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【創世の絆】光へ続く点と線

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【創世の絆】光へ続く点と線

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海岸線の攻防1

 ところ変わってこちらは海上に展開する部隊である。ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)の乗艦するHMS・テメレーアを旗艦として大部隊が展開する。同じ部隊の機動要塞やイコンと連携しながら海岸線への砲火が絶えぬような工夫を続けていた。
「テメレーア、第一射――ファイア! 次弾装填急げ。着弾データならびに敵の撃破状況を僚艦に送信!」
ローザマリアの澄んだ声がてきぱきと指示を伝えた。
「最前線のナイトを砲撃。荷電粒子砲発射準備!」
ローザマリアは自艦の艦砲射撃の指揮のほか、全艦隊の交戦データの収集と中継役を担当する。テレメーアは今回従来の機械系レーダーセンサーによる測距と併せて魔道レーダーでも測距を行い、より正確な複合レーダー射撃を出来るよう工夫していた。さらにホークアイ、行動予測、エイミング、スナイプといったスキルすべてを駆使し、標的を狙うことでより正確な射撃を行おうというわけだ。
艦長のネルソンはローザマリアからの詳細なデータや味方機の状況を判断し、部隊のイコンに短い指示を与え、各種センサー、レーダーで空からの敵や、水中を接近してくるものがいないか全神経を研ぎ澄ます。
魔鎧であるリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)をパイロットスーツ代わりに装備した柊 真司(ひいらぎ・しんじ)ゴスホークでテレメーアの前方高高度を飛行しながら海岸線の敵の様子をつぶさに観察していた。今回のゴスホークの任務は威力偵察である。同様の任務を帯びたイコンの部隊も海岸線を網羅する形で展開している。
「遺跡の護衛部隊からの情報のように、射撃タイプと白兵タイプが混在しているな。まずは手の内を暴かせて貰おうか」
そこに遠野 歌菜(とおの・かな)のイコンから通信が入る。
「攻撃するのだったら、支援するよ」
「ありがとうございます。少数機での威力偵察ですし、そちらも十分気をつけてくださいね」
ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が丁寧に返す。月崎 羽純(つきざき・はすみ)が力強く言った。
「こちらは援護射撃を行う。場合に応じて歌菜が歌でのサポートもできる」
歌菜のイコンが滑るようにゴスホークの上空を飛行する、ゴスホークは左腕にビームシールドを展開し、G.C.Sによる空間歪曲場を使用して慎重に海岸線のインテグラルに向かって接近、プラズマライフル内蔵型ブレードから光弾を打ち出して攻撃を仕掛ける。白兵戦タイプが機体を発見し後退すると、代わって砲撃タイプのものが前進し、砲身型に変形した両腕を差し上げ、ゴスホークに狙いをつけると光弾を発射する。それを行動予測を使い最小限の動きで素早く避けながらデータを取る。
「相手方のパターン解析を開始します」
ヴェルリアがモニターを見つめながら忙しく手を動かすと、攻撃を当たりにくくするためのミラージュを展開した。同時に増設スモークディスチャージャーで座標を悟られないようにしながら歌菜のイコンがゴスホーク後方に移動し即座に攻撃精度を高める勇気の歌、鼓舞の歌を使う。歌菜の澄んだ歌声が響き、メンバーの能力の底上げを図る。
「自分たちが落とされては本末転倒だが……援護射撃といっても、別に倒してしまっても構わんのだろう?
 好機があれば、ダメージ上昇を付加し、一気に敵を倒そう。時には肉を切らせて骨を断つ事も必要だ」
もともと彼らの機体は近接戦向きにチューンされている。機会があればと考えるのも当然のことだろう。羽純が機体の操縦と各種モニターやセンサーの様子をチェックしながら、歌菜に向かって言った。
「この子は魔法系の攻撃に対し高い耐性があるし、多少の攻撃なら耐えられる筈……!
 仲間は勿論ですが、指揮しているジェイダス様の事も絶対守らなきゃ!
 羽純くんも一緒に頑張ろう!」
 ああ。もちろんだ。そういうわけで悪いが……お前も俺と歌菜に付き合ってくれ。終わったら、きっちり整備してやる」
羽純がそう言って軽くイコンのメインディスプレイに手を触れた。白兵戦に近い作戦行動ゆえ、イコンとのシンクロ率は常に80%を維持している。これならとっさの行動も自分の体に近い感覚で発揮できるはずだ。ゴスホークに砲火が集中し始めるのを見て、羽純がマジックカノンでの砲撃を開始する。ゴスホークが多少敵にスキができたと見てポイントシフトを発動した。瞬間移動で一気に間合いを詰めて接近戦を仕掛けようという腹だ。砲撃タイプのナイトがイコンの接近を見て素早く後退し、近接タイプのものが一気に前に躍り出てきた。周辺にいたナイトが一斉に集結してきてイコンを取り囲もうとする。ヴェルリアがすぐさまショックウェーブを発動させる。
「なーんか妙に統制がいいわねー。今までのインテグラルとかイレイザーは見境ナシに襲ってきたのに」
真司の胸の辺りからリーラが呟く。今回同行しているとはいえ、装備されているだけ、しかもイコン戦なのであまり出番がない。リーラは最もゆっくり周囲のものを観察できる立場にある。
「固まってきたな」
真司がレーダーに映る敵影を見つめて呟いた。
「遠距離型も後方に集結しています」
ヴェルリアが言い、そのことをテレメーアと歌菜機に伝える。
「逆に言えば、チャンスだってことだ。切り札を使うときだろうな」
真司がオープンチャネルのまま言ってにやっと笑った。羽純の声が笑いを含んで通信機から流れ出た。
「一体でも多く、ってことだな。こちらにはヴィサルガ・プラヴァナハなんてものがある」
会話している間にも敵はどんどん間合いを詰めてきている。回避行動をとり、あるいはシールドで敵の攻撃を受け流しながら、まとまってきた敵を見て、リーラが言った。
「頃合、かな?」
「覚醒ッ!!」
真司が叫び、機体が淡い輝きに包まれた。同時に歌菜のイコンも戦慄の歌声を合図にヴィサルガ・プラヴァナハを作動させる。凄まじいパワーを得た暁と宵の双槍が、遠距離タイプのインテグラル・ナイトの群れをなぎ払う。
「ジェイダス様は、身体を張ってでも守る!」
歌菜が叫ぶ。一方のゴスホークはG.C.S、グラビティコントロールを最大出力で周囲にいるナイトの群れに向けて放った。凄まじい重力の変化が、周囲の景色さえゆがませる。さすがのインテグラル・ナイトも覚醒状態での攻撃にはタマゴのようにつぶれてゆく。周囲の地面も深くくぼみ、そこへとナイトがなだれ落ちてゆく。
「そろそろ限界だと思うよー」
リーラが2機のイコンに呼びかけた。ヴェルリアがレーザービットを乱射し撹乱しながら後退のためのスキを作る。データを手に、2機のイコンはテレメーアへと向かった。