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リアクション
草木は枯れ、砂に埋もれた平原地帯。普段ならば人気など皆無に等しい地であるが、この度は違う。地平の先より進軍を続けたネルガル、マルドゥークの両軍が遂に互いを視界の先に捉えるまでに接近していた。
とは言っても片やネルガルは空の上、兵士たちは未だに吊された箱の中にいた。
ネルガルは敵数と陣型を把握した上で箱を降下させ兵を展開するつもりだったようだが、敵の仕掛けの方が早かった。
『吊浮箱』を吊るし飛ぶ『ワイバーン』の遙か上空から、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)のタッグが一気に降下した。
軍列の先頭は2つの『吊浮箱』、ここを止めれば後ろも止まる。一つの箱には100名近い兵、そしてその箱を10体もの飛竜が吊し群れている。
左方の箱、狙いは飛竜。
ソアとソラ、2人が乗る『空飛ぶ箒ファルケ』と『空飛ぶ箒スパロウ』がピタリと並んで降下してゆく。
直線に、直滑降に。
衝突する、そう見えたことだろう。しかし、
「ソラっ!!」
「うっ、うぅー」
ソラは箒に跨ったままにソアの腰に抱きついて腕を回し、そこから一気に走路を変える。
目指すは「直角90°」
「うぅぅぅぅあー」
極力ブレーキをかけないままに、という無茶な策だったが、どうにかソラは飛竜への衝突を避けた。あとは、
「ここですっ!!」
ソアにしても刹那の勝負だった。箒先が僅かに変わった瞬間に飛竜めがめて『ブリザード』を放った。
呼び出された氷の嵐が6体もの『ワイバーン』の背と翼に直撃した。飛竜の悲鳴に兵士たちが上空を見上げたが、その時には当然2人の姿はない。
「やったね、ソラっ」
「もう一度いくわよ」
「えっ? そんなすぐにっ? きゃっ!!」
ソアに抱きついたままにソラは一気に空を駆け昇った。休む間なんて与えない。
「全員叩き落として砂に埋めてやるんだから。覚悟なさい!!」
戦場となるこの広大な土地も全てが砂に埋まっている。草花、水と生物。自然と庭園を愛するソラの怒りは一つも揺れずにネルガル軍へと向けられていた。
「そんなに上ばっかり見ていたら」
地上を高速で進むはローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)とグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)。2人が乗る『フレアライダー』は砂上の移動には適していた。
「まずは」
ローザマリアは『とどめの一撃』で上空に見える箱の縁を狙い撃った。
『曙光銃エルドリッジ』を使っているとはいえ、さすがに距離がある。弾は届いてすらいなかったが、連射の銃音は敵兵の目を地上へと誘った。
「ライザ、行くよ」
「わかっておる」
グロリアーナ・ライザもこの時ばかりは剣を握る手を緩め、『フレアライダー』の操縦に集中した。
2人に気付いた敵兵は地上へ向けて一斉に矢を射てきた。2人はそれを『フレアライダー』の高速疾走で避け逃げてみせた。
「今度は下ばかり見るの? 単純ね」
ローザマリアが笑んだ時、典韋 オ來(てんい・おらい)が上空から、
「あんまり大姐とライザに見とれてんなよ」
と『小型飛空艇ヴォルケーノ』から跳び出した。狙うは『吊浮箱』の縁、『ワイバーン』と箱とを繋ぐワイヤー。
「おぉらよっ!!」
『方天戟』による『轟雷閃』が見事に2本のワイヤーを刈った。
「スケベな顔してるからだぜっ」
すぐに再び空へと跳んだ。離れ際にもう2本ほどワイヤーを斬った、それで箱は完全にバランスを崩した。
吊力の一部が欠けた箱はガクンと傾き、そして大きく揺れた。兵士が数名ほど落ちただろうか。
典韋はエシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)の『小型飛空艇ヴォルケーノ』に空中で拾われ、そして自身の飛空艇まで寄らせて跳び移った。
「サンキューな、ジョー」
「いえ。それでは」
言葉少なくエシク・ジョーザは機体を地上へと寄せた。落とすべき箱はもう一つ。彼女はグロリアーナ・ライザを拾い上げると、急昇降と旋回を混ぜながらに右方の『吊浮箱』へと接近していった。
兵が矢を放とうにも、衝突するほどに近づいてしまえば叶わない。そして接近して過ぎる様にグロリアーナ・ライザが『両手利き』による『疾風突き』でワイヤーの留め具を2つほど砕いた。
「ほっほぉ〜、あれなら右の箱もすぐにフラフラになるね〜」
『小型飛空艇ヘリファルテ』を操る葉月 エリィ(はづき・えりぃ)が瞳を輝かせた。
「あんな箱の中に兵士たちが収容されているって? 狙ってくれって言ってるようなもんだよね」
「まったくでござる」
機晶姫であるクリムゾン・ゼロ(くりむぞん・ぜろ)は徐に『六連ミサイルポッド』と『機晶キャノン零式』を上空へと向けた。
「あのように群れて飛んでいては狙ってくれと言っているようなものだ」
「え? あれ? ワイバーンを狙うの?」
「もちろんだ。10体ものワイバーンで箱を吊り上げているようだが、兵士が詰まっている事を考えれば相当の重量になっているはず。つまり竜の1体でもバランスを崩せばそのまま崩れるという事も考えられる」
「ん〜 あぁなるほど。じゃあ、あたいは〜」
突貫突撃!! エリィが飛空艇を接近させて、
「行くでござるよ」
クリムゾンが一体に狙いを定め、そして爆撃した。
「あたいも行くよっ!!」
クリムゾンの予測した通り、一体がヨロケると群れは乱れて箱も揺れた。箱から兵士がバラバラと落ちるより前に。
エリィは『機晶ロケットランチャー』を箱の中へ向け、そして放った。続けてクリムゾンの爆撃が箱の一面を爆ぜ壊した。
「あら、意外と簡単に壊れるのねぇ」
エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)が『空飛ぶ箒』で『ワイバーン』の頭上に出て、
「あとは揺・ら・す・だ・け♪ でしょう?」
『天のいかづち』で確実に一体ずつ飛竜を狙っていった。
「よーしよし、上手いことやりやがったみたいだなぁ」
額に手を当ててここまでの戦いを見物していた雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)がマルドゥークに言った。
「ほら、あそこを飛んでるのが、うちのご主人で、あっちがソラだ。見事な連携だろう?」
マルドゥークはこれには一つも応えなかった。顔は強ばったままだ。余計な心配だったか。
「よぉし、マルドゥークよ、今こそ攻める時だぜ!!」
「全軍突撃ぃ!!」
マルドゥークの声に軍兵が一斉に怒号をあげた。
ソアたちの奇襲を受けた前方2つの『吊浮箱』からはボロボロと兵が落ち、箱自体も落下しそうになっている。
しかし残りの箱は、前方の箱が襲撃を受けた直後に降下を始めたようで、既に全ての箱が地に底をつけていた。
ネルガルの軍兵600人強に『ワイバーン』が90弱、対するマルドゥークの軍兵はおおよそ500人。
無論これにシャンバラの生徒たちの戦力が加わる。2つの勢力がいま、正面からぶつかり合った。
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