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リアクション
「アベレイターにはアベレイターよ!」
「成功は、俺達が奴を丸裸にし弱点を顕にし注意と攻撃を引き付けられるかにかかっている……アーシアと共に勝利をもぎ取ってみせるさ」
「その調子! ここがラストバトルよ。気張りなさい!」
次々に沸くスケルトン兵を、ルカルカとダリル、そしてアーシアが破壊する。
アーシアの左右に展開するルカルカとダリルがかなりの実力者なのもあって、囮としては最適な役割となっていた。
「私の隙は、また今度は司君が埋めてくれますから問題ないっ!」
「多少傷つく覚悟をしてでも、俺みたいな男の戦士が最初の一手を撃たねばならんからなっ!」
そんな中、最前線で新たなる大英雄と打ち合うのはサクラコと司だった。
朱鷺に剛太郎、アリアクルスイドの援護があるとはいえ、水晶短剣から意識を逸らさせるために戦うのは並ではない。
一撃が必殺の相手を引きつけるには、こちらも必殺の心意気で挑み続ける必要があるからだ。
そしてそれは、精神を多大に消耗する。
だがそれでも、一歩も引くわけにはいかなかった。
「愚かな……抗って、何になる。無駄だと分かっているだろう。我に対抗できるものが何かなど、分かっているはず」
その言葉に、ギクリとなる。
やはり、こちらが水晶短剣を手に入れている事は予測の範囲内なのだろう。
「どちらが持っている。そんな遠くからで使えるとは思えんがな」
シェヘラザードとドニア。二人に向けられた視線を感じ、北都は気付く。
気付いているが、気付いていない。
新たなる大英雄は、水晶短剣をシェヘラかドニアのどちらかが持っていると考えている。
そして、それは当然の考えだ。
この一連の流れを伝説とするならば、考えられるのは二つのパターン。
すなわち、かつての大英雄シャフラザードの名を継ぐ者が戦う。
そして、かつての英雄ドニアザードの名を継ぐ者が、先代を止める為に戦う。
このどちらかであろうと考えるのは、新たなる大英雄にとっては当然の思考パターンだ。
そして、その思考に縛られている。
当然、そのどちらかであろうという考えに固定されている。
それは、巨大な隙になる。
「さあ、どうした。恐れずに向かってくるがいい。我はそれを正面から叩き潰してやろう」
そうはならない。
ソフィアの盾が、半身分だけずらされる。
その影から、涼介が弾丸のように飛び出していく。
その手にあるのは、煌く青い刀身。
「大英雄ドニアザードよ、あなたに恨みはないが邪竜を滅するためそして、未来ある者が新たな歴史や道を切り拓くためにあなたにはここで表舞台から退場してもらおう!」
涼介の携えた水晶短剣が、青く強い輝きを放つ。
その剣先は、吸い込まれるように新たなる大英雄の身体へと刺しこまれる。
かつて、悪竜フェイターンの雷のブレスを正面から防ぎ。
そして、数々の猛攻をも耐え抜いていた水晶骨格の力。
しかし、それでも。
それを封印する為だけに作られた女王器の前では、その無敵の防御力は無いも同然である。
「旧きより伝わりし刀身よ、今再び輝きを以って力に狂いし英雄を浄化せよ。これで終わりだ〜!」
涼介の言葉に呼応するかのように、水晶短剣の刀身から眩いばかりの青い輝きが放たれる。
それは刀身から、そして新たなる大英雄の身体から。
そして、部屋全体に乱反射するようにして広がっていく。
何かを言いかけた新たなる大英雄は……しかし、その言葉を紡がぬまま光の中に消えていく。
その後に崩れるように落ちたのは……精巧に作られた、水晶の骨格標本……のようなもの。
すなわち、水晶骨格のみであった。
「……なんてこった」
その様子を見て、恭也は舌打ちする。
まさか、水晶骨格だけ残して消えてしまうとは予想外だった。
魔力の残滓だけでも研究材料にはなるだろうが、流石に水晶骨格をここから手に入れるのは無理がある。
手に入れたとしても、封印されてしまった後ではどれ程の成果が得られるか。
「上手く、いかないもんだ」
そう言って、恭也は苦笑する。
だからこそ人生は面白い。
そう、自分に言い聞かせながら。
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