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無人島物語

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無人島物語

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「……じゃあ、リナさんと静香さんは、ただの旅行仲間だったってだけなんですか?」
 事件解決したとも知らずに上杉 菊(うえすぎ・きく)は、桜井静香に聞き込みに行っていた。巡視艇の到着のタイミングが良過ぎる事も疑問視し、リナ・グレイと桜井静香の関係も併せて調査していたのだが、自分だけもうなんか空気読んでないような気がしてきていた。
「あの付近を巡視艇が“偶然”居合わせたのはね、もちろん何かあるんじゃないかって予想していたからだよ。やめてほしかったけどね。やっちゃった。それだけ」
「事件にしないんですか?」
「事件にしたいの?」
 静香は逆に菊に強く聞く。
「君は、あえて事件にしたいの?」
「で、でも、大変なことがあったんですから」
「大変なこと? なにそれ?」
「保険金詐欺とか?」
「その辺のくだりはローザマリアに聞いてよ。ぼくはね、彼女の選んだ結末をとても満足しているよ」
「は、はあ……」
 一体、自分はなんだったんだ……。菊はとぼとぼ帰っていった。
「ごめんね、シリウス。そういうわけだ。せっかく苦労して海中探索して拾ってきてもらったのに、それいらなくなっちゃったよ」
 百合園学園の校長室で、桜井静香はシリウス・バイナリスタに言う。
 あの後、シリウスもザビクも大変な努力をして、海の底に沈んだ『ダイパニック号』をできうる限り調査してきたのだ。長時間海底で粘り、拾えるものは拾ってきた。取れるデータは全て取った。かなりの成果だった。意気揚々として帰ってきたらこれだ。
「というかね、シリウス。海の底に何かあったっけ? 君たち何も見ていないよね?」
 静香の目は言っていた。テメェゴルァ、こっちは解決したんだから余計なこと喋るんじゃねぇ……、いやもちろん、静香はそんな言葉遣いはしないが。雰囲気的に。
「やれやれ……」
 シリウスとザビクは顔を見合わせながらも、静香の言葉に頷いた。
「ありがとう。僕は、とてもいい知人に恵まれているよ」
 窓の外を眺めながら、満足げに静香は言う。
 外はもう、晴れ上がっていた。