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嘆きの邂逅~離宮編~(第1回/全6回)

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嘆きの邂逅~離宮編~(第1回/全6回)

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「イルミンスールの四条輪廻だ……発言をさせていただいてもよろしいだろうか」
 続いて、四条 輪廻(しじょう・りんね)が立ち上がる。
「どうぞ」
「すぐにでも調査を行いたいのは山々ではあるが、どうにも内部の構造や相手の戦力など不明瞭な点が多すぎる、まずは我々イルミン生を中心として周囲の罠の捜索及び排除を行った上で、医療体制を整える、バリケードの設置を行うなど、拠点として塔を機能させるのが順当な手順であると考えるがいかがだろうか。……塔の階下まで制圧出来れば理想的だな、怪我人を落ち着いて休ませられる環境が重要だろうし」
「外れの塔の周りには罠などはないと思われる。無論、塔の周辺に何か仕掛けがある場合は手を出さずそのまま本隊の到着を待つ可能性もある」
 優子の返答に頷いた後、輪廻は言葉を続ける。
「また、状況によっては人造人間に対して、鏖殺寺院の残したトラップを逆に利用して対抗出来ないかとも考えている。……城という施設であれば塔から攻撃される状況よりは塔の防衛を想定して罠を仕掛けるのではないだろうか。……魔法や罠に対する知識であれば俺も役立てるのでは、と考えているのだが。……如何せん戦闘になると自己の防衛で手いっぱいだがな」
「興味深い案ではあるが、それを知り、それを決めるための情報を掴むための先遣調査なんだ。いわば先遣調査とは斥候だな。キミの案は本隊の作戦時に検討させていただきたい」
「頼む。自分自身も、幸い、禁猟区と隠れ身、超感覚などが使用出来る。危機回避という面でも役立てるつもりではいる。パートナーも呼ぼう。実際の調査の際にはこちらに残して連絡役を行ってもらうつもりだ」
「今から呼んだのではパートナーは出発には間に合いそうも無いが……どうする?」
「では、先遣調査希望は自分のみで。必要なら本隊投入の際、パートナーにも来てもらうことにする」
「わかった」
 優子は輪廻の言葉を紙に書き留めていく。
「ウィルネスト・アーカイヴスだ」
 輪廻が座った途端、ウィルネストが待ちわびたかのように間を空けずに立ち上がる。
「研究者の性? 知識欲が疼くんだよね……自分のこの目で、古王国時代の遺物を見たい、ってさ」
 にやりと笑みを浮かべる。
「イルミン生として、古代技術研究調査へ参加希望だ。ディテクトエビルで警戒しながら博識で調査するといったことが出来る。また、後衛のウィザードとして、戦闘にも参加可能だ」
「なるほど……」
 優子がメモをとっていく。
「ところで志願に当たって、詳細なことがまだ分からないんだけど、転送魔法について質問いいか?」
「質問の時間は後ほどとる予定だ」
「了解」
 ウィルネストはうずうずしながら、椅子に腰掛けた。
「赤羽美央です」
「ジョセフ・テイラーデス」
 続いて、赤羽 美央(あかばね・みお)と、パートナーのジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)が立ち上がる。
「私は主に白兵戦を得意としています。私は騎士としての戦い方を鍛錬してきました。戦闘での特技としてはチャインスマイトでの連続攻撃やランスバレストでの一極集中攻撃、ディフェンスシフトでの仲間の護衛などが得意です」
「ミーは戦闘はあまり好きではありまセン。光術で周囲を照らしてみたり、ヒールをかけたりナーシングで治療といったサポートが得意デス。また、戦闘をさけるためにディテクトエビルで周囲の警戒や邪念を持つ探索者の発見ができるため、グループ行動としては一翼を担うことが出来ると思いマス」
「本隊向きであるな」
 プロクルが言い、優子が首を縦に振る。
「そうでしょうか……。私が怪しいと考える場所は使用人居住区のある北側の外れです。どうしてその場所では鏖殺寺院の根が張り巡らされていたのでしょうか。もしかしたら、北の塔になにかあるのかもしれません。異論がなければその辺りを調査してみたいと考えています」
 調査目標について、美央が語った。
「ミーはイルミンスール生として、魔法考古学などについて詳しく勉強してきました。探索者としての持ち味は、魔法学校の大図書館などで得た知識や、財産管理の経験による計算力の高さでショーカ。美央と行動が共に出来ない様なら、互いに情報を連絡しあっていつでも相談ができるようにしておきマス」
 ジョセフはそう言葉を続けた。
「なるほど……だが、北側の塔に行くには、使用人居住区を越えるか回り込まなければならない。それは先遣調査の行動としては向いてはいないな」
