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ジューンプライド

リアクション公開中!

ジューンプライド

リアクション

 リング上は時間経過と共に激しさを増していく。

 荒神が優梨子のハイキックを受け止めると、片腕を取りドラゴンスクリューで倒す。そして世界で最も複雑なジャベと言われるゴライアスバードイーターで優梨子を苦しめる。
 だがそんな荒神に吹雪が「リア充死ねやぁ!」と言わんばかりに【凶器用パイプ椅子】で滅多打ちにして、それでも飽き足らないように踏みつけるようなストンピングを繰り返してから頭に噛みつく。それと同時に優梨子も妖しい笑みを浮かべつつ噛みつきながら【吸精幻夜】で体力を削る。
 一方では陽太が貴仁を列車投げ『超銀河鉄道』で真上に高々と投げる。が、降りてきた貴仁はそのまま陽太の頭を捕まえてダイヤモンドカッターで顔面を叩きつける。
 必殺の一撃にダウンする陽太に貴仁は満足げに立ち上がるが、そこに「貴様は欲深い」と九条が一撃を食らわせ、コーナーへ叩きつけてからシャイニング二―リフトで膝を顔面に叩きつける。
 よろける貴仁の後を追う九条は、そのままブルドッギングヘッドロックで飛びつきリングへ叩きつけた。
 立ち上がった九条を待ち受けていたのは、佐那のクラッチからのジャーマンである。佐那はクラッチを解かず、三連続で九条をリングに叩きつけて漸くクラッチを解いた。
 しかし今度は佐那をエレーナが先程のお返しとばかりに持参したエレキギターで後ろから襲った。ギターが壊れるほどの一撃に顔面から倒れる佐那。
 そこに待ってました、とばかりに茶子が佐那の背中に飛び乗る。そのままキャメルクラッチへと移行しようとするが、「これ何?」と何故か佐那の背中にあるファスナーに興味を持ち、解いてしまった。
 そこから飛び出してきたのは、赤いコスチュームを身に纏った佐那であった。「オーバーボディを脱がすとは、悪い子だね」と「何今の!? 脱皮!? 脱皮なの!?」と目を爛々と輝かす茶子の腕を取り、飛びつくように十字固めを極める。
 一方、砕けたギターを見るエレーナの背後からルーシェリアが再度クラッチを極めジャーマンで放る。だが同じ手は食らわない、とエレーナは着地するとその勢いを殺さぬようにロープにもたれ掛り、反動を利用し飛び上がり足を振り上げる様なブローグキックをルーシェリアに放った。

 攻守、相手が目まぐるしく変わり、観客も追うのが精一杯だ。其々の選手も必殺の一撃を放つようになり、隙を見て金網を上ろうとするなど勝負を決めようとしている。
 しかしリング外のセコンド達も黙っているわけではない。上る選手相手に、カンナは金網をその自慢のバズソーキックで蹴って揺らし、綾がパチンコで狙撃し邪魔する事により中々頂上まで登る事が出来ない。
 その光景を、リング内であさにゃんが目まぐるしく動き回りながら撮影していた。
 何度か巻き込まれそうになりつつも、動き回りカメラを回している。
 段々と興奮して来たのか、(凄い、凄いよ!)と心の中で選手達の一挙一動に賞賛を贈っていた。

『金網に手をかける選手はいるものの、まだ誰も頂上まで上り切れない!』

 この膠着した状態に、動いたのは吹雪であった。
「そう何度もやられてたまるかよぉッ!」
 荒神がトラースキックで襲い掛かる吹雪をパイプ椅子ごと吹き飛ばした。座席が抜け、顔面に当たり吹き飛ばされる吹雪。
 だが転がりつつも吹雪はコーナーへと這い寄り、持ち込んだ凶器から大きな袋を取り出した。【自称小麦粉】入りの袋である。
 それを持ち、袋を破るとリング中央へと駆けだした。そして中身をばら撒く。
 中身の粉が金網の中に煙のように舞う。それを見ると、ニヤリと吹雪は笑みを浮かべた。

「リア充は爆発するもの――であります」

 そしてポケットからライターを取出し――着火。
 着火した火は近くの小麦の粒子に引火し、次々と隣の粒子へとそれが広がり、やがては巨大な炎へと変わりリングに広がった。
 炎が上がったのは一瞬。だがその一瞬で選手全員(+あさにゃん)を吹き飛ばすには十分な威力をその炎は持っていた。

