リアクション
● ● ● ドゴオオォォォ! 「いっけね……やりすぎたか?」 通路の壁をぶち抜いた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は、さほど反省もしていない顔でぽりぽりと頭を掻いた。 ただいま彼は要塞内部に単独潜入している。 目的は様々な情報やアイテムを手に入れることだったが、そのために一つ一つの部屋を見て回るのは面倒だ。 結果――至った結論は、とにかく真っ直ぐ進んでみることだった。 そのため、部屋や通路の壁をいとわず、ぶち壊して進んでいるのであった。 なんとも無茶苦茶な……。 「お?」 壁をぶち抜いたトイボックスの銃器を収めて、恭也は部屋の中のあるものを見つけた。 それは壁一面にびっしりと埋め込まれたコンピュータであった。 よくよく見れば、その前の席に座っている数名の機晶兵が、瓦礫に潰されて火花を散らしている。 (あらら……) どうやら、壁をぶち抜いた際に、ついでに壊してしまったようだった。 なんとも幸運である。 「…………ナンマンダブナンマンダブってな。なにか良いデータが残ってないかね。……ちょっと失礼するぜー」 機晶兵に供養をしても仕方ないかもしれないが、これも気分である。 恭也は機能を停止した機晶兵たちを拝む終えると、一体の機晶兵をどかし、その席に座ってコンソールを動かし始めた。 それほど機械類に強いわけではないが、こんなものは運である(本当か?)。 カチャカチャと適当に動かしているうちに―― ピコッ……シュオンッ……――ヒュッ―― いくつものデータがモニターに映し出され、そこが要塞内に数あるデータベースの一つだということが判明してきた。 「こりゃ、天空城とかいうところの機晶兵どもの強化データか? あとこっちは……四騎士の残りのプロフィールか……。疑似戦闘の実験用に取ってたんだな。なにかの役に立つか?」 そのとき恭也の頭には、実際の利用方法などがあったわけではない。 が、データというものはないよりはあったほうが良いのは確かだ。持ち帰れば、作戦会議にも使えることだろう。 「こいつとこいつとこいつを……と……へへへっ……いただき〜」 今時珍しい古典的ディスクをさし込んで―― ピピッピピッ――データ移送中―― 「ふんふん〜♪ ふふふ〜♪」 モニターに映ったデータ移動の画面を、恭也は鼻歌を歌いながらのんびりと眺めるのだった。 ● ● ● ヒュッ――スガアアアァァンッ! 「これで……全部倒しただろうかな?」 無数のコンピュータが並んでいる部屋の中で、男がつぶやく。 その手には雷帝の王笏と呼ばれる杖が握られている。杖の先端が貫いているのは、目の前の席に座る機晶兵の胸だ。 男の名はメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)。 そしてその横にいたのが―― 「十分だね。それにしてもここは……資料庫で間違いないかな?」 彼の契約者であるエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だった。 エースはコンピュータの一つに見当を付けると、その前の席に座ってコンソールを弄り始める。 と、同時に―― ドウゥ! ドッ! ドウッ! ザシュッ! ズバァァッ! 入り口のほうから、連続した銃声と、剣の迅る音がした。 その正体は、エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)とリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)のものであった。彼と彼女二人は、倒れている機晶兵を前にして、それぞれに二丁拳銃と細身の片手剣を携えている。 どうやら、駆けつけた機晶兵を瞬時に倒したようであった。 「メシエ、こっちは私たちに任せて」 「近づく敵は排除させてもらいますよ」 二人はそう言って、次なる敵が来ないかと警戒に努めた。 ここは資料庫である。要塞内に数あるデータベースの一つと言って良いだろう。 エースらの目的は、ここから要塞攻略に必要ないくつかのデータを入手することであった。 ヒュンッ――ヒュッ―― モニターに映るいくつもの情報。 エースはコンソールを動かしながら、やがてその一つに目をつけた。 「これは……!」 「要塞内部の地図のようだね」 驚くエースに、メシエが淡々と地図を見つめる。 それらの情報をHCにダウンロードすると、エースはリリアにふり向いた。 「リリア! この情報をみんなに伝えてくれないか!」 「了解! 任せといて!」 エースから放り投げられた銃型HCをキャッチして、リリアはそれをミャンルーと一緒にのぞき込んだ。 ミャンルーというのは、猫のような姿をした獣人だ。ご主人と定めた者の傍につき、旅や戦いのサポートをしてくれる。 ミャンルーのサポートを受けながら、地図データの変換に努めるリリア。 その間に、エースとメシエは、その他のデータを入手していった。 「あまり大したものじゃないけど……ないよりはマシだね」 「アダムや浮遊大陸の歴史が知れれば、それでいいさ。リリア! 飼育施設の場所は最優先で仲間に伝えておけ!」 「わかってるってばぁ! ちょっと待ってよ!」 メシエに怒鳴られて、リリアはHCを操る手を急がせる。 そのときである。 「来ましたね……っ!」 エオリアが警戒していた通路から、新手の機晶兵たちが現れた。 ドゥッ! ドッ! ドゥッ! 入り口に隠れながらエオリアが銃で応戦する。 銃声と機晶兵が撃ち抜かれる音が重なって響き渡った。 「終わったぁっ!」 タンッ――! HCの最後の入力を終えて、リリアが満面の笑みで顔をあげた。 「よし、急いで離脱するよ!」 エースもメシエも、席を立ちあがる。 一瞬後―― ズガアアアアアアアァァァンッ! 資料庫で爆発が起こった。 もうもうとあがった煙の中から飛びだしてきたのは、四人の人影であったという。 |
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