 優子はしばらく考え込み、二人の言葉を紙に記していく。
「そうですか……。では、最後になりますが、騎士として学んだ強靭な精神で、どんな非常時にも慌てずに対策するよう心がけます」
 そう言って、美央及びジョセフは頭を下げた後、着席した。
「次に教導団……と、薔薇の学者は1人ずつだな。よろしく頼む」
「はい」
 返事をして、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が立ち上がる。
「宇都宮祥子です。基本的な技術は一通り習得しています。白兵戦技で八極拳の修練を積んでいるので白打での超近接戦闘と、憲兵科に所属していることから調査関係は比較的得意分野かと思います」
「心強いよ」
 優子の軽い笑みに頷きで答えて、祥子は言葉を続けていく。
「自身のスタンスはあくまで百合園・離宮対策本部の指揮下にある一介の他校生。本部の方針に従って目標に専念するものとします。或いは必要があれば隊長をされる神楽崎優子さんに参謀的な、現地での戦術レベルのアドバイスは行います。寧ろ他校生はボランティア的立場を崩すべきでない。そうでないと離宮や内部で得たモノの管理で諍いが起きると考えております」
 教導団員らしく厳しい口調で祥子は更に続ける。
「もっというなら実戦での被害担当は他校生、特に教導団が請負うべき。数の上で主力になる百合園は元来実戦には不向き、生徒も精神的にそこまで強くないと思う。友人が目の前で血まみれになって死んでいく様を見てどれだけ戦えるだろうか? それだけに他校生の支援や、確保された場所での調査に専念してほしい」
「百合園生でも、白百合団員としてそれなりの戦闘経験のある者もいる。だが、一般の百合園生はキミの言う通りだろう。彼女達は調査にも出すつもりはない。護身の為の訓練をさせ、陣作り、陣での救護活動のみと考えていたが、その先遣隊のメンバーが見ての通り他校生中心で埋まりそうだ。メインの本隊がやや不安ではあるが……。強く希望する者以外、百合園生は連れていくことはしないことにしようかと、今は考えている」
 優子の言葉に祥子は「それがいいでしょう」と強く頷く。
「その他のことはまた後ほど」
 そう言って、祥子はとりあえず腰掛ける。
「僕で最後だね」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)が立ち上がる。
「清泉北都です。必要なのは力じゃない。鏖殺寺院の罠があるかもしれない場所へ行くのだから、慎重さがなにより重要だと考える」
 危険を察知する『禁猟区』を張り周囲に警戒。
 嗅覚や聴覚など五感を駆使しての状況把握『超感覚』
 閉じ込められたり敵の封鎖を解除する為の『ピッキング』
 万一敵に襲われた場合に備えて、時間稼ぎ用の『トラッパー』
 と、北都は自分の持つスキルの有効性を語っていく。
「僕は警戒を中心に行いたいと思う。見たものは博識の過去の記憶から照合して調べてみるよ。回復と攻撃も念の為に持っては行くけど、あくまで本隊が安全に進めるかどうかの確認が主目的であることを忘れちゃいけない」
 優子が北都の言葉に頷く。北都は頷き返して続けていく。
「こちらが西からで敵は北側からくる可能性が高い。全方面への警戒はしなければならないけれど、特に北側への注意はするに越したことはない。メンバーとは携帯以外にも音や光による合図を決めておき、その場で一番効率的で安全な方法で連絡を取るようにしたい。声や音が出せないとか、光は敵に察知されるとかあるからね。連絡手段は多い方がいい」
「そうだな」
「あとは……僕は身体が小さいから、比較的狭い場所へも入れるよ」
 ええい、成長期はこれからだー! と思いながら、自分が小柄であることもアピールしておく。
「仲間を見捨てる事はしたくはない。それでも重大性を考えて、必要な場合は決断する。逆に僕が敵に捕まったら見捨てて貰って構わないし。捕まっても生きる為の努力はするつもりだよ」
 真剣な目で、北都は最後にそう言った。
「そう、生きる為の努力は決してやめないでくれ。自決なんかするなよ」
 北都、それから皆にも優子はそう言った。
「もちろん」
 と、頷いて北都は腰掛ける。
「他にはいないな?」
 優子の問いに声を上げるものはいなかった。
「長々とお疲れ様。別室で選考させてもらうんで、皆は少し休んでいてくれ」
 優子がそう声をかけると、事務作業をしていたオレグ、それから ミーナが茶を淹れに給湯室に向かう。
「ではラズィーヤさん、生徒会長、それから…… 神倶鎚エレン、荒巻さけ、フィル・アルジェントも、良ければ参加してくれ」
 ラズィーヤ、春佳、それから 本部副部長となるエレン、本部長補佐となるさけ、作戦指揮官の補佐を務めるフィルも立ち上がり、優子と共に生徒会室に向かっていった。