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嘆きの邂逅~離宮編~(第1回/全6回)

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嘆きの邂逅~離宮編~(第1回/全6回)

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 茶を飲み菓子を食べている最中、僅か十数分で神楽崎優子達が戻ってくる。
 おのおの席に着き、優子だけは腰掛けずに数枚の紙を手に静まり返った会議室を見回した。
「全員揃っているな? では、先遣調査隊のメンバーを発表しよう。まず、隊長として……」
 優子が目を向けたのは蒼空学園の席だった。
樹月 刀真(きづき・とうま)
 名前を呼ばれた刀真は僅かに驚きの表情を浮かべた。
「そのサポートとして、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
 月夜はこくりと頷く。
「魔法を得意とし、知識が豊富だというセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)。メモリープロジェクターを活用できるファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)
 セシリアとファルチェは顔を合わせて頷き合った。
「地図、その他報告書をまとめる書記官としてエメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)。ただ作戦中は機敏に動いて欲しい」
 エメは穏やかに微笑んで頷く。
「白百合団から幻時 想(げんじ・そう)
「は、はい」
 想は思わず返事をした。体に緊張が走る。
「ローグで適任と思われるヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)
「任せておいて♪」
 ヴェルチェは楽しげな笑みを浮かべる。
「魔法学校生であり、魔法知識に長けたカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)
 カレンは目を輝かせる。
「以上8名だ。当初の予定より3名多いが、これは隊長を任せる樹月刀真の提案に従い、交代が可能なように8名選んでおくことにした」
 書類から目を離して、優子は真剣な眼差しや落胆の顔を見せる皆を見て、語る。
「樹月を抜擢した理由は、確実安全、臆病な位慎重にという姿勢。及び、分析判断能力だ。手元の資料の通り、離宮に関しては殆ど情報がない。『少ない情報をどれだけ的確に捉えて、正確な判断が下せるかどうか』、変わりゆく状況下に於いて、自身の判断で正しい選択ができるかどうか。そして戦闘の可能性は否めないが、調査隊は戦うこと、反撃することに重点を置いてはならない。調査隊は『絶対に見つかってはならない』『知られてはならない』のだから。敵につけられて拠点に戻ってきたのなら逆にこちらが探られ、塔に残った者達の存在を知らせてしまうことになる。どれだけの戦力が残っているのかは不明だが、およそ25人の先遣隊メンバーではまるで太刀打ちできないだろう。必要なのは『戦いを想定した案よりも、いかに慎重に隠密に必要な情報を得るか』と判断した」
 刀真は無言で優子の話を聞いてる。
「他のメンバーについては、注目点や能力に光るものがあり、調査員として適していると判断した。能力については、ここに集ったメンバー全員が相応の能力を持っていると思う。ただ、先遣調査においては、個人能力よりも頭脳的に立ち回れるかどうかを重視させていただいた。己を知り、技術の使い方を自分の言葉でアピールできた者を優先している」
 書類をめくり、優子は次なる名前を読み上げる。
アルフレート・シャリオヴァルト(あるふれーと・しゃりおう゛ぁると)テオディス・ハルムート(ておでぃす・はるむーと)アリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)イーディ・エタニティ(いーでぃ・えたにてぃ)志位 大地(しい・だいち)国頭 武尊(くにがみ・たける)
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)四条 輪廻(しじょう・りんね)ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)清泉 北都(いずみ・ほくと)。以上12名には、陣の作成や塔での作戦立案、周辺調査を頼みたい」
 少し間をおくが、辞退者や反対意見は出なかった。
「残りの7名の能力や提案は発言中にも話したが本隊向けと思われるため、本部での助力、そして本隊員として離宮を訪れて欲しい」
 別室で選考は行われたが、その際にも紛糾することもなく、ほぼ優子1人の意見で進められて決定された。
 そして会議は、その他の先遣隊メンバーの募集に移る。
「続いて、塔に陣を構えたり、本隊迎え入れの準備をするために白百合団員を中心に20名ほどの人員を塔に向かわせてはどうかと思っているたのだが、こちらに同行を望むものはいるだろうか?」
 優子がそう問いかけると、沢山の手が挙がった。
「……と、18人か。先の立候補者で調査員含めて19名が決定しているから、白百合団団員を含めると50名近く、倍になってしまうな」
「送ることは可能ですが、物資があまり運び込めないかもしれません。次の封印解除と、本隊の投入が滞りなく行われれば問題ないとは思いますが」
 ソフィアの返答を受けて優子は頷き、手を挙げた者達に目を向けた。
「では、簡単な自己紹介だけ頼む。そうだな、百合園生から」
「はい。白百合団員の笹原乃羽です。救護班長の下で働きたいと思います。どうぞよろしく!」
「シーラ・フェルバートです。乃羽と一緒に、治療担当として働きたいと思います。よろしくお願いいたいます〜」
 白百合団員の笹原 乃羽(ささはら・のわ)と、パートナーのシーラ・フェルバート(しーら・ふぇるばーと)がぺこりと頭を下げた。
「白百合団員のステラ・宗像です。陣の構築などのバックアップに回らせていただきます」
「白百合団員のイルマ・ヴィンジだ。陣を守りきる事を目的に動く予定だ」
「白百合団員の陳到です。拠点作りと警戒に務めましょう」
 白百合団員のステラ・宗像(すてら・むなかた)イルマ・ヴィンジ(いるま・う゛ぃんじ)陳 到(ちん・とう)がそれぞれ一言ずつ言った。
「百合園の伏見明子です」
 伏見 明子(ふしみ・めいこ)は起立して、発言をする。
「役割分担は必要だと思いますけど、増援が暫く送れない可能性もある以上『誰かが動けなくなった場合』の事は考えに入れておかないといけないんじゃないかとも思います。私と私のパートナーなら、基本的にどの役割が抜けても穴が埋められる。……まあ、補欠って事です」
 パートナーのフラムベルク・伏見(ふらむべるく・ふしみ)サーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)九條 静佳(くじょう・しずか)の3人も立ち上がった。
「フラムベルク・伏見です。兵士としての訓練は一式積んでおります。陣設営の際は、防衛線構築の手伝いが出来るかと。旧型ではあるが、機晶姫なので専用装備を利用した活動も可能だ。メモリープロジェクターも所持している」
 フラムベルクは冷静にそう発言をしていたが……。
(……こ、ここで粗相をしてはマスターに申し訳が立たない……!)
