蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

屍の上の正義

リアクション公開中!

屍の上の正義

リアクション

「味方機と敵を確認。迎撃するため、飛行形態から通常形態に移行します」
 独特のフォルムと灰色のイコンE.L.A.E.N.A.I.に乗って援護にたどり着いたのは、非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)
 メインパイロットにはユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)、別途取り付けた【機内オペレーター席】にはイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)の姿があった。
「これだけのイコン機がありながら、苦戦を強いられているなんて……」
「皆様方が情けない、わけではなさそうですわね」
「しかし不思議だ。奴らからは強い殺気は感じないのだよ」
「でも、ここら辺にはまだいないでございますね」
 四者四様の感想を述べ、改めてその事態の深刻さを痛感する。
『こちら【情報管理室】、応答願います』
「こちらE.L.A.E.N.A.I.の近遠です。遅くなってすいません」
『来てくれたことに最大の感謝を。状況はお送りしたデータと現状の光景を見ればわかるかと存じます。
 近遠さんにはそちらにいるクェイルと連携し「中継基地」の最終防衛ラインを維持してもらいます』
「責任重大ですね。わかりました」
『もうしばらくすれば味方イコン機が向かう手筈です。それまでは2機で持ちこたえてください、以上です』
 【情報管理室】からの通信が閉じられるとほぼ同時に、今度はセレンフィリティから通信が入る。
『こちら、そっちの下にいるクェイルに乗ってるセレンフィリティ、セレンでいいわ。
 一応連携はするつもりだけど、私はイコンの操縦がてんでだめなの。だから先に言っとくわ。後ろから牽制するだけで手一杯、ごめんね』
「大丈夫ですわ。どんな武装でも数を撃てば当たりますもの」
『……豪快ね。でも、そう考えることにするわ。ありがとう、それじゃよろしく!』
 再度通信が閉じられる。イレイザー・スポーンは既に肉眼で捉えられる位置にまで来ていた。
「レーダーには12時方向から来る一団のみ反応あり」
「9時方向には影も形もないのだよ」
「3時方向にも誰の姿もございません」
「味方機の反応は後ろにいるセレンさんのクェイル機のみです。よって、『ヴリトラ砲』を使いある程度まとめて倒します」
「了解いたしましたわ! お二人とも、反動には気をつけてくださいね!」
「了解なのだよ」
「わかりました」
 照準を安定させるためにしっかり大地に足をつけるE.L.A.E.N.A.I.。
 その後ろでは不測の事態に備えて『アサルトライフル』を構えるクェイル。
「『ヴリトラ砲』準備完了です」
「了解ですわ! 目標、12時方向から来る敵一団! 『ヴリトラ砲』、発射!」
 ユーリカの声と共に放たれる『ヴリトラ砲』。その軌跡は黒いドラゴンが駆け抜けたかのよう。攻撃は見事に敵へ着弾、進行していた一団がほぼ壊滅。
「『ヴリトラ砲』の再装填が完了するまでの間は他の兵装でカバーしてください」
「言わなくともそのつもりですわ!」
 細かく散った小型スポーンを『ツインレーザーライフル』で射抜いてくユーリカ。
 不意にオペレーター席で周りの様子を窺っていた二人が叫ぶ。
「9時の方向から敵の姿あり、飛行・小型。どうやら爆風に乗って来たようだな」
「2時方向にも小さな敵が飛行し、接近してきています」
「9時方向はこちらで迎撃しましょう、2時方向のは」
「セレンさんっ。2時方向から飛んできている敵を、お願いしますでございます」
『了解っ! あれくらいならやってやるわっ!』
 近遠よりも速くアルティアがセレンに連絡を入れる。
 9時方向の敵はユーリカが『マジックカノン』で、2時方向の敵はセレンが『アサルトライフル』で牽制後『バズーカ』で撃墜。
『やったっ! 『バズーカ』を動く相手に当てたのなんて久方ぶりよ!』
「おめでとうございます」
『ありがとう。そっちもさっと指示くれて、やりやすかったわ!』
「ボクからもお礼をいいます。アルティア、素早く通信をしてもらって助かりました」
「はいでございます」
「ほのぼのとしているところ悪いのですけど、次がきましたわよ」
 ユーリカの言うとおり、他の場所から続々と小型スポーンが進行してきていた。
「防衛ラインがかなり苦戦しているのでしょうか……」
『こちら【情報管理室】です。防衛ラインの方では中型、大型をメインに止め、
 中間地点とこの「中継基地」前で小型スポーンを食い止めることになりました』
「つまり、敵の数もある程度限りがついた、ということですか?」
『その通りです。苦しいことには変わりませんが、ここを乗り切れば我々の勝利です。
 もうすぐ、そちらのほうにありったけの味方機がつきます。
 各機と連携し、「中継基地」を守り抜いてください。お願いします』
「わかりました」
「前方から敵、後ろからは味方機の姿を確認したのだよ」
 それは味方機と、小型スポーンの群れ、両方が来たということ。
 最後の大事な局面、近遠は気を引き締めて小型スポーンへと向き直るのだった。

