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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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    ★    ★    ★

「ふう、やっと迷路みたいな所を抜けたか。それにしてもここはどこなんだ?」
 野原のような場所に出て、アキラ・セイルーンがほっと一息つきました。
「めもめもっと……。まっぴんぐは楽になったケド、ずいぶんと広いとこに出てしまったネ」
 アキラ・セイルーンの頭の上に広げたマップにいろいろと書き込みながら、アリス・ドロワーズが言いました。
「まあ、何もないようなら、ここでひとまず休憩するかあ
 言うなり、アキラ・セイルーンが芝生の上にでーんと大の字にひっくり返りました。
「きゃっ!」
 おかげで、勢いよくアリス・ドロワーズが放り出されましたが、柔らかい芝生で怪我はしませんでした。
「それにしても、いきなりお外のような場所に出ましたが、相変わらず図書室の中はでたらめですねえ」
 記録写真を撮りながら、ヨン・ナイフィードが言いました。以前、他の場所の探検をしたときも、大図書室の中はでたらめな空間になっていて、あまつさえ襲ってくるモンスターまでいて苦労したのでした。
「ひとまず、今回は、敵は襲っては来ないようじゃな……」
 周囲を警戒しながら、ルシェイメア・フローズンが言ったときでした。
「ふははははははは!! 甘い、甘すぎるぞ!」
 突然の高笑いが響き渡り、ルシェイメア・フローズンが身構えました。
「何か、変なのキター!」
 近づいてくる殺気を感じて、アリス・ドロワーズが叫びました。
 けれども、アキラ・セイルーンはひっくり返って寝たままです。
「この場所は我ら秘密結社オリュンポスが占領した。よって、ここのマップ作成権も我らの物だ。部外者はさっさと立ち退け!」
 突然現れたドクター・ハデスが、アキラ・セイルーンたちにむかって言いました。
「嫌だと言ったら?」
 不敵にルシェイメア・フローズンが言い返します。
「排除するまでだ。いでよ、宇宙最強怪人デスストーカーよ!」
 負けじと、ドクター・ハデスが言い返しました。その言葉に従って、怪人デスストーカーが現れます。
「きゃー、襲撃です。真面目に日銭を稼ぐ私たちの前に、謎の蠍怪人が現れました。これから、どうなってしまうのでしょうか!?」
 パシャパシャとシャッターを切ってフラッシュを焚きながら、ヨン・ナイフィードが携帯のボイスレコーダー機能を使って、実況録音を始めました。
「了解したDEATH、ハデス師匠。これより、敵を殲滅するDEATH!」
 そう言うと、怪人デスストーカーが奇怪な鳴き声をあげてルシェイメア・フローズンに迫りました。
「滅殺じゃな……」
 ごごごごっと、ルシェイメア・フローズンが黄金の闘気を身に纏いました
「えっ、ちょっと……」
 敵とのレベル差に、怪人デスストーカーが怯みます。ちなみに、怪人デスストーカーはセイバー・レベル1です。
「ていっ!」
 ちょんっと、ルシェイメア・フローズンがドラゴンダイブを放ちました。黄金の竜と化した闘気が、怪人デスストーカーに襲いかかります。
「うわあああDEATH……!」
 あっけなく、怪人デスストーカーが遥か遠くへと吹っ飛ばされていきました。謎空間の空に、綺麗な花火が上がります。
「風流じゃのう」
 ルシェイメア・フローズンが、まったりと花火を見あげました
「お、覚えていろー!」
 いつの間にか遥か遠くまで避難していたドクター・ハデスが、捨て台詞と共に姿を消しました。

    ★    ★    ★

「ダメですね、オートマッピングは機能していないようです」
 非不未予異無亡病近遠が、携帯の画面を見て溜め息をつきました。魔方陣をくぐって最初に辿り着いた部屋を基点として、移動距離から現在位置とマッピングを行おうとしたのですが、どうもうまくいかないようです。
 さっきまであった扉などが、振り返るとすでに遠く離れていたり、なくなっていたり。何度かのぞくと、何もない所に道が現れたりと、空間自体がかなりでたらめです。
「やはり、こんな空間の地図を作る意味はあるのでしょうか」
 懐疑的に、非不未予異無亡病近遠が言いました。
 イグナ・スプリントとしても、実力を発揮できるほどの敵が現れないので、なんだかちょっと拍子抜けしています。
「空間的には、不安定というわけではないようでございすね」
 野原の地面を確かめながら、アルティア・シールアムが言いました。
「どちらにしても、帰る算段をしないといけませんね。ここも世界樹の中のはずですから、ここは大ババ様の力を借りるとしますか」
 そう言うと、非不未予異無亡病近遠が携帯でどこかへ電話をかけました。本来なら携帯がつながるか怪しいところですが、パートナー間ならなんとかなるようです。
『はい、ユーリカですわ』
 電話のむこうから、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)の声が聞こえてきます。
『事前に話していたとおり、大ババ様にお話をしてください』
「分かりましたわ。お任せください」
 そう答えると、ユーリカ・アスゲージは校長室にむかいました。事前の情報では、大ババ様は今校長室にいるはずです。
「失礼いたします。大ババ様はいらっしゃいますか?」
 ドアをノックして、ユーリカ・アスゲージが訊ねました。
「こばー」
 ややあって、ドアが開かれて小ババ様がちょこんと顔をのぞかせます。
「いえ、小ババ様ではなくて、大ババ様の方……」
「なんの用じゃ?」
 ユーリカ・アスゲージが困っていると、校長室の奥の方からアーデルハイト・ワルプルギスの声が聞こえました。
「今行われている、大図書室の探索のことでお願いがあるのですが……」
 中に通されたユーリカ・アスゲージが、大ババ様に非不未予異無亡病近遠の考えを伝えました。
 いくら迷路のような大図書室の深層でも、一応世界樹の中なのですから、要所要所に大ババ様のテレポーターを設けてもらえれば、安心して帰ることができるというものです。
「なんでそんなことをしなくてはならぬ。自力で帰ってこられぬ者など、そのまま遭難させておけばいいではないか」
 あくまでも実力重視と、アーデルハイト・ワルプルギスが非不未予異無亡病近遠の提案を一蹴しました。
「それに、今生徒たちが迷い込んだ空間は、あ奴の封土だからの。まあ、放っておいても大したことにはなるまい。もっとも、ちゃんと満足させられればの話じゃがな」
「それって……」
 どういうことなのですかと、ユーリカ・アスゲージが聞き返します。
「ちゃんと帰ってきたかったら、大司書パーラに会ってこいということじゃ」
 アーデルハイト・ワルプルギスは、そう答えました。