リアクション
エピローグ そして、未来へ
「……これからどうするの、ドニア」
ドニアザードの村。
三機のイコンが降り立ったその村で、シェヘラザードはドニアザードに語りかける。
結局、新たなる大英雄の崩壊と共に死骨竜フェイターンも崩れ去ってしまったらしい。
必殺の技を繰り出せなかった唯斗は少しだけ不満そうだったが、フェイターンの遺骸の被害について心配していたリーブラは嬉しそうに微笑んでいる。
長たるドニアザードを失ったドニアザードの部族の者達は一様に不安そうな顔だった。
それも当然の事だろう。
長の配下の精鋭だけがドニアザードの部族ではない。
戦いとはおよそ無縁な者達も集まって、部族という形を成しているのだから。
「どうもこうも、ない……わ。私達には、学ぶべき事が、多すぎる」
「そうね」
そう、元はといえば、長たるドニアザードが世間知らずだった事が事の発端だった。
シボラの内部だけで争い、ついには世界の危機をも引き起こした。
同じ事を繰り返さないためには、シボラの部族達も広い世界を知っていくべきだろう。
「私、はね、シェヘラ」
「うん」
シェヘラザードの目を見上げるように覗き込みながら、ドニアザードは未来へ向けての言葉を紡ぎだす。
「貴女と同じ、ように。見聞を広めてみよう、と……思う、わ。外の学校で広い世界を学ぶ、の」
「そうね。それがいいと思うわ。あたしもおまえも、学ぶ事が多すぎるもの」
ドニアザードの瞳は、明るい輝きを宿している。
それはシボラの中での地位争いという枷から抜け出て、新たな世界へ羽ばたこうとする者のもつ輝き。
「うんうん、甘酸っぱいわねえ。何処の学校にするのか知らないけど、イルミンスールに来るんなら歓迎するわよ」
ルカルカに懐かれているアーシアがそう言ったかと思えば。
「シェヘラと一緒に百合園でもいいんじゃないか? ニルヴァーナ創世学園も面白いけどな!」
シリウスが、そう勧めてみる。
「ふふ……未来は大きく開けている……といったところですね」
「そうあるべきだろうさ、若者はな」
近遠に、司もそう言って笑みを浮かべる。
これから先がどうなるかなんて、誰にも分からない。
分かる方法はあるいはあるのかもしれないが、分からない方が面白い。
シェヘラザードも、ドニアザードも……シボラの人々も、全てはこれから始まるのだ。
皆さん、おつかれさまでした。
ドニアザードは広い世界へ出ることを決意し、シェヘラザードは流しの正義な学生生活に戻るようです。
シボラの部族で最も大きな「シャフラザード」「ドニアザード」の2つの部族が和解したことで、シボラの問題は沈静化しつつあります。
水晶骨格は再び封印され、抑止力としての水晶短剣もまた封印されました。
ドニアザード、シェヘラザードは、これからは一学生として、また何かしら騒動を起こすのかもしれません。
あるいは、何かの厄介な問題を引き連れてくるのかもしれません。
女の子が好きなドニアに、ジャスティスな性格のシェヘラ。
問題を起こすなというのは無理な話なのかもしれませんが……未来へ向かう二人の少女達に、今は祝福を。
そして、ここまでお付き合いくださいました皆様に感謝を。
また、次の物語でお会いしましょう。