「遂にここまで来たか。できるなら、その姿を見ることなく終わればよいと思っていたんだけどねぇ」
「これは、『禁猟区』の必要はなかったかもしれませんね。ここまで堂々姿を現しになって頂けるとは」
 機動力・パワーに重点が置かれている近接イコンルドュテに乗り、
 「中継基地」を守るためその身を戦場に投じたのは清泉 北都(いずみ・ほくと)、そしてクナイ・アヤシ(くない・あやし)
「……小型の群れが合体し、中型になってますね。その分数が減ったと喜ぶべきでしょうか」
「何にせよ面倒なことには代わりないんだけどねぇ。……でも中継基地は皆で作った物。それを壊されるのは、面倒以上に、嫌なんだよね」
 ゆったりとした物腰とは裏腹にイコンの動きは素早かった。
 遠距離から『ナパームランチャー』を使い中型スポーンの外殻を攻撃、徐々にその身はバラバラになっていく。
「合体してるだけだものね? バラバラ崩れ落ちるのは当然だ」
「核となっている大き目のイレイザー・スポーンを発見」
「了解」
 クナイの言葉を聞いたとたん、ルドュテが爆発するかのように、大地を巻き上げながら移動を開始。
 進行していた中型スポーンはボロボロになり、その内部から大きめの個体であるスポーンが見える。
「3方向から小型の飛行スポーンが接近中」
「はいはい、こっちだねぇ」
 一度停止して、振り向きざまに敵を補足後『ウィッチクラフトピストル』で綺麗に飛行型スポーンが打ち抜く北都。
「敵消滅を確認。再度、中型スポーンの迎撃をお願いします」
「了解了解ー」
 口調と行動のミスマッチさを携えながらも、ボロボロになった中型スポーンへと接近。
 相手のなけなしの攻撃も難なくかわし、その中核と見られるスポーンの眼前へと経つ北都。
「残念だけど、これでおしまいだよ」
 鋭く、素早く、『ソウルブレード』で串刺しにする。
 ひどくギリギリのラインでその原型を保っていた中型スポーンは核を担っていたスポーンがいなくなったことで、瞬く間に瓦解した。
「一段落っと」
「ではございません。9時の方向から、足の速いのが来てます。3時方向についても同様のが接近中ですが、
 あちらには味方がいるので平気でしょう。他のスポーンに関しては妨害電波により、
 その動きは多少なりとも遅くなっていますのでまだ猶予があります」
「その間にってことか。うん、段階踏んで倒していけば何とかなりそうだね。
 ……それじゃ前線の人たちの頑張りが、「中継基地」を作った人たちの思いが無に帰らないように、もう一踏ん張りしようか」
 いろんなものの思いを感じながら、マイペースながらも着実に敵を排除していく北都だった。

「あちらは任せても平気そうだな。こっちは俺たちでやるぞ」
「【イコン格納庫】の補給ももうなかったし、慎重に、かつ大胆にいかないとな」
 赤き羽を纏っているかのようなイコンセラフィートに搭乗し、味方のフォローをしていたのは桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)の二人。
 最初は前線、中間地点と戦場を転々としていたが、最終的にこの「中継基地」前で味方のフォローを行っていた。
「さっきまでとは違って、ここを突破されたらそれで終わり。修理する暇ももうない。だから被弾せず、フォローは随時って、ご機嫌な難易度だよな」
「前線の彼らは最初から今まで全力を持って戦ってくれている。それを無駄にすることは、俺にはできない。
 そして彼らは俺たち後衛を信じ、大型スポーンの撃破に当たってくれている。尚のこと、裏切るわけにはいかない」
 いつも以上に真面目に、気迫溢れる声色で語る煉。
「……ああ、やってやろうぜ。あんなくだらない奴らなんかに、私たちが負けるはずないってな! そんな無茶な動きでもあたしが制御する! 好きに暴れな!」
「頼む……敵捕捉。攻撃を開始する」
 敵を発見した途端、光のように早く、行動を開始するセラフィート。小型スポーンの一団『銃剣付きビームアサルトライフル』で動きを牽制。
 そう、牽制だ。セラフィートの真髄はここから。
「間合いに入った! ぶった斬ってやれっ!」
「……はぁっ!」
 スピードは落とさないまま小型スポーンの群れの側面から突撃、勢いそのままに『新式ビームサーベル』で無差別に斬り刻んでいく。
 その姿は、天使の如く。例え偽りの名を冠していようとも。
「12時方向に遠距離型を確認! 砲撃、3秒後にくるぞ!」
 エヴァの的確な指示を受け敵の攻撃をかわし、『ディメンションサイト』で敵との空間を把握。大よその位置と距離を割り出し、加速。
「……レーダーにいきなり反応だ! あたしたちよりも後ろに敵の反応、複数! あっちにいるのは生身で防衛に当たってるやつらだぞ!」
「了解。迎撃後、即座にそちらの支援に回るっ」
 加速、以上に加速する。そのGは計り知れない。それでも二人はやめようとはしなかった。
「目標補足」
「他の奴と合体しようとしてる! 面倒になる前に―――」
「やらせてもらうぞっ!」
 『空裂刀』を使い、一刀の元に斬り伏せる。合体もできずにパラパラと落ちていくスポーンの残骸を置いて、
 先ほどレーダーに反応があった場所へと即座に急行。
「生身の奴ら、無事だといいんだが……」
「急ぐぞ」
「ああっ!」
 味方のフォローへと急ぐ二人。いきなり現れたスポーンたちを止めることはできるのだろうか。