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リアクション
飛都の発見は、すぐにウィニカ達に伝えられた。
分析に掛かりきりで動かない飛都に代わり、ケヴィンが噛み砕いた説明をする。
「もともとは同じ鉱脈の一部だったのであろう。結晶化の際に、本流から分割されたんだと思われる」
「それって……どういうこと?」
一度希望を断たれ、気持の切り替えたばかりのウィニカは、明らかに混乱した様子でケヴィンに詰め寄った。
「ウィニカ」
ケヴィンはその肩を軽く叩き、落着かせるようにゆっくりと言った。
「貴様もテクノクラートの端くれなら、軽々しく結論を急ぐな」
「……う、はい」
ウィニカはばつの悪そうな顔で答えて項垂れる。
「だが、希望は持ってよいぞ。実際に発掘してみなければ確たることは言えないが、「紅蓮の機晶石」の一部であることは間違いあるまい」
それから、 ウィニカの頭をぽんぽんと軽く叩いて、微笑んだ。
「良かったな」
「……え」
事態を理解しかねたように、ウィニカはぽかんとしてケヴィンを見た。
一瞬の間の後、周囲がざわめき始める。
「ウィニカ! よかったね!」
直球でそう言ってウィニカに抱きついたのはアイ・シャハルだ。
色々なことが頭をよぎる。
「紅蓮の機晶石」ことがメイを助けることと思い込むことで、意識の外に追いやって来た色々なこと。
そして、この状況で……自分が「宝」を独占していいのか、ということ。
それでも、メイを救えるなら。
ああ、でも……。
頭の中がごちゃごちゃして考えがまとまらない。
今自分が何を考えて、何を決断しようとしているのかすら、わからなくなってくる。
体が震える。
なんで震えているのか、自分でも解らないけと。
ウィニカは思わず両腕で自分の体を抱きしめ、奥歯を噛み締めた。
答えを出さなきゃ。
今度こそ、間違えないで答えを出さなきゃ。
アイシァは、息を詰めてウィニカを見つめた。
どうい答えを出すにせよ、アイシァはウィニカに着いて行く。
アイシァもう、そう決めている。
だから、あとはウィニカが答えを出すだけ。
ウィニカの迷いが、苦悩が手に取るようにわかる。
でも、あたしには、なにも……。
ふいに、両肩にぽんと手が添えられた。
ここに来てから……道の真ん中で迷子になっていたときから、ずっと横にいて支えてくれた手だと、すぐにわかった。
アイシァは、振り返らないで呟いた。
「……ルカさん」
耳元で、微かに笑う気配がした。そして、その両手は優しくアイシァの体を前に送り出した。
強ばって震えるウィニカの手に、何かひんやりしたものが触れた。
熱暴走を起こしたウィニカの心を鎮めるような、心地よい冷たさだった。
ウィニカはふと割に帰り、いつの間にかきつく瞑っていた目を開く。
いつの間にこに立っていたのだろう。
傍らのアイシァの手が、ウィニカのそれにそっと添えられていた。
「……アイシァ」
小さく呼ぶと、アイシァはウィニカを見上げて笑った。
そっか。
ウィニカは、理解した。
なにもかも、一人でやろうなんて思わなくていいんだ。
一人でなにもできないと落ち込む必要だってない。
だって……あたしは、一人だったことなんて、一度も、ないんだから。
「アイシァ」
確信と、少しばかりの不安を感じながら、ウィニカが口を開いた。
「あたし、絶対にメイを取り戻す」
「……うん」
「長くかかるかもしれないけど……一緒にいてくれる?」
アイシァの顔が輝いた。
なんだか、長い間忘れていたような、曇りのない笑顔だった。
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