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第6章 盆に踊りて縁に親しむ4





「環菜……」
「あら、何か変だったかしら?」
「気にしなくても大丈夫ですわ環菜。
 どうせ陽太はいつも通り、あなたに見惚れてるだけですわ」
「なっ、エリシア!」
「図星ではなくて?」
「まぁ……そうなんだけど…」

照れる陽太の顔を見ながら環菜も笑みを浮かべる。

「≪頑張って髪を結ってみたりしたけど……効果はあったみたいね≫」
「おにーちゃん、早くお祭りいこー!」
「そうだね。 行きましょうか」





ノーンの呼びかけを合図に、祭りへと繰り出す陽太達。
陽太と環菜が手を繋ぎ、エリシアとノーンが手をつなぐ。
長き時間に裏打ちされた絆がそれを当たり前にさせていた。


「好きなものを買っていいですよ。 全部俺の奢りです」
「あら、なら喜んで食べますわ。 ノーン、何か食べたいものはありませんの?」
「う〜ん〜…ワタシ、綿あめがいい!」
「ならあっちの綿あめ屋さんで作りますわよ」
「環菜は何を食べたいですか? リンゴ飴とか美味しそうですよ」
「ありがとう。 でもあっちのレモン飴、お願いできる?」
「はい、いいですよ」


こうしてそれぞれ食べ物をゲットし、食べながら縁日を回る4人。


「環菜は甘い物とか苦手でしたっけ?」
「そんなことないわよ? ただ最近、なんだか酸っぱい物が食べたくて」
「そうですか」
「陽太! あれ、あれをやりますわ!」
「ん? ヨーヨー釣りか、いいですよ」


陽太から許可が出ると、エリシアは持っていたたこ焼きを陽太に預け、
ヨーヨー釣りに飛びついた。


「そぉ〜と、そぉ〜と。 ですわ〜……」


スルン。


「あう! ま、まぁ、何事も簡単に成功してはつまらないですものね」


スルルン。


「中々やりますわね〜」


スルルルン。


「このヨーヨー、許さないですわ〜!!!」
「おねーちゃんガンバれ〜!」





スルスルスルリラ、スルリララ〜♪





「なんで出来ないんですの!? このままにしておけませんわーーー!!!」


エリシアの大声も、さすがの祭りの喧騒にかき消される。

「エリシア、もうそのくらいに…って負けず嫌いでしたね、そういえば」





そこに声をかける人がいた。


「あれ、もしかしてエリシア……?」
「何ですの!!!!??……………ってあら、奇遇ですわね」


そこには、正臣とジョバンナ、エドゥアルトとナオの姿があった。
エリシアも急いで平静を装う。


「あー、ヨーヨー釣りですか? それって結構難しいですよね〜」


興味ありげにナオが言う。


「そうそう。 コツ掴めば結構いけるんだけど…おじさん、5回お願い」
「はいよ」


そういうと正臣は、ひょいひょいとヨーヨーを取っていく。


「な……何が起こってますのーーー!?」
「うん、だからコツだよコツ。 いい? こうして、引っかける時に……」


正臣がコツを伝授する。


「なるほど……やってみますわ。 ありがとうございますですわ」
「こないだのお礼だから、あんまり気にしないでくれると助かるよ」
「俺からもお礼を言わせてください」
「えっと……って御神楽環菜!?」


簡単に説明するエリシア。


「なるほど、あの御神楽環菜の夫がエリシアのパートナーだったのか…。
 えっとエリシアにこの前助けてもらいまして」
「ああ、そんなに固くならないでください。 こっちも今助けてもらいましたからお互い様ですよ」
「千返ナオ、ジョバンナ・アルベルト。 2人とも元気そうで何よりですわ」
「俺もまだお礼言ってなかったですね、ありがとうございました」
「私、も。 ありがとう……」
「さ、正臣そろそろいいかな?」
「あっ、はい! じゃあエリシア、頑張って」


エドゥアルトに促され、正臣達は先を急いだ。





               ◇ ◇ ◇





続いて陽太達がやって来たのは射的ができる屋台だ。


ノーンはさきほどくじ引きで引き当てた1等の特製薔薇クッションを抱きしめながら、
エリシアとお揃いの柄のヨーヨーを握りしめ喜んでいた。


エリシアも目的のヨーヨー釣りがうまくいったようでご満悦だ。


「じゃあ俺は射的でもやりますね。 環菜、見てて下さいね」


愛する妻にいいところを見せようと意気込む陽太。


「そうね……陽太。 あのクマの人形がいい」
「分かりましたっ!」


その横ではナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)が、
グィネヴィア・フェリシカ(ぐぃねう゛ぃあ・ふぇりしか)に銃の構え方を教えていた。


「大体こんな感じだ。 どうだいグィネヴィアのお嬢さん、なんとなくでも分かったか?」
「分かりましたわ。 言われた通りやってみますわ」


そしてグィネヴィアの放った弾はクマの人形をかすめた。


「おっとっと、まだ銃身がフラフラしてるな。
 グィネヴィアのお嬢さん、もう少し脇を閉じるんだ。 それで……」


片目を閉じゆっくりと狙いを合わせる。


「…………よし」