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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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03 ダェーヴァとコープス




 清泉 北都(いずみ・ほくと)は第二世代のイコンルドュテを駆って、コープスの相手をしていた。
(全ての機体は元となっている物の特徴を持っているのなら、ヘリコープスは気流の乱れに弱い筈。爆風で煽れば、多少は自滅してくれるかもしれない)
 北都はそう考えて、各種システムを利用して敵味方の位置を特定する。
「よし……ファイア!」
 そして、ヘリコープスに向かってナパームランチャーを打ち込む。
 すると、その爆発でいくつかのヘリコープスを撃墜するとともに、爆発によって発生した気流の乱れが、ヘリコープスの空中での姿勢制御を困難にし、男体化のヘリコープス同士がぶつかり合ったりするなど、北都の狙いはある程度の効果を発揮した。
「よし、行ける!」
 そんな判断を下した北都は果敢に攻めにかかる。
 コープスの狙いが正確なことを逆手に取って、巧いこと位置取りをし、同士が発生するような状況を作り上げてコープスが攻撃できないようにしながら倒していこう。そんな判断のもとに機動戦に入る。が――
「なっ!!」
 距離にして二キロくらいは離れた地上から思いもがけない狙撃を受け、北都は慌てて緊急回避行動を取る。
 しかし、次の瞬間には別の方向から飛来したミサイルがルドュテに命中していた。
「どういうことなの〜!?」
 思わず、そんな叫び声を上げた。
「……敵は複数のカメラを利用して味方が射線に入らない位置を割り出し、こちらを狙撃。さらにこちらの回避行動と回避位置を予測して回避先に攻撃を叩き込んだ。そう考えるのが妥当でございますね」
 そんな北都に、パートナーのクナイ・アヤシ(くない・あやし)が分析した結果を告げる。
「え〜。それって普通に人間を相手にするより辛くない〜?」
 そう。機械制御故に人間にはありえない複数の視界を共有し、更に並列処理することによって演算速度とそこから導き出される判断や決断も人間などとは比較にならないほど早い。攻撃力や防御力、機動力はイコンやギガースほどの脅威ではない。所詮は通常兵器だ。だが、だからこそその攻撃の意外性や正確性が恐ろしいほどに邪魔だった。
「っ! ギガースの攻撃が!!」
 更にコープスの攻撃を回避した先に、ギガースの生体ミサイルが飛来する。
 クナイの警告を受けて北都はアンチビームファンでそのミサイルを防ぐ。
「……きついですねえ〜。クナイ、敵の分析お願い〜」
「はい。分かりました」
 クナイは銀色の瞳に、知性の光をたたえながら敵の行動を記録・分析していく。数分間のデータの取得と分析の結果を受けて北都は行動方針を変更する。
 イコン用マントで頻繁に姿を晦ませ、『高速機動』と『加速』を使用して敵の目を逃れつつ、ナパームランチャーを叩き込む。それによって思わぬ場所からの狙撃を回避する一方で、周囲のイコンとの連携も活発化させる。
 北都はコープスを相手取りつつも付近にいたギガースを挑発して、その攻撃を自分のイコンに集めつつ、味方に支援を要請する。
 その要請を受け取ったジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が操るセラフィムベースの第三世代イコンヴォーランが、R&Dから戦術のリンク情報を受け取って攻撃をしかける。
「ジヴァ!」
「わかってるわよ、ママ。今回は敵巨大戦力の分析と鹵獲が主でしょ?」
「ええ!」
 イーリャの支持を受けて、ジヴァはイコンを操縦する。慣性の影響で乳白金の髪が操縦席の中で流される。
「いっけえええ!」
 かつての愛機フィーニクスから受け継いだツインレーザーライフルをギガースに発射する。
 そのレーザーは一つ目の巨人に命中し、表面で爆発を起こす。
 巨人は白い体液を流しながら呻きつつも、生体ミサイルを放出して反撃を試みる。
「甘いのよ!」
 だが、それはジヴァの操縦によって回避され、ミサイルは虚しく宙を通り過ぎる。
「危ない!」
 しかし、そこに戦車コープス及び戦闘機コープスからの砲弾とミサイルが飛来する。
「くっ!!」
 必死の回避行動を取るジヴァ。けれどもそこに北都がやられたように、回避行動まで計算に入れた戦車コープスの主砲がさらに飛来して直撃を受けてしまう。
「あったまきた! ママ、どこから撃ってきてる?」
 ジヴァの質問に、イーリャは戦車コープスの位置を分析して伝えた。
「よし……潰れなさい!」
 イーリャはツインレーザーライフルを戦車コープスに向けて次々と発射。現状認識しうる限りの戦車コープスを全て排除することに成功する。
「支援に感謝します〜」
 北都は戦車コープスが一時的に存在しなくなったために、行動の幅が大きく広がっていた。
 そして、その有利を利用して敵の航空戦力を次々に撃ち落としていく。
 レーダーに写りにくい戦闘機コープスに関しては禁猟区を活用してその存在を察知。随時攻撃を加えるという方向で対応していた。
「よし、確保!」
 ジヴァは、弱らせたギガースをグラビティコントロールで動きを封じた上で、超電磁ネットで捕獲。これによってサルヴァが生産した兵器を鹵獲することに成功した。
「それにしても最新資料だとレッドラインという騎馬型が第二世代イコン相当の機動兵器だったそうだけど……今はギガースというのが標準になっているのかしら?」
 イーリャは眼鏡の奥の青い瞳に興味の色と知性の光をたたえながら、そんな疑問を呟く。
 敵兵器の鹵獲は研究者であるイーリャにとっては重用な研究素材となることはもちろんだが、そのような興味も、ギガースを鹵獲することの原動力となっていた。
 実際のところを言うとダェーヴァではサルヴァやダルウィなどの指令級と呼ばれるダェーヴァがそれぞれの支配地域で独自に兵器の開発・生産をしているために地域によってその戦力が全く異なるのだが、そのことを知る契約者たちは数えるほどしか存在していなかった。また、そのために他の地域ではギガースと同等の兵器を生産できるかは全くの不明である。
「さて、ギガースは確保したし、あとはヘリと戦車かしら?」
「そうね、ママ」
 二人は同意すると撃破したヘリコープスと戦車コープスにも超電磁ネットを投射。捕獲した上で土佐に帰還する。
「補給と整備お願いします!」
 イコンから降りたイーリャとジヴァは、補給・整備を担当するアルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)ソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)に自らのイコンを任せ、二人の部下である整備分隊や甲板科分隊を借りて鹵獲したギガースやコープスを無力化した上で分解していく。
 ギガースに関しては生体兵器でありさらなる研究が必要との見解が発生。コープスについては機械と有機体の合成物であり、ダェーヴァの細胞が確認できたが詳しくはしっかりとした研究所での解析が必要という結論に至ったのであった。