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第28章 想いを伝えたくなって

「この吸引ポンプっていうのどうかな?」
「形崩れが気になるでござる」
 ちっちゃい胸クラブの会員のミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は、副会長の真田 佐保(さなだ・さほ)を誘って、空京にデートというか、買い物というか、豊胸グッツ探し!に来ていた。
「皮膚だけ伸びて、中身がなかったら……お婆ちゃんのようになっちゃうよね」
「豊胸クリームというものもあるでござるよ!」
「おおっ、こっちのマッサージ器具と一緒に使うと効果倍増!?」
 バレンタインフェスティバルで賑わう中、少女達は必死だった。
 彼女達だけではなく、バレンタインに向けて胸を水増ししたい女の子もいるようで、百貨店の豊胸グッツ売り場は結構混雑していた。……さすがに、ここに男性の姿はない。
「でもやっぱり、内側から大きくするには、食べ物は大事だよね」
「そうでござる。結局は脂肪でござるからな……」
「脂肪を沢山とっても、胸に行くとは限らないんだよね」
「まず脂肪は腹につくものでござるからな」
 はあ……とため息をついて、2人は少し休憩にすることにした。

 向かった先は、アイスクリームショップ。
 少しでも乳製品を取ろうかという話になって。
 ミーナも佐保もシンプルなソフトクリームを注文して、奥の席で一緒に食べることにした。
「腹を壊しては元も子もない。ゆっくり食べるでござるよー」
「うん、冷たい〜。美味しいっ」
 佐保とミーナは幸せそうな笑みを浮かべながら、美味しいアイスクリームを堪能していく。
 彼女達の隣の席にはカップルの姿があったけれど。
 彼女達がアイスを食べ終わるより早く、飲食を終えてフードコートから出て行った。
 フードコートの奥には、ミーナと佐保の2人きり。
 食事の時間でもないため、空いていて、近づいてくる人もいない。
 ミーナは佐保より少し早く食べ終えて、それから佐保をじっと眺めていた。
「ん? どうかしたでござるか」
 視線に気づいた佐保が尋ねてくる。
 ミーナはごくりと唾をのみこんで意を決して口を開いた。
「真田先輩に大事な話があります。聞いてください」
「なんでござるか?」
「この間は冗談ってごまかしたけど、やっぱりちゃんと伝えたいです」
 ミーナは息を吸い込んで、お腹に力を込めて、想いを佐保に伝える。
「ミーナは真田先輩が好きです! 大好きです!! 友達とかそういうので好きじゃなくて恋愛対象として好きなんです。ミーナの恋人になってください!」
 その告白はストレートで、ミーナの想いは佐保に真っ直ぐ、正しく伝わった。
 佐保はミーナの真剣な想いに、真剣な目で答える。
「好意は嬉しいでござるが、まずはお互いを知るところから始めたいと思うでござる。……まだ、互いのことをさほど知らないでござるからな」
 それから、佐保は淡い笑みを浮かべた。
「友達として、今日のように一緒に過ごしてみたいでござるよ」
「……わかりました。よろしくお願いします!」
 ミーナは勢いよく頭を下げた。
 それから、2人は意気投合し、夜遅くまで豊胸グッツ探しに勤しんだという。