リアクション
休憩後に、もう一度祈りを捧げた後、一行は村の跡地から森へと出てきた。 〇 〇 〇 美しく飾られた薔薇の学舎の校長室から、生徒であるクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)とクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)が出てくる。 2人はヴァイシャリーの地下の調査結果について覚えている限りをレポートにまとめ、校長のジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)に提出したのだった。 「洞察力の不足など己の力不足を実感した。次があるなら、もっと上手く立ち回りたい」 と感想を残したクリストファーに、ジェイダスは労いの言葉をかけてくれた。 「傷は癒えた?」 廊下を歩きながら、クリスティーがクリストファーに問いかけた。 「あ、うん。心配かけてごめん」 クリストファーは素直に、クリスティーに謝罪をした。 離宮で、敵に洗脳されていたジュリオ・ルリマーレンと戦った際、クリストファーはジュリオの長剣で、顔を大きく切り裂かれていた。 その傷は……完全に消えることはなかった。 「無茶してごめんな」 傷跡に触れながら、もう一度言うと、クリスティーは軽く首を横に振った。 「その体に刻まれた歴史、勲章はキミのもの。ボクがそれを奪う事は許されない行為だ。ボクもこの体に歴史を刻んでいくよ」 クリストファーとクリスティーはパートナー契約の直後に体が入れ替わってしまい、以来そのまま過ごしてきた。 クリスティーは元に戻ることを日々考えてきたけれど……そんな停滞、後ろ向きな日々ではなく、今より前向きに人生を歩んでみせると心に決めていく。 とはいえ、戻ることを完全に諦めたわけではないが。 「うん……お互い頑張ろう」 クリストファーはちょっと複雑そうな顔でそう答えた。 身体を返す気はとっくになくなっているけれど、面と向ってそう言われるとなんだかもやもやした気持ちになる。 「あれ? あの人は……」 クリスティーが生徒に案内されながら校長室に向っていく女性の姿に気付く。 薔薇の学舎に女生徒はいない。賓客のようだ。 「神楽崎、さん」 クリストファーが声を上げると、女性――神楽崎優子が振り向く。 「キミ達は戻ってたのか。世話になったな」 軽く頷いた後、クリストファーは優子にこう尋ねてみる。 「今でもアレナの存在は感じられるのかな?」 優子は僅かな戸惑いの表情を見せた後、こう答える。 「……わからない。だけど、私には契約者としての力がまだ残っている。それがアレナと繋がっている証拠だ」 「いつも相棒と一緒の俺が言っても説得力が無いけど、確かに相棒と繋がってるという感触に助けられる時がある」 クリスティーはそう言って、微笑み「優子さんだってそうだと思うよ」と、続けた。 優子は少しだけ笑みを浮かべて、頭を下げると校長室の方へと歩いていった。 クリストファーとクリスティーは彼女を見送った後、顔を合わせて軽く笑みを浮かべた後、並んで喫茶室の方へと歩いていく。 帰還の祝いと百合園からの来客の歓迎に、スイーツ愛好会の面々がささやかながら有名店のケーキを振舞ってくれるとのことだった。 |
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