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2024種もみ&若葉合同夏祭り開催!

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リアクション

 星が綺麗に見える時間。
 アレナは早川 呼雪(はやかわ・こゆき)達に誘われて、人々が集まっている所から少し離れた場所で、ゆっくり過ごしていた。
 呼雪とこうしてのんびり過ごすのは本当に久しぶりで、アレナは呼雪の隣でとても嬉しそうにしていた。
 呼雪の服装は、紺地に控えめな桜模様の浴衣。久しぶりにきちんとアレナに会うということもあり、自分で選んだものだ。
 傍には、ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)と、ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)がいる。
 ユニコルノは浅葱に桔梗柄の浴衣を着ており、アレナはユニコルノが選んで着付けをしてくれた白地にピンクの可愛い撫子柄の浴衣を着ていた。
「最近はどうだった?」
 呼雪のそんな一言の問いに、アレナは呼雪達が地球に行ってからあったことを長々と話した。
 優子のことが中心だったけれど、親しい友人や……恋人が出来たことも、呼雪に話した。
「康之さんと『恋人』の関係になったんです。元々仲良しだったんですけれど、もっと特別に仲良しな関係なんです」
 アレナのそんな説明を、呼雪は穏やかな表情で聞いていた。
「そうか、彼なら大丈夫だろう」
 康之のことは呼雪も良く知っている。
 彼ならアレナの気持ちをちゃんと考えてくれるだろう。だから安心できる……ただ。
「呼雪さんとヘルさんも『恋人』ですよね。でもユノさんと呼雪さんは『恋人』じゃないんですよね。仲良しでも」
「……ああ」
 少し苦笑しながら呼雪は返事をした。
 そう。ただ、アレナがちゃんと『恋人』の意味を把握しているかどうかが少し気がかりだった。
 もし理解していないのなら、彼が若干不憫……。
(いや、余計な世話か)
 くすっと小さく笑って、呼雪は話題を変えることにした。
「優子さんはどうしてる?」
「リハビリ頑張ってます。頑張りすぎちゃうところがあるので、なるべく傍にいるようにしています」
「そうだな、傍にいてあげてほしい。
 治療の為だけじゃなくて、身体的な傷は治っても、心に残ってしまった傷や引っ掛かっている思いは、なかなか昇華させることが出来ない事も多いから」
「……はい。私がもっと相談にも乗れればいいんですが……」
「心の傷については、アレナ自身も覚えがあるんじゃないかな?
 経験があるからこそ出来る事がある」
「……私に、何かできますでしょうか」
「はい」
 答えたのはユニコルノだった。
「悲しい思いをしてきた分、他の人のそういう気持ちを理解する事が出来ると思うんです。
 やきもきしたり、暗い気持ちになってしまう事もあるかも知れませんが……気を張って受け止めるのではなく、優子様と一緒に泣いて、一緒に笑う。
 そういうのも大切だと思うのです」
「ああ、相談に乗ることが全てじゃない」
 ユニコルノと呼雪の言葉に、アレナはこくんと頷いて。
 それから呼雪とユニコルノを交互に見つめて微笑んだ。
「やっぱり、呼雪さん……ええっと……お兄ちゃん、みたいです。ユノさんはお姉さんだったり、妹だったり……。優子さんはお母さん、なんですけど!」
