リアクション
〇 〇 〇 東シャンバラのロイヤルガードの、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と緋桜 ケイ(ひおう・けい)達は一足先に探索に出ていた。 「よろしくお願いしますねっ……こちらには、ミルミさんもファビオさんも来てないみたいですけれど」 ソアが、同行者のミクル・フレイバディに挨拶をする。 合宿所に向かう道中、ミルミと一緒にいるミクルの姿も見かけていた。2人が友達に戻れたということを、ソアはとても嬉しく感じていて、自然と笑みが浮かんだ。 ミルミは百合園生達と共に合宿所の掃除を担当しているようだが、ミクルは賊の討伐に協力するそうだ。 ミクルの他にも、ロイヤルガードに興味を持っているリュシエンヌ・ウェンライト(りゅしえんぬ・うぇんらいと)とパートナーのウィンディ・ライジーナ(うぃんでぃ・らいじーな)達も、この探索班に加わっていた。 「そういえば、ファビオのやつはどうしたんだ?」 ケイがミクルに尋ねた。 「合宿に来てるよ」 「何してるんだ? あいつ、みんなで仲良く合宿ってキャラじゃなさそうだよな。すぐ飛び去ったり、意外と照れ屋さんみたいだからな。はっはっは!」 雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)がそんなことを言い、笑い声を上げる。 ミクルもくすくす笑みを漏らした。 「ゼスタさんの護衛か何かを任されてるみたいで、あまり自由な行動は出来ないみたい。でも、賊のこと気にしてたから、加勢に来てくれるかも?」 「そうか、久しぶりにミクルと大手を振って会える機会なのにな、一緒に行動できないなんてなあ」 ケイは空を見回しながら言うが、ファビオの姿はなかった。 「毎日電話で話をしてるから会わなくても大丈夫だよ。……ってなんだか恋人みたいだけれど、僕は別に彼に恋愛感情はあったりしないからね!」 「そういわれると、もしかしてと誤解しそうだ」 そして、ケイとミクルは笑い合った。 「そういえば、ミクルは戦闘、大丈夫? 賊と会ったら戦うことになるけど」 「ケイ……ほどじゃないけど、魔法の心得はあるから少しは援護できると思う。前線はちょっと無理だけど」 「そっか、無理すんなよ」 「うん、ありがとう。ミルミちゃん達の方に賊が行かないように、頑張らないとね」 「対岸行くわよ」 辺りに警戒しながらも、和やかに会話をする2人の後ろから少女の不機嫌そうな声が響いてきた。 「ルプス、私も行きます」 浅瀬を見つけて、対岸へと進み出すルプス・アウレリア(るぷす・あうれりあ)の後に、親友のルア・イルプラッセル(るあ・いるぷらっせる)が続く。 「なんだか機嫌悪そうだな……? 俺達も行くか」 ケイはいつもにましてルプスの態度が厳しいことに疑問を覚えながらも、2人と一緒に対岸の探索に移ることにした。ミクルもケイの後に続く。 「では、私達はこのまま川上の方に向かいますねっ」 ソアとパートナー達はそのまま進むことにし、2手に分かれることになった。 「それにしても、昔の魔術結社は、どうしてこの渓谷に拠点を築いたのかしらね? 人里から離れたかったのか、それともこの渓谷自体に何か意味があるのか……」 ソアのパートナーの『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)が辺りを見回しながら、疑問を口にする。 「凄い建物じゃなかったみたいですし……うーん、人里から離れたかったから、じゃないでしょうか」 ソアは描いている地図を見ながら、そう言った。 「ご主人、方向音痴なのに地図とか書けるのか?」 ベアがソアの手元を覗き込んで言う。 「か、書けますよっ! ……読む方なら、たまに間違えますが」 「なるほど。でも、書いた後、読み間違えたら書いた意味ないじゃないか!」 「うっ……」 「はいはい、読むのはやってあげるから、進むわよ」 パシパシと、ソラはソアとベアの背を叩いて、川上に向かって歩き出す。 「へぇ、存外ロイヤルガードって……」 一連のやりとりを見ていたリュシエンヌが呟いた。 そういえば、ロイヤルガードの隊長の神楽崎優子は、十二星華のサジタリウス……そうアレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)のパートナーだ。 アレナ……とはあまり相性が合わなそうだったが、優子の新たなパートナーだというゼスタは癖がありそうで、中々面白い人物に見えた。 「船をそのままにしておくことはないでしょうし、船舶が入り込めそうな場所があれば、怪しいのだけれど……」 ウィンディは周囲をよく見回し、怪しい場所を探すが今のところ船が入り込めそうな場所は発見できていない。 (ロイヤルガードの腕前、見てみたいものね) リュシエンヌはそんなことを思いながら、ウィンディと共にソア達の後に続いていく。 〇 〇 〇 囮船となる小舟は作成することを予定していたが、同行希望者が多かったこともあり、ヴァイシャリーから合宿に訪れたメンバーが乗ってきた船、そのものを使用することになった。 ヴァイシャリー湖に近い人里のある場所まで、物資買出し船に見せかけて航行していく。 ついでに合宿に必要なものも買い入れて、売りつけたりして、伽羅はお小遣い稼ぎもしていた。 エンジンもついていたが、あえて艪櫂で一見無防備に、交代で船を漕いでいく。 「川の流れと共に、歌を〜。いつまでも続く、歌を〜♪」 ノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)は船の上で、時々擬似翼をパタパタ羽ばたかせて飛びながら、歌を歌っていた。 すれ違う船の船員達は、ノアに声をかけたり手を振ったりしてくる。 ノアは笑顔で手を振り、応えてあげていた。 長時間、そうして行き来を繰り返していたが、すれ違う船はとても少なく、賊船と思われる船も発見できずにいた。 「少し大きめな船が来たよ」 観光客に扮しているリオン・ボクスベルグ(りおん・ぼくすべるぐ)が仲間に声をかける。 「さて、お宝持ってるかしらねぇ」 隣では、蓮城 紫(れんじょう・むらさき)が怪しく目を煌かせた。 「大地を駆けて〜、染み渡り。響き渡る音〜♪」 ノアは賊の気を引くための歌、そして驚きの歌、幸せの歌を歌っていく。 その中型船は普通の商船のようだった。 しかし、このあまり広くはない川には少し大きすぎる船だ。 こちらの船とすれ違うことは出来るだろうが、事故の危険性があるため、か。 互いに速度を落としていく。 中型船の船室から甲板に男達が沢山出てくる。 ノアはとびきりの笑顔を浮かべて、両手を振ってみた。 途端、彼らの手から何かが投げられた。 「あっ」 ノアの身体に軽く触れたソレは、彼女にべったりとくっついていた。 ロープの先に、粘着物がくっついている。 ロープが引っ張られ、ノアの身体が浮かび上がった。 「何するんですか。私は虫ではありませーん」 強い力が引き上げられ、擬似翼程度では抵抗できない。 レン・オズワルド(れん・おずわるど)も、商人を装い彼女の傍にいたが、すぐには動かなかった。 まだ、賊と断定は出来ない。もう1アクション欲しいところだ。 「間違いありますまい。乗り込みを防ぎまするぞ」 漕ぎ手を担当しながら、殺気看破で探っていた皇甫 嵩(こうほ・すう)が、櫂から手を離す。 続いて、フックのついたロープが中型船から投げつけられ、手摺に絡みつく。更に、縄梯子が架けられていく。 「手を上げて、一箇所に固まれ。命だけは助けてやるぜ」 中年男性がこちらに銃を向けてきた。 途端、レンは栄光の刀を投げて、ノアを引っ張り上げているロープを切った。 「レンさん、遅いです……」 ノアはパタパタと飛んで、ふらふら河原へと下りていく。 「固まっていただくのは、貴方達の方だよ?」 リオンはそう言い、氷術を放ち、銃を向けている男の腕を凍らせた。 「さあて、どんな宝があるかしらぁ?」 紫は賊が引っ掛けらたロープを伝って、賊の船へと上っていく。 「抵抗する者は撃て」 リーダーと思われる男がそう声を発し、十数人の賊が契約者達の船へと銃を向けてきた、が。 「お先に失礼」 船を漕いでいた劉 協(りゅう・きょう)が、かぶせてあった布を払い、機関銃を取り出して賊船に向かい撃ち鳴らし弾幕援護。 「撃つのはこちらも同じですよぉ〜」 光学迷彩で姿を隠していた伽羅がスナイプで狙いを定め、吹き矢で賊の急所を狙う。 「こちらからもいくでござるよ」 うんちょう タン(うんちょう・たん)も別方向から、伽羅と同様に、吹き矢で賊の急所を狙う。 「援護します、接近してください」 協が機関銃で援護をしていく。 伽羅とうんちょうは、賊船の傍まで走り、賊を1人1人吹き矢て倒していく。 ガクンと賊船が揺れる。 河原に姿を現した諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)が氷術を、風祭 隼人(かざまつり・はやと)が、冷線銃で進路の水を凍らせたのだ。 完全に止まりこそしなかったが、賊船は左右に大きく揺れる。 「銀髪の女性を見つけたら、教えて下さい」 孔明は使い魔を放ち、自分自身は木陰に隠れる。 陸路や空路から船を追っていた契約者達が河原へと次々に姿を現す。 「ロイヤルガードです。大人しく投降しなさい!」 揺れる船に近づきながら、ロザリンドが警告する。 「撃て、引き離せ、後退する!」 リーダーがそう声をあげ、銃弾が河原へとばら撒かれていく。 船が揺れているせいもあり、その殆どは契約者にあたりはしない。 ガダン 再び、後退しようとした船は大きく揺れる。 「逃げられませんよ?」 