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夏合宿、ざくざく

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夏合宿、ざくざく

リアクション

    ★    ★    ★

「なんだったのじゃ、今の身の毛もよだつ不気味な叫び声は……。まさか、あれが噂の幽霊だというのか……」
 67番区画で立ち止まったルシェイメア・フローズンが、ブルンと身体を震わせました。
「とりあえずは、触らぬ神に祟りなしじゃな」
 直接被害がない限りは放置しておいて、ルシェイメア・フローズンは周囲を調べました。
 岩壁のくぼみのところに、ひっそりと宝箱が隠してあります。
「この程度のカモフラージュで、わしの目を欺こうなどとは、1000年早いのう。どれどれ……」
 持ちあげてみると、かなりの重さがあります。
「これは、中身は金塊か!?」
 これで貧乏ともおさらばだと、ルシェイメア・フローズンが息せき切って箱を開けました。
 中に入っていたのは、水です。その中で、でっかい『錦鯉』が泳いでいました。蓋の裏側には、鯉の餌が貼りつけてあります。
「これは、食べるべきか、いやいや、売れば高値がつくかも……」
 餌の袋をポイと捨てると、再び蓋をきっちりと閉めます。とにかく、話は、この宝箱を無事持ち帰って、アキラ・セイルーンに見せびらかせてからです。ルシェイメア・フローズンは宝箱をなんとか持ちあげると、それを粘体のフラワシに載せて運び始めました。

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「ここが、壊れたっていう祠か。台座は残っているが、他はなんも残っちゃいねえな」
 洞窟の最深部である69番区画までやってきた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が、幽霊が封印されていたのではないかと噂される祠のあった場所を見て言いました。
 祠自体は、去年の夏合宿で行われた肝試しで壊されてしまいました。現在は、きちんと片づけられて、祠があったという痕跡は、石の台座しか残っていません。木製の祠は、全て撤去されていました。
「これじゃあ、御神体に何が使われていたのかも分からない……。おや?」
 LEDランタンをかざして台座をよく見ると、何か小さな宝箱が載っています。
「まあ、隠す気もないお宝だなあ。まさか、中に御神体が入っているんじゃないだろうな」
 ちょっと慎重に、柊恭也が宝箱を開けました。
 中に入っていたのは、いくつかの小さな木片です。一緒に入っていたメモには、『壊れた祠の破片』とあり、一度だけ退魔・封魔の力がこもっていると書かれていました。
「ゴミ……とまでは言わないが、まあ、幽霊とやらに遭遇したら役にたつかもしれねえな」
 さすがに全部持っていく気にもなれず、柊恭也は一つだけ木片を取り出してポケットにねじ込みました。

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「絶対に、高いお宝を見つけて、クレカを使えるようにしてもらうんだ」
 完全に血走った目で、狂ったようにキャンプ場近くの84番区画の地面を掘っているのはアキラ・セイルーンです。なにしろ、今後の趣味と生活がかかっていますから必死です。
「俺のトレジャーセンスが、ここを掘れと叫んでいるぅ!! うおおおおおお……。出たあ!!
 その勢いに負けてか、地面の下からコロンと宝箱が出ました。期待に胸震わせて開けると、中から出て来たのは『イコプラ・アートゥラ・フィーニクス』でした。帝国の反乱軍が使用していた指揮官用のフィーニクスで、漆黒の機体に金の縁取りラインが入ったデザインです。背部に大型のブースターパックを二つ搭載しています。
「これって、イコプラとしてはレアだよな、レア。ああ、いい響きだなあ、レア……。よし、レアならば、ルシェイメアも文句ないはずだ。クレカ返してくれー!!」
 勝手に納得すると、アキラ・セイルーンはイコプラをかかえて駆け出していきました。

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「まあ、こういう物は、意外と近くにいい物があるものであります」
 キャンプ場から森の近くへと行った89番区画をのんびりとスコップで掘りながら、大洞剛太郎が言いました。
 過度な期待はしていませんから、楽しく穴掘りというところです。教導団の訓練で行われるいつもの塹壕掘りに比べれば、この程度はへでもありません。むしろ楽しいくらいです。
 他の人のそんな楽しみの足しにでもなればと、自分としてはちょっとしたお宝をソフィア・クレメントに頼んだわけですが、はたして、誰かが見つけてくれたでしょうか。
「それにしても、あの巫女さんたちは可愛かったでありますな」
 テンコ・タレイアのたっゆんを思い出して地面を掘っていると、コツンとスコップの先が何かに当たりました。どうやら、宝箱が出て来たようです。
「さて、何が入っているのかであります」
 ちょっぴり期待しつつ蓋を開けると、中から出て来たのは『パンツーハット黒』でした。
「ふむ、なかなかのパンツーハットであります」
 さすがは、すでにP級四天王パンツしきたり番長である大洞剛太郎、この程度では同様すらしません。両手の指先で、びよ〜んと黒い大人パンツを横に広げる姿はりっぱな変態……いえ、P級四天王でした。

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「吹雪といい、イングラハムといい、まったく懲りないんだから。今ごろ、いったい誰が犠牲になっているのやら」
 なむなむと犠牲者の冥福を祈りながら、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が91番区画の森の中へと入っていきました。
 自分は、誰かの仕掛けた罠なんかに引っ掛かるものですかと、ちょっとびくびくしながらも、木のうろとか、根元の地面とかを調べていきます。
 拾った木の枝でツンツンと木のうろを突いて安全を確かめてから中をのぞき込むと、小さな宝箱がありました。
「なんだか、ずいぶんと可愛らしい宝箱ね……。はっ、規格外と言うことは、誰かのトラップが仕掛けられている可能性が……」
 ひびりすぎですが、普段のパートナーたちがパートナーたちなので仕方ありません。
 自分は安全なところまで下がると、ポムクルさんを犠牲にして箱を開けるように頼みました。
 なんの疑問もいだかずに、小さなポムクルさんが、地面におかれた宝箱を開けます。はたして、爆発するというようなこともなく、箱が開きました。
 ポムクルさんが、中に入っていた一枚の紙を持ってきてくれます。そこには、『宿り樹に果実・ケーキ食べ放題券』と書かれていました。
「こ、これはあ! 絶対に、吹雪たちに知られてはいけないわ。いい、絶対に内緒よ」
 そう言って、コルセア・レキシントンはポムクルさんに念を押しました

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「今ごろ、ちゃんと16番を探しているかなあ」
 ちょっと心配しながら、セレアナ・ミアキスが森の94番区画を歩いていました。
 もちろん、心配したとおりに、セレンフィリティ・シャーレットは、セレアナ・ミアキスの話なんか聞いちゃいなかったわけですが。
 ずっと念を送ってはいるのですが、今はテレパシーが使えるわけではないので、無駄な努力となっていました。もしろ、使えたとしても、セレンフィリティ・シャーレットがテレパシーの忠告すら気がつかないほどテンパっていたわけですか。
 とりあえず、自分の分はちゃんと探さなくてはと茂みなどを探していると、木の枝の上に宝箱を発見することができました。
 開けてみると、中から『ミッドナイトシャンバラ出演券』が出て来ました。
「ラジオの出演券!? いったいどうしろと……」
 使い道に困って、セレアナ・ミアキスがうーんと考え込みました。