 アレナのそんな言葉に、呼雪達が反応を示すより早く、ヘルが陽気な声を上げた。
「呼雪がアレナちゃんのお兄ちゃんなら、僕もアレナちゃんのお兄ちゃんかな〜。はい、呼雪! ドリンクのお代わり」
 ヘルは減っていた呼雪のカップに、お茶を注いだ。
 場所取りをしたのもヘルで、茶菓子を貰ってきたのも、飲み物を用意したのも、ヘルだった。
 ヘルは病気の呼雪を気遣い、日々甲斐甲斐しく世話をしている。
「……ヘルさんは、呼雪さんの奥さんでお母さんみたいです」
「がーん……。奥さんは良いけど、お母さんって何? あ、呼雪口にゴミが」
 といいつつ、ヘルは呼雪の唇についた小さな屑を指で払ってあげた。そう、それはまるで幼子を世話する母親のようだった。
 呼雪はありがたいと思いながらも、そのうち自分で何も出来なくなるんじゃないかと、少しの不安も覚えていた。
「ところで、アレナさん……ちょっと小耳にはさんだのですが……」
 ユニコルノが、そっとアレナに近づいた。
「なんでしょう?」
「ブラヌ様がご結婚なさったとは本当でしょうか」
「はい、突然で私もびっくりしました」
「ホント、驚き……いえ、おめでたい話です」
 こほんと咳払いをして、ユニコルノはアレナに穏やかな目を向けた。
「アレナさんは……まだ早いでしょうかね?」
 ユニコルノの言葉に、アレナは軽く眉を寄せた。
「ん……」
「ごめんなさい、少しやなませてしまいましたね」
「いえ、家族……になりたいんですけれど、まずは優子さんと……」
「ん? 何か飛んできたな」
 呼雪が腰を上げた。
 打ち上げられた華美が、近くに飛んできたようだ。
「あ、私も行きます」
 呼雪を心配して、ユニコルノも立ち上がって付き添う。
「……呼雪さん、大丈夫でしょうか? 心は呼雪さんのままなんですけれど、ちょっと変わったような気がします」
「雰囲気かな? 見た目もだけど……」
 ヘルが呼雪の背を見守りながら、言う。
「元々はああいう感じだったみたい。無理に強くあろうとしなくていいようになったからかな……。本来の自分に戻って来た感じ?」
「本来の呼雪さんですか」
「うん。……本当は、シャンバラが復活したらさっさと後方に引っ込んで、後進を育てたかったみたいだけど、なかなか上手くいかなかったしね……」
「たくさん、無理してたんですね……」
 アレナはエリュシオンの半妖精の村に行った時の呼雪を思い浮かべていた。
「アレナちゃんはどう? 今『こうなりたい自分』ってある?」
「……ある気もします。はっきりとしてないんですけれど」
「それが分かってれば、慌てなくて大丈夫。みんな、少しずつ変わっていくんだ。
 僕も昔はこんなだったからね〜☆」
 言って、ヘルは目じりを釣り上げた。
「ふふふふふ……っ」
 ヘルの無理やり釣り上げた目を見て、アレナは笑い声を上げた。
「アレナ」
「アレナさん」
 呼雪とユニコルノが戻ってきて、可愛らしい砂糖菓子の入った袋をそれぞれアレナに差し出す。
 空から落ちてきたものだ。
「ありがとうございます……えっと」
 両方もらうべきか迷うアレナに、呼雪がお菓子を持たせて一方に目を向けた。
「そろそろ、待ち合わせの時間だろ?」
「いってらっしゃいませ」
 ユニコルノも、お菓子をアレナに持たせた。
 ひとつはアレナの分、もう一つはアレナがこれから会う人の分、だ。
「ありがとうございます。それじゃ、また後で!」
 アレナはお菓子を持って、打ち上げ機の方へと駆けていった……。

