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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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第六章

 同時刻 ツァンダ上空

「全機! ハーティオンを援護してください! 何としてもハーティオンを守るんです!」
 アストレアのコクピットで真人は蒼空学園の友軍機に向けて叫んだ。
 今、蒼空学園の機体の中で最も損傷が激しいのはハーティオンだ。“フリューゲル”のプラズマライフルが炸裂しただけあり、損傷のひどさたるや一目瞭然。そして、それを見逃す敵部隊ではない。
 漆黒の一機と濃緑の五機が一斉に襲い掛かる状況からハーティオンを守るべく、蒼空学園の部隊は今まさに奮闘している最中だった。
 仲間たちが他の機体を抑えつけてくれている間、真人とセルファの乗るアストレアは濃緑の一機とビームサーベルで鍔迫り合いを演じていた。
 互いに高出力のビームサーベルを振りかざし、光刃が正面からぶつけ合い、凄まじいエネルギーを周囲に撒き散らしながら熾烈な戦いは続いていた。
 だが、幾合かの打ち合いの末、次第に押されていくのはアストレアだ。
「うぅ……かなり、手強い、わね……!」
 メインパイロットシートに座るセルファは歯を食いしばりながら一言一言を絞り出すように一人ごちる。既に操縦桿は折れんばかりの目一杯さで倒され、ペダルは踏み抜かれんばかりの目一杯さで踏み込まれている。
 それでも少しずつではあるが確実に押されていく愛機のサブパイロットシートで真人も苦しげに呟いた。
「セルファ、スラスターの推力はさっきから既に全開です……このままだと、推進剤がもう持たない……!」
 やはり先刻、漆黒の機体のパイロットが語ったように、機体性能の差は圧倒的だ。ビームサーベルの出力はもとより、単純な押し合いの強さに直結する要素の一つである推進力がケタ外れであり、“フリューゲル”特有の背部飛行ユニットが生み出す規格外の強大さを誇る爆発的な推進力が鍔迫り合いにおける押しの強さをこの濃緑の一機に与えていた。
 対するアストレアも新式ビームサーベルの光刃で押し戻そうとするも、圧倒的な敵の推進力を前にかろうじて機体を斬られずに防ぐのが精一杯だ。アストレアが両腕でビームサーベルを保持して押し返しているのに対し、敵機は片腕一本で保持したビームサーベルを押し込んでくる。しかも、それでアストレアと互角以上の鍔迫り合いを演じているばかりか、押し込んでいる光刃の深さはじりじりと深くなっていく。
 じょじょに押されつつあったアストレアの防御だが、ほどなくしてその精一杯の防御も強引に押し切られ、アストレアの表面装甲が徐々に融解していく。胸部サブカメラからの映像でそれを確認した真人は、力づくでビームサーベルを押し込まれたことで、自機の光刃がこともあろうに自機の表面装甲に触れ、そのせいで融解させている光景を目の当たりにする。
「装甲表面にダメージ……でも、まだいけますっ!」
 多少のダメージを前に怯むことなく、まるで雄叫びを上げるように損傷状況を報告する真人。だが、敵機はそれを嘲笑うかのように高出力ビームサーベルを片腕一本で更に押し込むと、空いているもう一方の腕で腰部後方のハードポイントに懸架されているプラズマライフルを抜き放ち、銃把を握る腕を真っ直ぐに伸ばす。真っ直ぐに伸ばした腕と銃口の向く先は、もちろんハーティオンだ。
 何とか発射を止めようとするも、アストレアは相変わらず大出力のビームサーベルに押さえつけられて動けない。強力なビーム刃同士が鍔迫り合うことで発生する膨大なエネルギースパークにモニターすべてが染まりつつあり、過度の発光によって殆どまともに見えなくなった映像の中で敵機の銃口が俄かに光り、強力なプラズマエネルギーの銃撃が今まさにハーティオンを撃ち抜き、破壊しようとするまさにその瞬間、真っ直ぐに伸ばされたプラズマライフルの銃身が二条のレーザー光によって撃ち抜かれる。
 発車直前で銃身にエネルギーが充填されている所を撃ち抜かれたせいだろう。敵機のライフルは眩いプラズマ光を惜しげもなく放出しながら大爆発する。慌てて銃を放り投げたから良かったものの、もし後一秒でも放り投げるのが遅れていたら、今頃敵機の腕どころか肩口くらいまでは吹っ飛んでいたかもしれない。
 爆発音と爆炎に代わって周囲を照らし出すプラズマ光の余韻が消え入らぬうち、蒼空学園の通信帯域に新たな通信が入る。