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リアクション
最後の切り札さえ失い、ファット・ガールは苛立っていた。
「さっきからなんだよもー。そこの金髪女も、あっちの青髪男も、ちょろちょろしちゃってさー!」
このままではマズいかもしれない。ソークー1は警戒心を高めた。このまま取り乱して、自爆でもされたら大変だ。
(解除法はまだなのか……)
ソーク―1は、契約者たちからの連絡を待った。
――しかし。
彼のもとに届いたのは、核ランジェリーの解除法ではなく、教導団による以下の通信であった。
『リトル・ウーマンへの妨害電波が途絶えた』
「まだ……可能性は残っている!」
ソーク―1はファット・ガールに向きなおると、【神速】で間合いを詰めた。
彼女の心臓めがけ、ソーク―1は【閻魔の掌】を打ち込んだ!
「か……はっ……」
ファット・ガールは崩れ落ち、仰向けのまま気を失った。心臓を一時的に止めることで、核ランジェリーの活動も停止させる作戦だった。
戻ってきたダリルが、ファット・ガールを調べながら言う。
「たしかに核ランジェリーの活動は止まっている。だが、すぐに再開するだろう」
「今のうちに取り外すことはできないだろうか?」
というソーク―1に、ダリルは小さく首を振る。
「駄目だ。たとえ死体であっても、無理に外せば爆発する仕掛けだ」
しばらく沈黙が訪れた。
やはりこのまま葬るしかないのだろうか――。
ファット・ガールの豊満な胸が、わずかに起伏をはじめた。彼女の心臓が再び動き出そうとする、まさにその時。
「解除法がわかったよ!」
HCを通して、騎沙良詩穂から連絡が入った。
柊恭也による徹底した尋問の末、ようやく構成員が口を割ったのである。
「核ランジェリーを解除するには――洗脳を解いて、名前を思い出させるんだって!」
「名前?」
「うん! ファット・ガールの本名が、解除のパスワードなんだよ!」
「でも……この娘の本名って、なんだ?」
解除法がわかったのはいい。しかしながら、肝心の名前がわからなかった。
構成員も、本名までは知らないという。
「思い出させるしかないな――。こいつを使って」
ダリルが『真実の鏡』を取り出しながら言う。
このアイテムは、心に秘めた真実をも映しだす効果がある。
ファット・ガールが再生を求めているのなら、彼女の本名が映し出されるはずだ。
だが――。
「この娘が破壊を望んでいれば、ここに映るのは崩壊した未来だろう」
「大丈夫だ! 我が、保証する」
ソーク―1がはっきりと告げた。
彼はファット・ガールを説得していて、感じたことがある。ファット・ガールが本当に望んでいたのは、破壊などではないと。
ダリルは小さくうなずきを返すと、真実の鏡をファット・ガールに向けた。
目覚めた彼女がすぐに名前を思い出せば、核ランジェリーの爆発は、ギリギリで止められる。
ファット・ガールのまぶたが、ゆっくりと開かれた。
差し出された鏡面を見つめて。
彼女は、こわごわとした口調で、こう告げた。
「……あたしの名前は……花澤……愛音羽(あねは)、だよ」
ファット・ガールの洗脳は解かれた。
さらに――。
『ハナザワアネハ』
その言葉がパスワードとなり、核ランジェリーの機能は、すべて解除された。
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