○     ○     ○


「康之さん、こんばんは」
「アレナ、走らなくていいって」
 駆け寄ってきたアレナに、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)も駆け寄った。
「可愛い浴衣だな〜。アレナにとっても似合ってる!」
「ありがとうございますっ。ユノさんが貸してくれたんです〜」
 康之の言葉に、アレナは顔を赤らめて喜んだ。
「そっか、大事にしないとな」
「はいっ。あ、お菓子どうぞ! ユノさんと呼雪さんがとってくれたものです」
「サンキュー」
 康之は片方お菓子を受け取って、ポケットに入れた。
 それから2人は手を繋いで、打上げ華美の発射台の方へと向う。
「お、アレナさんじゃないっすか。コイビトさんと一緒なんすねー」
 発射台を担当していた若葉分校生がにやにやと2人を見る。
 若葉分校で康之が優子からアレナとの交際の許可を得たことは、若葉分校生に知れ渡っていた。
「いいたいことはわかる。アレナは若葉分校のアイドルみたいなもんだろうから。
 今日は思う存分、とにかく高いところまでぶっ飛ばしてくれ! 遠慮はいらねえ! ほら、あれだ。リア充爆発しろー! って勢いで!」
「えっ」
 びっくりしてアレナは康之を見上げた。
「大丈夫。何があっても絶対怪我させないし、その浴衣にも傷一つつけないから」
 そう強く言い切ってアレナの頭にぽんと手を乗せると、アレナは康之の服をきゅっと掴んでこくりと頷いた。
「了解、そんじゃいきますよ〜。覚悟いいっすかね〜?」
「おお」
「はいっ」
 返事をして、二人は発射台の中に入って、若葉分校生の手で、空へと打ち上げられた。
 大きな音と衝撃を、アレナは康之に掴まって目をぎゅっと閉じて耐えた。
 高く高く2人の体は空へとあがり――速度は次第に弱まっていく。
「アレナ、空を見ろ!!」
 康之が大声で言い、アレナが顔を上げた。
 直後に、康之は空へ『マジカルファイアワークス』を放った。
 色鮮やかな炎が、夜空に広がっていく。
「こっちもそっちも……この夜空全面、キャンバスだ」
「あ……」
 広範囲に放たれた魔力の光は、虹の噴水のようだった。
 アレナは小さな声を上げたあと、美しい光にただ魅入っていた。
「アレナは今年の花火はまだだったよな? だから、一番最初の花火を一番いい場所で観てもらいたかったんだ」
 消える光を見ながら、康之は言った。
 光が消えた直後に、2人の身体の落下も始まった。
「っと」
 康之はすぐに『翼の靴』を使って、落下の速度を抑える。
 アレナのことは勿論、胸の中に大切に抱きしめていた。
「アレナ、これプレゼントだ」
 康之からの今年のアレナへのプレゼントは、アレナの誕生花のムラサキツユクサが描かれた海中時計だった。
「俺も同じ型の懐中時計を持ってるんだ。だけれど、開けてみたらわかるけど、こいつらは止まったままなんだ。横にスイッチっぽいのがあるけど、それを押せば動き出すらしい」
「お揃い、です。一緒に、動かすんですよね?」
「ああ、でもまだ、動かさないでいたい」
 懐中時計を持たせた手を、康之は片手で包み込んだ。
「これはな……これから先。俺とアレナに色々な事があるかもしれない。その間で、もしかしたらだけど俺とアレナが喧嘩したり仲が悪くなったりしたり離れ離れになるかもしれない」
 2人の足が地面についた。
 アレナが、身を起こして康之を見上げる。
 康之の顔は真剣だった。
「そういうのを全部乗り越えて、俺達が恋人から……その、け、結婚して夫婦になる時が来たら一緒に動かしたいんだ!」
 ドクンと、アレナの心臓が大きな音を立て、アレナはびっくりして自分の胸を押さえた。
「やっぱり、恋人から夫婦になるって事はまた新しい一歩を踏み出すって事だ。だから、その一歩をこの時計と一緒に始めたいんだ」
 康之が包み込んでいたアレナの手を持ち上げて、開いた。
 アレナは自分の手の中にある康之からの贈り物――懐中時計を見つめる。
 康之も自分の懐中時計を取り出して、開いて見せた。
 両方、0時のまま止まっていた。
「だから、それまで持っててほしいんだけど……いいかな?」
 康之の言葉に、アレナは懐中時計をぎゅっと握りしめて首を縦に振った。
「私は……康之さんと早く家族になれたらいいなって思います。だから、早く動かせる日がくるといいなって……思います」
 結婚や夫婦といった関係が、自分にはまだ早いというか、よく掴めていないアレナだったけれど、康之と家族になって、一緒に生きていきたいという強い気持ちがあった。
「あ……っ、あの……康之さん、お願いがあります……」
「ん? ……!?」
 突如、アレナが康之に抱き着き、今度は康之の心臓が跳ねた。
「康之さんは、私のお父さんじゃない、ですけれど……恋人でも、こういうの……おかしくないんですよね? 私、康之さんに……さっきみたいに……っ」
 “だきしめてほしい”
 アレナのそんな想いが、康之に伝わってきた。
 傍にいて欲しい、抱きしめて欲しい。
 それは子供のような感情なのかもしれない。恋人としての気持ちではないのかもしれない。
 だけれど、今、この子が大切な人の温もりを欲していることは事実だった。
「アレナが心から笑顔になれるのなら……何でもないときだって、いつだって、何時間でも……!」
 こうしていよう。
 と、康之はアレナを優しく抱きしめた。