『何と言う事でしょうか!? リング上で巨大な炎が一瞬立ち上りました!』
『粉塵爆発を狙ったと思われる。なんと恐ろしい……』
『リング上の選手全員が倒れたまま起き上がりません! スタッフが様子を見る為扉を開け――ん? 今リング下から誰か出てきましたね?』

 金網の扉をスタッフが開けた瞬間、リング下からテーブルと一緒に典韋とレイラが這い出し、スタッフを突き飛ばしリングへと滑り込むように上がった。
 そして一直線にエレーナへと駆けよる。ダメージが大きく立ち上がれないエレーナを無理矢理レイラが引き起こすと、典韋がフライングニールキックを放つ。
 倒れたエレーナを今度は典韋が引き起こし、レイラがクローズラインフロムヘル。一回転して倒れるエレーナを、二人がかりでリング下へと突き落した。
「ノジ! テーブルじゃ!」
 典韋がそう叫ぶと、レイラがテーブルを設置する。設置が終わると、レイラはエレーナを引き起こして抱える様に持ち上げ、テーブルに向かって倒れる。そのエレーナの顔面に飛びつく様に典韋がダイヤモンドカッターを放ち、合体技典ノジカッターが完成した。大きな音と共にテーブルが真っ二つに割れた。
 深いダメージを負いながら、エレーナは何とか立ち上がるも足元がふらついている。その時選手入場口からローザマリアが駆け出してきた。
 一直線にエレーナに向かってくると、
「トドメだ! 食らえぇッ!」
手に持っていた【凶器用チャンピオンベルト】でエレーナの顔面を殴打した。トドメとなり大の字になったエレーナを嘲笑うような表情でローザマリアが覗き込んだ。
「お前如きがベルトを手に入れられるわけがないだろう……好き勝手遊んでばかりいないで、結婚でもして落ちつくんだな!」
 そう言って笑うと、ローザマリアは引き上げようとする。が、
「好き勝手してるのはそっちでしょうが!」
翼がフライングニールキックをローザマリアに放った。突然の乱入者に、ローザマリアが倒れる。そして待ってましたとばかりに場内の警備員がローザマリアの両脇を抱える。
「……ノジ、あれ不味くないか?」
「ああ……私らは関係ないし、とっとと引き上げようか」
 警備員に連れられそうになるローザマリアを見て、典韋とレイラがこっそりと逃げようとする。
「関係ないわけがないだろーが」
が、そこに待ち受けていたのは泉空。二人の喉元を地獄突きで突き、動きを止めると典韋の頭を肩に、レイラの頭を脇に抱える。
「まとめて」
 そして飛び上がり、典韋にスタナー、レイラにDDTを同時に決めた。倒れ込む二人も、やはり待機していた警備員達が囲む。
「おい! このGMローザビショフにこんなことしていいと思っているのか!? ただで済むと思うな! クビだ! お前は、お前らはクビだ!
 ローザマリアが翼と泉空を指さし喚きたてるが、お構いなしに警備員達が典韋とレイラと一緒に裏側へと引き込んでいった。
 ダメージが深いエレーナはそのまま救急スタッフに担架で運ばれる。この試合は彼女は続行不可、リタイアである。
「……やれやれ」
 呆れた様に泉空が溜息を吐いた。
「さて、実況に戻りますか……あれ? 人形?」
 ふと、翼がリングを見ると扉からぼろ雑巾のようになった小さい人形が目に入った。
「あれは……ちびあさ!?」
 その人形、あさにゃんを目にした朝斗が、観客席からフェンスを乗り越え駆け寄る。
「にゃ……にゃー……」
 弱々しく鳴くあさにゃん。その手にあるビデオカメラを、差し出す。
「撮影……してたの?」
 朝斗の言葉に、あさにゃんが頷く。
「無茶なことして……あ」
 朝斗がビデオカメラを受け取るが、カメラはとてもいやーな音と煙を立てていた。流石に粉塵爆発の威力と熱には敵わなかったようである。
「……カメラ、壊れてる」
「……にゃ、にゃ……がく」
 朝斗の一言がトドメとなったのか、あさにゃんの身体からがっくりと力が抜ける。
「ち、ちびあさぁぁぁぁぁ!?」
 朝斗の叫びに、あさにゃんは反応しない。そこにいるの燃え尽きた抜け殻と化したあさにゃんであった。
 真っ白になったあさにゃんも、そのまま担架で運ばれていったのだった。

――リング上で粉塵爆発の際、中心部にいた吹雪が文字通り炎上しどえらい事になっているが、何故か彼女は担架で運ばれることは無かった。恐らくこのまま炭化するってやかましい。