ざばっと川から顔を出したのは、海豹村 海豹仮面(あざらしむら・あざらしかめん)。 川に潜り、揺れる船に接近し、船底に攻撃を加えたのだ。 船底に空いた穴から、賊船の中に水がじわじわ流れ込んでいく。 「くそっ、一先ず退くぞ! 各々戦利品を持てるだけ持て」 リーダーの男が指示を出し、賊達は契約者に遠距離攻撃をしながら、荷物を持ちロープを伝って、あるいは飛び込み、川へと下り始める。 「だから、逃げられませんよ〜」 「ぐあっ」 飛び降りた賊に、海豹仮面は泳いで接近し武器を突き刺していく。 「魔道書は水に弱いと思うんです。だからいるなら、船の中!」 橘 美咲(たちばな・みさき)は川から自分達の船に上り、そこから賊の船へと渡っていく。 「さーて、ぱぱっと片付けちまおうぜ! 楽しい合宿のためにもな!」 ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)も、美咲の後に続いて、賊の船へと向かう。 「甲板にいる賊の人数は20人ほどのようです。狭い船室の中にも数人まだ残っていると思われます」 刀真は上空から探っている封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)から聞いた情報を伝えながら、船に飛び乗り、そこから賊船へジャンプで飛び乗った。 彼の荒々しい動きに、契約者達の船もグラリと揺れる。 パートナーの 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)も刀真の後に続き、玉藻 前(たまもの・まえ)は、空飛ぶ箒で接近する。 「くっ、政府の犬がッ!」 賊が剣を抜き、美咲に斬りかかる。 「降伏してください!!」 対して、美咲が持っているのは木刀1本だ。 賊の剣が美咲の肩を切り裂く。 美咲の木刀は賊の肩の骨を砕いた。 「抵抗はやめて下さい」 そのまま美咲は体当たりで、賊を川に落とす。 「この程度、唾をつけておけば治るはずです!」 傷を負った肩に軽く触れて程度を確かめて、美咲は再び木刀を構える。 そんな彼女の足元に――血の雨が降り注いだ。 「ユリアナ・シャバノフは何処にいる?」 刀真が、感情感じられない声でそう言い、光条兵器で敵の首を刎ね、心臓を貫き殺していく。 「うわっ……。これは西のロイヤルガードの方針?」 血はウィルネストの足にも飛び散っていた。 「狙い……撃つ!」 月夜は、狙いを定めて賊を撃ち抜き、逃げようとする賊の方へは目くらましも兼ねて光術を放つ。 「逃がさない……!」 そして手摺付近に集まった賊に、放電実験を放つ。 「お前等邪魔だな……」 アボミネーションでおぞましい気配を発しながら、前は更に絶対闇黒領域を発動。 「我が一尾より煉獄が出!」 そして、容赦なくファイアーストーム、エンドレス・ナイトメアで弱っている賊もろとも、まとめて息の根を止めるつもりで、倒していく。 刀真は切落した首を、賊へ蹴り飛ばし、動揺する賊に「ユリアナを出せ」と低く言う。 賊は「知らん、知らん……」と言いながら、ゆっくり後退っていく。 「ひっ……」 川へ飛び込もうとした賊の襟首つかみ、乱暴に看板に転ばさせ剣を振り上げる。 「今まで金も命も好きなだけ奪ってきたんだろ? 因果応報だ此処で俺に殺されろ」 瞬間、飛んで来た吹き矢がその賊の首に刺さり、賊は昏倒する。 「聞くことがありますから、沢山捕らえた方がいいですぅ〜」 「なるべく殺さず、捕虜とするでござるよ」 うんちょうは、ブロウガンでクロスファイアを放つ。 「うぎゃっ」 飛び降りようとした賊が、船の中に倒れた。 「さて……」 そこに、嵩が降り立つ。 毒を受け、火達磨になった賊を縄で縛りつけた後、キュアポイゾンをかける。 「大人しく船から降りて、話しを聞かせてもらえますな?」 「ぐうううっ」 賊は抵抗しなかった。 「賢明な判断でござります」 嵩はそうして倒れている賊達を縛り上げて、船から下ろしていく。 「話しが出来る程度に、だな。りょうかーい!」 ウィルネストは、船室から出てきた賊達にファイアストームを放つ。 「盗品は燃やしちゃもったいねぇよなー」 荷物を担いでいる男には闇術を放って倒す。 「手加減するのか。余計つかれるな……近くに温泉があるのよな? 終わったら一緒に行くぞ、共に入ろう」 前がため息交じりに、刀真にそう言う。 「温泉? 一緒に行くのは良いが共には入らん」 言いながら、刀真は光条兵器を振るい、逃げる賊の背を斬り船の中に倒した。 「終わったら温泉に、女の子達の料理、美味いスイーツ!」 ウィルネストは魔道銃で賊達の足を撃ちぬく。 「夜の枕投げ大会なんかも待ってるだぜ〜!」 魔法も織り交ぜて、その場に倒していく。 |
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