○     ○     ○


「キャンプファイヤーの方が盛り上がってきたんで、小休止だ。お前らも飯にしろ〜」
「お弁当運んできました。飲み物も冷やしてありますよ」
 若葉分校の庶務的立場であるブラヌ・ラスダーが、新妻牡丹・ラスダー(ぼたん・らすだー)と共に、打ち上げ機を担当している分校生に近づいた。
「グヘヘ、戻って来やがったなブラヌ」
 打ち上げ機の前では、番長の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)が待ち構えていた。 
 若葉分校生たちも意味ありげな目で、ブラヌと牡丹を見ている。
「ん? なんだ。弁当なら勿論番長の分もあるぜ! 牡丹の手作りじゃねーけどな、愛妻弁当は俺だけのものだし、へへへ、へへへへへ〜♪」
「てめー、ブラヌ調子に乗りやがって」
「やっちまおーぜ」
 途端、ブラヌは分校生達に殴られ蹴られる。
「おわっ、いってぇ、やめろやめろ〜」
 殴られ、踏まれながらも、ブラヌは幸せそうだった。
「弁当かァ!? 貰ってやろう。だが、花飛ばしてるてめーらは邪魔だ。あっちで食ってろ」
 竜司は弁当を受け取ると、しっしっとブラヌ達に手を振った。
「食い終わったら手伝えよ、ブラヌ」
「いてて、おー、了解! それじゃ牡丹、仕方ねーから俺らはあっちで2人きりでメシにしよーぜー♪」
「はい」
 弁当を配り終えると、牡丹はブラヌの後を追って、分校生達のグループとは離れて2人きりでの夕食をらぶらぶ楽しんだ。
「……よし、てめぇら、手順はこうだ」
 その間、竜司を中心に分校生達は作戦を立てていた……。

「戻ったぜ〜。あとは俺らに任せて、お前等も祭り楽しんで来いよ」
 ブラヌと牡丹が打ち上げ機に戻った時には、竜司と分校生は既に次の打上げの準備を終えていた。
「ん? あれ? 打ち上げ機が……」
 先ほど違い、打ち上げ機が花や色紙や風船、各種パーティで使っているオーナメントで飾り付けられていた。
「心配すんな、祭りは交代で十分楽しんだ。ただ、最後にやっておきてーことがあってなァ。グヘヘヘ」
 竜司が気味悪い笑い顔をブラヌに向けた。
「な、なんだ?」
 軽く身の危険を感じ、ブラヌが足を後ろに引いた。
「いくぜ、てめぇら!」
「「おー!」」
 竜司の掛け声とともに、分校生達がブラヌと牡丹を囲む。
「お、おい、何すんだ、俺はともかく牡丹にてぇだすんじゃねー!」
「きゃ……っ」
 分校生がブラヌと牡丹を担ぎ上げ、打ち上げ機へと運んでいく。
「お、おお?」
 打ち上げ機には、スプレーで『毛虎雲 汚雌出斗宇!』と書かれていた。
「結婚祝いだ、ブラヌ。派手に行こうぜェ! 牡丹は無理ならやめてもいいぜ?」
「わわわわ」
 ブラヌが発射台に詰め込まれた。
「いえ、ブラヌさんと一緒に行きます!」
 牡丹ははっきりとそう答えて、彼女も分校生の手で発射台の中に入れられた。
「いくぜ、せーの!!」
 ドーン!
「ひょげーーーーーーっ」
「……っ」
 2人の身体は高く高く打ち上げられた。

