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ブレイクタイム 最弱王決定戦

『さぁ先程の過激な電流爆破マッチに続いて次からは王座を決める戦いが行われます。今回は実況を私、阿部プロデューサーが務めさせていただきます。そして次の王座戦に於いての審査員兼解説を担当していただきますゲストのザ=コさんです。本日は宜しくお願い致します』
『宜しくお願いします。所で先程は過激な試合でしたが大丈夫ですか?』
『あの程度、ナラカなら日常茶飯事です。さて早速参りましょう。続いて行われる王座戦は最強ではなく最弱を決める戦い、その名も最弱王決定戦となります。【我こそが最弱】と最弱を自負する選手達が既にリングの上で待ち構えています』

 リング上ではマントを纏った尾瀬 皆無(おせ・かいむ)、不敵な笑みを浮かべるドクター・ハデス(どくたー・はです)ペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)の姿があった。

『どの選手も自信満々ですね。どうですかザ=コさん?』
『私としては選手が集まったことにまず驚きが隠せません』
『それは私もです。それでは早速始めましょう。今回はバトルではなく自己アピールによる戦いとなります。まずは尾瀬皆無選手からその弱さっぷりを見せつけてもらいましょう!』

 阿部Pの言葉に、皆無が一歩前に出る。それと同時にエプロンからエルがリングに上がってくる。

『おっと、エル選手がリングに上がりましたね。今回アピールするにあたって対戦相手を使う事は許可されています。【セクシーナイト】のクラスである皆無選手はエル選手を相手にするようですが、どう見ますかザ=コさん?』
『エル選手は女性ですが強敵ですからねぇ……女性にすら負ける、というのは弱さを見せるにあたって基本ですが、ここで敢えて強豪を使い何を狙っているのかが読めませんね』

 ハデス達がコーナーまで下がり、皆無とエルが対峙する。
 身構えるエルに対し、皆無は笑みを浮かべると纏っていたマントを脱ぎ捨てた。

『おぉっと! 皆無選手マントを脱ぎ捨てた! その下から現れたのは――バニーだ! 皆無選手まさかのバニースーツだぁッ!』
『お尻の尻尾がキュートですねぇ、もふもふしてますよ』

 観客席から色々と悲鳴のような物が上がる中、皆無はまだまだと言わんばかりに笑みを浮かべてバニースーツに手をかける。

『何と更にバニースーツに手をかけた皆無選手、スーツを脱ぎ捨て……ビキニパンツだぁッ! 際どい、いやもう隙間から何か覗いててアウトなレベルなビキニパンツを露わにしたぁッ!』
『よく見てください阿部P! あれ隙間から見えるのはヒヨコちゃんカバーですよ! セーフです! セーフ! いや此処はセウトと言わせていただきたい!』
『危うく放送禁止になるところでしたね! これまでの流れ、どう評価しますかザ=コさん!?』
『今のところ最弱とは一切関係ないですね!』
『ですよねー!』

「ふっ、最後の砦ヒヨコちゃんに気付くとはあのゲスト中々やるな……」
 皆無が不敵な笑みを浮かべながら身をくねらす。元々皆無はパートナーに強制的に参加させられたのであるが、自称色男である彼にとって野蛮な格闘技など無理ゲーである。
 ならば最弱の頂点を目指してやると最弱王決定戦に参加したのであった。その為戦う気は一切ない。この姿もその意志の現れ――なのかもしれない。
「さぁエル様! セクシーナイトのこの俺様の美技に酔いしれぶぉッ!?」
 身をくねらせながら向き直った直後、皆無の顔面にエルの右ローリング裏拳が叩き込まれた。
 ただ対戦相手として「戦ってくれ」とだけ言われたエルは、容赦することなく吹き飛ばされダウンした皆無に蹴りを叩きこんでいた。
 それはストンピングと呼ばれるような生易しい物ではなく、空手の下段踵落としのような踏み抜くような蹴り。
「あぁん! 激しいッ! 激しすぎぃッ! 俺様壊れちゃう! こんな激しく足蹴にされたら俺様壊れちゃうぅッ!」
 その蹴りを受けながら、皆無は痛みによる快楽に身悶えていた。
「ひゃうんッ! 痛いッ! 止めて! いや止めないで! これ以上は無理! もっとやってください! そこは駄目! もっとそこを踏みつけてください! あぁらめ……ヒヨコちゃんカバー外れてポロリしそう……! いややめないでむしろポロリしてこの卑しい淫獣めを踏んでください! 虐げてください! 辱めてくださいぃッ!」
 身体をくねらせ悶えながら皆無が叫ぶ。だがやがて息を荒げると、「はぁうッ!?」と身体を大きく跳ねあげた。

『どうやらエル選手の踏みつけに果てた様ですね。ザ=コさんの評価はどうですか?』
『ただの変態ですね』
『おっと、少々辛口の評価が出ました』
『残念ながら弱さの要素がありませんね。変態要素が強く見られます。恐らくこのシチュエーションも彼の趣味でしょう。残念ながら最弱と言うには程遠いかと……』
『成程』
『これがもし最弱王決定戦ではなく変態一武道会であったなら彼は優秀な成績を収めたかもしれませんね。舞台が違う事が残念でなりません』
『ありがとうございました。それでは次の選手へと行きましょう!』

 阿部Pの合図でリングを下ろされる皆無とエル。その間もエルに踏まれ続けた皆無は「もう無理! もう果てたから! これ以上出な――あっ出ちゃうぅぅぅぅ!」とか叫んでいた。
 その後皆無は「……ふぅ」と賢者になったとかならなかったとか言われているが、正直どうでもいい。