――!!

 武尊の声をかき消し、派手な閃光と轟音を響かせて爆弾が爆ぜた。
 大爆発といってもいいほどの爆発だったが、炎はまったくといっていいほど上がっていない。
 トラッパーの技術を持っている武尊が作り出した爆弾は、音と閃光が派手なだけの爆弾だった。
 だが敵の動揺を誘うのに、これほど効果的なものはない。
 武尊の思惑通り、敵は突然の大爆発に驚き、パニックに陥っていた。

「今だ、行くぞ!」

 白煙がもうもうと立ち込める中、レンの怒号が響く。
 それが合図になり、誘導組の面々は動き出す。
 そして突撃していく仲間を援護する武尊は、血煙爪雷降の銃爪(ひきがね)を引いた。