蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

その場しのぎのムービーアクター!

リアクション公開中!

その場しのぎのムービーアクター!

リアクション

 街外れの神社。
 境内で掃除をする早乙女 姫乃(さおとめ・ひめの)は二人の女性に話を聞かれていた。
 一人は白波 理沙(しらなみ・りさ)、もう一人は雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)だった。
「噂というか、事件に巻き込まれて困っている人なら知ってます」
「巫女さん、本当!?」
「理沙、慌てないで」勢い込む理沙を押し留める。「詳しく聞かせて」
「最近、毎日お参りに来る人がいるんです。あまりにも熱心にお祈りしているので、どうしたんですか? と尋ねたんです」
 動かしていた箒を止め、思い出しつつ話す姫乃。
「そうしたら、早くこの街の治安が良くなりますようにって。自分みたいな人を出さないでくださいって」
「自分みたいな人……被害者ってことね」
「具体的な内容は聞いてる?」
「なんでも、商品を盗まれるらしいです。高値の織物だとか」
「それは調査の価値ありだわ」
 言うが早いか動き出す理沙。
「ちょっと、待ちなさいよ……ありがとう。参考になったわ」
「いえ、これであの娘の役に立てるのでしたら」
 雅羅が会釈すると一陣の風が吹く。それが治まった時には二人の姿が忽然と消えていた。
「あれ……消えちゃった?」

 川岸に立つ一軒家。
 見た目は普通の家だが、そこには街で評判の織物職人チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)が住んでいた。
「うんしょっ……と。ふぅ」
 川で水洗いしていた織物を片付ける小さな背中。
「これを乾かして、採寸して、裁断して……やはり間に合いそうにないですわ」
 時間を計算すると、どうしてもため息が出てしまう。
 一つ一つ、すべてを自分の手で作り上げていく職人。
 完成まで時間がかかってしまうのはわかりきっているのだが、これは彼女のせいで起きた過ちではない。
 仕上がった織物が盗まれた。
「どうしようかしら……」
 気づいた時から新たに作り直しているが、流石に無理な話。取り戻すことができるなら、それが最善なのだが。
「この頃治安も悪いみたいですし、わたくしの件は後回しにされそうですわね」
 友人の結婚祝いだったのだが、もう他の物を用意するしかない。
「その悩み、解決してあげるわ!」
 口上と共に現れた黒装束。情報を聞き駆けつけた理沙だ。その後を追うように、
「姉さん、ちょっと待って! まだ、着替え終わって――」
 衣装を手で無理やり押さえる雅羅。
「もう、早替えは基本よ?」
「そんなこと言ったって……」
 先ほどの出番からほんの数分。着慣れていない衣装なら、尚更時間が欲しかった。
「えっと……あなたたちは?」
 頬に汗がつたいつつも尋ねるチェルシー。
「怪しいものではないわ。あなたが盗まれた織物を取り返してあげる、正義の忍者よ」
「その言い方自体が怪しい気がするわね……」
 雅羅のボヤキなど無視し、理沙は続ける。
「盗まれた織物の特徴を教えて」
「はあ……」
 怪訝に思いながらも、どうせ盗まれたもの、特徴を教えても変わりないかと当たりを付け、
「桜色を基調とした、桜柄の物ですわ」
「わかったわ。大船に乗って待っててね!」
 それだけ聞くと颯爽と去っていく。
「だから待ちなさいって……まったく、無鉄砲なんだから」
 腰に手を当てて嘆息する雅羅。
「あの……」
「ん、何?」
 チェルシーは申し訳なさそうに伝える。
「衣装の前が肌蹴てますわ……」
「えっ……きゃあっ!」
 叫んで座り込む。
「もうっ! 理沙のバカっ!」
 素に戻ってしまう雅羅だった。