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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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第四師団 コンロン出兵篇(最終回)

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神を殺せ/シクニカ
 
 話は再び、【桐生組】と神龍騎士ラスタルテが対峙するシクニカへと戻る。
「さすが神龍騎士、手強いなぁ……」
 魔道銃を両手に一丁ずつ持った桐生 円(きりゅう・まどか)は、ひっそりとため息をついた。雑魚の龍騎兵は配下の死霊兵に応戦させているので邪魔は入らない。円とパートナーの吸血鬼オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)、それにアルコリアとナコトの四人で相手をしているのに(アリウムとラズンはそれぞれ魔鎧化している)、いまだラスタルテを斃せてはいないのだ。
「さっくり指揮官を排除して、敵の士気を挫きたいところなんだけどね。夜霧のコートで姿を消して死角から攻撃しても防がれるって、どれだけ能力が高いのかしら」
 オリヴィアが肩を竦める。
「シーマちゃんはさっきサクリファイス使って臨死状態だし、魔力はまだアリウムの『錬気』があるけど、使うと隙ができるし、正直ジリ貧だよね……」
 ラズンがリジェネレーションを持っているアルコリアは、自分で回復しながらラスタルテとやりあっているが、回復量は多くはないので、攻撃を畳み掛けられれば一気に危険な状態に陥る可能性もある。
「……よし、奥の手を使うことにするよ。オリヴィア、アリウム、後は頼むね」
 円は何かを決意した顔で、ナコトに視線を送った。
「……わかりましたわ」
 ナコトはうなずく。うなずき返した円は、残っていた魔力のすべてをラスタルテに向けて放った。
「パラダイス・ロスト! 牛ちゃん、後は頼んだ……」
「マイロード、貴女の勝利の為に!」
 ナコトも円と同様、パラダイス・ロストを使ってラスタルテに魔力を叩き込む。
「くッ!」
 ラスタルテは龍にブレスを吐かせた。魔力の塊とブレスがぶつかって、凄まじい爆発音があたりに響く。
「きゃーっ!!」
 人型に戻って、意識を失った円を支えていたアリウムと、ナコトを抱き止めたオリヴィアが悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。しかし、アルコリアは。
「まどか! 貴女の友情に応える為の弾丸を。ナコト! 貴女の忠義に応える為の白刃を!」
 渦を巻き荒れ狂う目に見えぬ力の間をくぐって、ラスタルテに接近した。至近距離から放たれた攻撃をかわし切れずに、ラスタルテの甲冑にひびが入る。
「もう一押しッ!」
 アルコリアがとどめの『真空波』を放とうとした、その時。
 アルコリアの横面を、見えない何かが張り倒した。一瞬気を取られた隙に、ラスタルテは距離を取る。
「邪魔するんじゃないよ!」
 上空を警戒していたミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が、自分のさらに上を飛ぶ飛龍の姿に気付いて、オーロラハーフで突進した。
「撤退の命が出たのです。退かれよ!」
 女の声がした。高い所を旋回しているので、下から顔を確かめることはできない。
「だから、邪魔するんじゃないって言って……!」
 上昇するミネルバの鼻先に、『アシッドミスト』が放たれる。ミネルバは慌てて酸の霧を回避した。
「何者です?」
 邪魔をされたアルコリアは、不機嫌そうな渋面で飛龍に向かって問いかけた。だが、答える声はない。
「何があったのだ? この状況でただ退けと言われて退けるものではない」
 一方、明らか飛龍の上の女の正体が判っているらしいラスタルテは、彼女の近くまで龍を上昇させて尋ねた。
「ここに時間をかけるより、先に片付けておくべきものがあると判断されたのです!」
 女は冷ややかな声で答えた。
「神が逃げるの!?」
 やっと状況が優勢に転じたところ、しかも仲間たちがくれたおそらくは最後の好機をふいにされたアルコリアが叫ぶ。ラスタルテはあからさまに不愉快そうな表情で、アルコリアをかえり見た。
「我は個人的な仕合のためではなく、『戦争』をするために戦場に居るのでな」
 アルコリアはラスタルテを睨みつけたが、ラスタルテはもう振り向かず、飛龍に乗った女と共に戦場を後にした。帝国の兵も、彼に従って退いて行く。追いかけようとするアルコリアとミネルバには、再度飛龍から酸の霧が飛んだ。
「くっ……」
 臨死状態になってしまっている仲間たちのこともある。アルコリアとミネルバは追撃を諦め、シクニカでの戦闘は意外な形で幕切れを迎えることとなった。
 
 
「あら、撤退してしまうのかしら……?」
 シクニカ方面へ状況を偵察に来ていたアルフレート・ブッセ(あるふれーと・ぶっせ)のパートナーの剣の花嫁アフィーナ・エリノス(あふぃーな・えりのす)は、飛び去って行くラスタルテとそれに従う飛龍を見て、首を傾げた。
「戦況はまだ、どちらにも大きくは傾いていないように見えましたのに、何かありましたのかしら。とにかく、ミロクシャの香取大尉に報告ですわ!」
 アフィーナは慌てて、通信文をしたため始めた。