「番長さん、若葉分校の皆さん、祝福してくださった、皆さんありがとうございます!」
 速度が弱まってきたころ、牡丹は大声でそう言って鞄を開けた。
 ……中には、パラシュートのついた星とハート、若葉の形をしたクッキーが入っていた。
 牡丹はクッキーをあたりへと投げる。
「サンキューーーーーーーーー!」
 ブラヌも大声で地上に向かって叫んだ。
 それから……。
「ブラヌさん」
「牡丹……っ」
 瞬く星空の中で、2人はキスを交わしたのだった。
「あ、あのな……俺、浮気とかしてねーからな!?」
「え? どうしてですか? 突然……」
「そ、そういうくだらない噂とか、捏造で俺達の中を引き裂こうとする奴いるかもだし……お、俺も調子に乗って、その……牡丹を悲しませること、言っちまうことあるかもだけど……。
 俺にはお前だけだし!
 俺を好きになってくれる女性も、牡丹以外いないし……」
 2人の身体が下降を始め、ブラヌが牡丹を抱きしめた。
「私はブラヌさんの事、信じていますので」
 大丈夫ですよと、牡丹はブラヌを抱きしめ返した。
「ありがとうっ」
「ところでブラヌさん……翼、ありましたっけ?」
「……今日は飛行具持ってきてない」
「えっ? きゃああああああーっ!」
「うわーーーーーー」
 2人は互いにしがみつくように抱きしめあい、地上に落ちて行った。

 どっぼーん!
 落ちたのは泉の中。
 竜司が泉に落ちるよう調整して飛ばしたのだ。
「ブラヌさん、しっかり……!」
 結局、目を回したブラヌを牡丹が抱えて辺まで泳ぐことに。
「情けないぞ、ブラヌ! そんなんじゃ、嫁を守れねェぜ」
 竜司が泉に入って、2人を引き上げる。
「げほっ、す、すげえスリルだったぜ……パラシュートくらいつけさせろよ。牡丹が怪我したらどーすんだ」
 目を覚ましたブラヌは涙目で竜司に抗議した。
「牡丹も一緒に飛ぶとは考えなかったからなァ、グヘヘヘヘ。ほら、これ結婚祝いだ!」
 竜司はブラヌと牡丹に、分校生……だけではなく、祭りの参加者にも書いてもらった、寄せ書きとCDを渡した。
「番長……さんきゅー……」
 別の意味でブラヌはまた涙目になる。
「ありがとうございます。番長さん」
 牡丹はとても喜んで寄せ書きを受け取り、大切そうに胸に抱きしめた。
「って、このCD……」
 CDのタイトルを見て、ブラヌは固まった。
 『オレらのブラヌを祝ってやるCD』と書かれている。
 勿論作詞作曲、イケメン番長吉永竜司だ。
「あ、ありがとう番長。これは色紙とともに大切に“飾って”おく」
「ああ、若葉分校生のコーラスだ。ついでにこっちの新曲も……」
「いやいやいや」
 『オレの優子を讃えるCDサマーバケーションバージョン』については、ブラヌは必死に押し返した。
「それはほかの奴にプレゼントしてくれ! 寧ろ総長に! こっちの皆のコーラスの方はありがたく牡丹と一緒に聞かせてもらうぜ」
「そうか、力が湧く曲だぜェ!」
 竜司のイケメンなタイトルそのものな歌詞の他に、若葉分校生の野次、やっかみBGMの入った曲だ。
 それから、ドンと、竜司はブラヌの背を叩いた。
「嫁を大切にしてやれよォ。おまえももう立派な大黒柱だ」
「ああっ」
「ありがとう、ございます……っ」
 少し照れながらブラヌは頷き、牡丹は幸せそうに微笑んだ。