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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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宿り樹に果実



「すいませーん。頼んであった物は……」
「はい、こちらのお弁当セットですね。御用意してあります。でも、こんなにたくさん大丈夫ですか?」
 イルミンスール魔法学校内の喫茶店、『宿り樹に果実』にやってきた風森 巽(かぜもり・たつみ)に、ミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)が予約注文を受けていたお弁当セットを手渡しました。
 それにしても、膨大な量です。ざっと見て、八人前以上はあるでしょうか。
「大丈夫です。ヒーローに運べないお弁当などという物は、この世にはありません。それでは……とうっ!!
 そう答えると、風森巽はその大量のお弁当を担いで大図書室へとむかいました。ゴチメイたちが遭難したというのは昨日のことです。きっと今ごろはお腹を空かせていることでしょう。
 以前の合コンでカップルになったとは言え、まだまだ風森巽はココ・カンパーニュの手下一号段階ですので、ここは地道に餌付けからということでしょうか。
「お弁当のデリバリー……。そんな手もあったのね」
 隅の方の席でその様子を見ていたシェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)が、ポンと手を叩きました。
「お姉ちゃん、偵察に来たんだから、目立っちゃダメだよ」
 カウンターの中にいるミリア・フォレストを気にしながら、パフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)がシェリエ・ディオニウスに小声でささやきました。
「大丈夫ですわ。多分もうばれていますから」
 そう言って、トレーネ・ディオニウス(とれーね・でぃおにうす)が苦笑します。
 ザンスカールで喫茶店を営むディオニウス三姉妹ですが、今日はライバル店でもある宿り樹に果実を偵察に来ているようでした。


禁書保管庫



 禁書保管庫は、大図書室の奥まった一画にあります。
 そこに収められている物は、いわくのある本や禁書ばかりです。魔道書も、最初の一冊はここで発見された物でした。
 本来、入室には許可証が必要ですが、今日はちょっとした異変のために頻繁に人が出入りしています。
 鍵のかかる扉のむこうには、やはり本棚がびっしりとならんでいました。とはいえ、メインフロアのように見あげるほどの巨大な書架ではなく、小さな踏み台に乗れば軽く最上段にも手が届くほどの大きさです。また、本とは言っても、紙以外にも石板なども収蔵されているのが特徴です。
 室内には、雪の結晶のような使い魔がふわふわと宙を漂っていました。もしものときのための消火精霊たちです。メインフロアなどにもいるのですが、ここはより多くが配置されていて目立っています。
 そんな禁書保管庫の一番奥の壁に、その異変は現れていました。
 人の背丈よりも大きな本が、突如として壁に貼りつくようにして現れたのです。しかもそれは開かれていて、ページに描かれた魔方陣が怪しく光り輝いていました。
「目撃証言からすると、遭難者たちは、好奇心からこの魔方陣のゲートをくぐり、中で消息を絶ったらしい」
 怪しげな本を前にして、天城紗理華が捜索隊一同に説明しました。
「たちって、そんなにたくさんいるんですか?」
 やれやれと、大神御嶽が溜め息をつきました。なんでも、ゴチメイ隊の他にも、すでに何人か捜索依頼が出されているようです。
「くれぐれも、二次遭難はしないように。それでは、出発!」
 そう言うと、天城紗理華は風紀委員たちを率いて真っ先に魔方陣をくぐりました。まるでホログラフのように、魔方陣の描かれているページを次々と人が通り抜けていきます。文字通り、このページはゲートになっているようでした。だとすれば、そのむこうにあるのは本の世界なのでしょうか。それとも……。
「それじゃあ、メイちゃんたちは、ここで待っていてください」
「やだ、一緒に行く」
「わーい、一緒一緒」
「わーい!」
「あっ、ちょっと、これ……」
 大神御嶽が止める間もなく、メイちゃんたちは魔方陣の中に飛び込んで行ってしまいました。
「追いますよ、キネコ」
「しょうがないですらねー」
 はぐれてしまっては大変と、大神御嶽とキネコ・マネーも魔方陣の中に飛び込んでいきました。
「俺たちも行くぞ」
 ティー・ティー、イコナ・ユア・クックブック、スープ・ストーンをうながすと、源鉄心も魔方陣の中へと飛び込んでいきました。

    ★    ★    ★

「この中に入っていって迷子になってるの?」
 続いて禁書保管庫に入ってきた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、本のゲートを前にして言いました。またゴチメイたちが遭難したという噂は昨夜から話題になっていましたから、急いで捜索に参加しに来たのです。
「以前の深層の探索ではモンスターが襲ってきたから、気をつけてね」
「大丈夫。いざというときは、僕が美羽を守るよ。それじゃあ、行こう!」
 何やら風呂敷づつみを背負ったローゼンクライネを連れたコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、先に魔方陣をくぐっていきました。

    ★    ★    ★

「聞き込みを総合すると、遭難者はここに現れた本のゲートをくぐって、その先で遭難したらしいということです」
 キーマ・プレシャスが、エリシア・ボックたちを禁書保管庫に案内して言いました。
「さすがは、ガイドさんですわ。それでは、わたくしたちは、救助隊を結成してこの先の秘境に挑みますわよ。みなさん、心の準備はよろしいですわね」
 勢揃いした捜索隊の面々を前にして、エリシア・ボックが言いました。
「みんな、準備オッケーだよ」
 頭の上にももいろわたげうさぎを乗せた軍用犬と、エリザベートシスターズを連れたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が、お供たちと共に気勢をあげました。
「マッピングの準備もオッケーです」
 籠手型ハンドヘルドコンピュータを再チェックしてから、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が答えました。
さあ、行きますわよ!
 隊長のエリシア・ボックの号令一下、一同は魔方陣の中へと入っていきました。