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リアクション
3)牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)
「へろー、可愛いいけまさんですよ」
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は、全世界の視聴者に向け、軽い挨拶をした。
もちろん、目の前のトッドさんにも。
「契約者に関わる方なら、どなたでもご存知の、
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)さんね」
「そんな、言いすぎですよ」
トッドさんの紹介に、アルコリアは笑う。
しかし、その強大な力ゆえに、恐れられ、「ドージェの妹」と噂されたこともある。
そして、インタビューは始まった。
「あなたの大切な方はどなたですか?
その方について、そして、どう思っていらっしゃるか、
なるべく具体的に教えてくださらない?」
「まちろ」
「思う……も何も、一緒に居れば幸せだから、それが全てですよ」
アルコリアは、それ以上、何も語らなかった。
「では、こちらのお写真をご覧になって」
全身カット
「先日の『コントラクターズ&イコンズ』のご活躍、拝見しましたわよ。
戦う時もちぎのたくらみをよく使われるようになったようですけれど、
何か意図があるのかしら。詳しく聞かせてくださらない?
サクラコ・カーディさんからも、ご質問いただいているわ。
「最近ちぎのたくらみを愛用してますが、どういう心境の変化ですか? 年齢を感じ始めた?」
とのことよ」
「あー、さくらこにゃんも同じような感じのこと質問してるんですね。
反響あったと取るべきですかね」
アルコリアは、少し考えるように髪をかきあげて、続けた。
「先ず、『コントラクターズ&イコンズ』のについては、
そういう番組で、依頼内容に則するにはどうしたら良いか?
そう考えて行動したのみです」
「おっしゃるとおり、そのご活躍は、より際立っていらっしゃったわね」
トッドさんがうなずいた。
アルコリアは、パチンと指を鳴らした。
一瞬で、その姿が5歳児のものとなる。
「まあ、かわいらしい」
トッドさんが手を叩く。
「このすがたでいることがおおいのはねー。
アルちゃんのやるきがないだけなのだー」
そう言うと、とてとて、とカメラに向かって近づいて、
アルコリアは、上目づかいににっこり微笑んでみせる。
そして、トッドさんの方に戻っていくと、
ソファの隣に腰を下ろして、トッドさんを見上げた。
「やる気がない、というのは?」
トッドさんは、元のアルコリアに対してと、変わらぬ態度で訊ねた。
アルコリアも、元の口調で答えた。
声は、かわいらしい5歳の少女のものだったが。
「悪く聞こえるかもしれないので、補足しますと……全力で戦わない。
舐めるとも違うとも言っておきますね。
元々勝ち負けに拘って戦うことが少ないので」
「まあ、そうでしたの?
それはいったいどうして?」
以外な回答に、トッドさんは目を丸くした。
「アルコリアさん、勝つために努力を惜しまないのだと思っていたわ」
「努力……そうですね。
私の努力はそれとは違う方向性ですね」
アルコリアはかぶりを振った。
「……契約者の皆さんって強い、なんだかんだで最後には勝つじゃないですか。
勝ち馬に乗って、かっこつけたことしたくない、そういう意思を含んでやってます」
「どういうことなの?」
「私が本気で戦った相手って、なんだか分かります?」
アルコリアは、逆に、トッドさんに、
そして、同じ問いを胸に抱いているであろう視聴者に問いかけた。
「強い相手……?
近いけど違います。『諦め』ですよ」
「『諦め』って?」
アルコリアが、歌うように、答えを続けた。
「イコンを生身で倒すのは無理。
イレイザー? 神? 特別な力のある奴に任せとけ。
想いや絆は無敵の力になる。絶対に負けない」
血のような赤い瞳が、トッドさんを捕えた。
いや、その向こうにいる、幾千万の人の影を見据えているのか。
「誰も挑んでいかない『諦めを殺す』
……それが出来ればと、勝ち目の薄い戦いを気が向いたときにしてるだけですよ」
幼子の姿のアルコリアに、もう一人の幼子が問いかけた。
けして、少女の心を忘れぬ大人が。
「それは、なぜ?
あなたは、どうして戦うの?」
アルコリアは、深遠の闇を幾度ものぞいただろう戦士は、薄く笑ったように見えた。
「その動機?
それは、いつの間にかこんな力つけてて、力の意義を……」
どこか懐かしさを誘うメロディーが流れた。
この番組のテーマソングだった。
「あら、お時間ですか。本日はありがとうございました」
「残念。もっとお話伺いたかったわ。
こちらこそ、ありがとうございました」
ぺこりと会釈するアルコリアに、
心底残念そうに、トッドさんが言った。
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