リアクション
*** *** 「うおおおおお! 次のバーゲンまで時間がねえ! みんな急げ! だからって適当に詰むんじゃねえぞ!」 そう叫んでいるのはヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)。 「いいか、これはバーゲンセールなんだ。いい品物をこの時だけ、特別にお安くする! 安っぽく積み上げて品物まで安っぽく見せるんじゃない!」 その声にこたえるのは平さん(ペンギンアヴァターラ)、超さん(超人猿)、山田さん(ホエールアヴァターラ)の3人(?)。 しかしその時、山田さんが人とぶつかって床に落下してしまった! 少し怪我? もしてしまったようだ。 「おいっ大丈夫か?」 そんな山田さんへと話しかけたのはジヴォート。実は次のバイトまで時間があるためデパート内を散策していたのだ。 心配そうなその姿に『誰だ?』と思うヴァイスだが、彼の後ろに見える海や雅羅たち契約者の姿を見て、これだ! と荷物持ちを手伝ってもらえないかと頼む。 「時間もあるし、構わないよな?」 「ええ」 ジヴォートは雅羅に確認した後で頷き、ヴァイスに指示を仰ぐ。 「素早く運んで、突撃してくる奥様方のセンサーに反応しまくるよう、きっちり丁寧にレイアウトするんだ! 安っぽく見せるなよ!」 「お、おおっ……(ただ並べてるだけじゃなかったのか……)」 「アニマルズ! 新入りに色々教えてやれ!」 と、気合いの入っている一行から少し離れたところに子供たちが集まっている一角があった。 丸いフォルムに円盤。小さな手足とつぶらな瞳。 どこかで……そう。ニルヴァーナあたりで見かけたようなその姿。まさしく土星くんの着ぐるみがそこにいた。 (ふふ。これで私が誰か分からないよね! 完璧!) 中でほくそ笑みながら子供たちに愛想を振りまいているのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)。今回イキモから話を聞いて護衛として名乗りを上げた。 のだが、ジヴォートに……少なくとも社会見学中は気づいて欲しくないと聞いて着ぐるみ案を思いついたようだ。その案は功を奏し、風景に紛れ込んでいた。 「大丈夫かな」 そんな美羽を心配げに見つめているのは、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)だ。さらに後方から全体を見回しつつも、そう言って首をかしげた。 「たぶんあっちは美羽さんに任せていれば大丈夫ですよ。私たちは周囲の警戒と捕縛に努めましょう」 「……うん、そうだね。美羽なら、きっと大丈夫」 「ええ」 少し元気を取り戻したコハクにベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)はホッとしつつ、ジヴォートたちの近くを通りがかった男に目を止めた。 普通の買い物客に見えるが――。 「うっ」 ジヴォートのすぐ隣を通った時に呻いて倒れそうになった。気づいたジヴォートが手を伸ばす 「あっぶなーい」 前に、美羽がスーパー土星くんアタック(高速回転しながらの体当たり)を男にして遠くへ弾き飛ばす。男が気絶してナイフを手放すが、ベアトリーチェがすぐさまそのナイフを誰にも見られぬように隠す。 「あ〜遅かったね」 「おい、そいつどうしたんだ?」 驚くジヴォートを振り返り、美羽は説明する。 「どうも気分が悪いみたい。私が医務室へ連れていくから、君は準備の方をお願い」 あきらかに弾き飛ばしていたのだが、ジヴォートは疑うことなく信じた。 「分かった。じゃあ頼むな……ええっと」 「私はただの通りすがりの土星くん弐号だよ」 んなわけあるか! と周囲の人は心の中でツッコミをいれたことだろう。 「そうか。ただの通りすがりか。じゃあな、土星くん弐号」 しかしまったく疑うそぶりなくジヴォートは去っていく美羽と男を見送り、バーゲンの準備へと戻っていったのだった。 「じゃあベアトリーチェ、コハク。あとはよろしく」 「はい、お任せください」 「うん! こっちは任せて」 気絶した男から武器を奪い捕縛し、警察に渡すのはベアトリーチェとコハクの役目。美羽は2人に頷いてこっそり(?)護衛を再開したのだった。 |
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