 と、内心取り乱し気味だった。
「……本当にガチガチだねえ君は」
 隣に立つサーシャがフラムベルクを肘でつっついてから、発言をする。
「サーシャ・ブランカだ。野伏のやり方は一通り心得てるよ。宮殿の探索と言うより軽く開拓みたいな状況だからね。陣の安全確保の為の隠密偵察、だったら役に立てるんじゃないかな?」
「皆に頼むのはあくまで周囲だけだがな」
 優子の言葉に頷き、サーシャは自分の能力について語る。
「使えそうなのは隠れ身と超感覚。それから、有事の際に先手打って鬼眼、かな。軽く陣の外に罠を仕掛ける事も可能だね。兎も角、「先に見つける事」「出鼻をくじくこと」は得意だ。能動的に防衛することになったら役に立つ自信はあるよ」
 続いて、静佳が口を開く。
「私は剣士と魔剣士の技は一通り修めています。職が武僧ですので、実際に矢面に立っての迎撃に向いているかと。比較的……あくまで比較的ですが、前衛向きの体ではあります。炎や氷、毒や眠りに対しても耐性がありますし、不意打ちにも対応は出来ます」
「砦を築きに行くわけじゃないから、あまり勇まないようにな。4人とも白百合団員じゃないようだが、戦闘行為をするのなら、白百合団に所属してほしい」
 武術のアピールをする2人に、優子はそう言った。
「はい」と返事をして、4人は着席する。
 百合園生の挨拶が終わり、優子は蒼空学園席に目を向ける。
「蒼空学園のアリア・セレスティです。本隊の安全を確保するために頑張ります」
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)がお辞儀をする。
「小鳥遊美羽です。陣で待機して、先遣調査隊の方をサポートしようと思います」
「ベアトリーチェ・アイブリンガーです。救護役としてお手伝いさせていただきます。よろしくお願いいたします」
「コハク・ソーロッドです。僕は陣の設営に協力します。どうぞよろしく」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)がそれぞれ挨拶をした。
「よろしく頼む」
 続いて、優子は教導団の席に目を向けた。
「琳鳳明です。教導団から提供された火器の管理を主な役割とし就きたいと考えています」
「そうだな、キミなら安心して任せられる」
「はい、任せて下さい! 専門家という訳ではありませんが、銃火器の扱いや保管方法、管理なんかは慣れてますからっ、雑用で!」
 張り切る鳳明の様子に、優子がくすりと笑みを見せた。
「比島真紀であります。精鋭を支えるバックアップ隊は地味でありますが、その支え無くして精鋭たちも活動できませんので。むしろ、自分の性格からすると地味にこつこつと地歩を固めるほうが有っていると思います」
「サイモン・アームストロングです。バックアップの救護要員として活動予定です」
 比島 真紀(ひしま・まき)サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)の言葉に、優子が頷く。
「教導団の方には色々助言を賜りたいものだ。よろしく頼む」
「薔薇の学舎のクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)だ。騎士の役割として壁として群がる敵を押し止める事と考えています。『女王の加護』も有効に利用できるだろう。壁を維持できれば、その間に後衛が支援攻撃を繰り出したり、徹底の体制を整える事ができると考える。チーム全体の盾・鎧として抜かれないように、全員での生還を心がけます」
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)だよ。罠に関しての知識も多少あるから、壁の役割以外にも多少役に立てるかもしれない」
「先遣隊としては、壁になる必要が出てしまった時点でアウトなのだが、万が一の時には頼りにさせてもらう」
 優子のその言葉に、クリストファーとクリスティーが首を縦に振った。