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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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【アナザー北米戦役】大統領救出作戦

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06 ネフィリム




「敵の空中戦力は人型と航空兵器の再利用品と。人型の方が厄介なんだろな」
 旗艦マサチューセッツの周辺を飛行しながらそう呟くのはH部隊所属の岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)だ。
「そうね。それと伸宏君、3時方向から敵が接近中よ。注意して」
 伸宏に応じるのはパートナーの山口 順子(やまぐち・じゅんこ)だ。
 順子は索敵をしながら周囲を警戒していた。
 3時の方向からやってきたのは背中に羽根を生やした巨人の編隊で、それぞれに剣や槍を手にしていた。
「あれは、どんな神話を元にしているのでありんす?」
 ハイナの質問が、通信回線を通して流れる。
「……おそらくは、エノク書などに登場するネフィリムのイメージではないかと。神の子にして人間の娘と交わり、後に人間の食料を食べ尽くしたあとに共食いした、とされています。と言っても、定まったイメージはないので、あの天使の羽根をモチーフにしているところからの推測ですが」
「サルヴァ……主の呪いが汝に降りかからんことを……。まあ、ではあれらはネフィリムと呼称しんす」
『了解!』
 キリスト教が日常に根付いているアメリカ人としてはやはり微妙に思うところがあるらしいハイナの下品な言葉を聞かないふりをしながら、全軍の将兵は応答する。
 ともかく、そのネフィリムの編隊が旗艦マサチューセッツに迫ってきており、伸宏はそのことをマサチューセッツに伝達した。
「全艦載機出撃! マサチューセッツを防衛してください!」
 キャロラインからの通信が、土佐、伊勢、ウィスタリアに伝わる。
「よし! 補給も整備も万全だ! とは言え無茶は禁物だぞ!」
 柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)はウィスタリアの格納庫でイコンの整備・補給を担当していた。そこにこの知らせを受けて、準備の終えていたイコンたちを緊急発進させる。

「第一優先は待機していたイコン! 第二優先は補給と整備の終わったイコン! もし数が足りないようだったら補給が終わったイコンはでてもらうからパイロットはすぐに戻ってきてください!」
 土佐のイコンデッキで、アルバートは緊急発進の誘導を行っていた。
「オーライ! オーライ! 慌てないでくださいませ! 順番に発艦させますから、落ち着いて深呼吸をしていてくださいな」
 ソフィアはイコンをカタパルトに誘導灯で誘導しながら、パイロットを落ち着かせるために通信を入れる。
 発艦の合図が出ると、ソフィアは誘導灯の色を変えてパイロットに合図を送る。
 同時に誘導灯の動かし方も誘導用のものから発艦を支持するサインに変更しつつ、ハッチが開ききるのを待つ。
「ご武運を!」
 そして、ハッチが開ききると、発艦の合図を送る。それと同時にカタパルトが動き出し、イコンが艦の外へと飛び出していく。
「敵の性能は、多種多様かつ不明。先行イコン隊は全力で敵にぶつかりその性能を見極めてください!」
 キャロラインからの指示で、イコン部隊が全速を出しながら突撃すると、ネフィリムたちが発光し、ビームの弾幕を展開する。
 緊急退避をするものの、少なくないイコンが被弾する。しかしその一撃一撃の威力はそれほどでも内容で、第二世代でもなんとか戦闘を続けることが可能なレベルのダメージではあった。
「ウィッチクラフトライフル、シュート!」
 閃電のウィッチクラフトライフルから発射された魔力の弾丸が、ネフィリムに飛んで行く。
 事実上弾数制限のないこの魔法の銃から発射される弾丸が次々とネフィリムの群に叩き込まれることによって、伸宏の狙い通り旗艦に近づくネフィリムたちの動きが阻害される。
「……空軍、ネフィリムに攻撃を。あの空中戦艦は友軍の生命線でありんすぇ! 絶対に近づけてはいけんせん!!」
 そして、このハイナの判断が、後々に米軍をも救うことになった。
『こちらAlpha。聞いたか、栄誉ある敗残兵の諸君。我らがお嬢様の命令だ! ありったけのミサイルを叩きこめ!!』
『オーケーボス! あんな偽物の天使なんか、俺達の手でぶち落としてやりますよ!!』
 そして、編隊を組んだアメリカの戦闘機が一斉にネフィリムの群れに向かっていく。
『ビームが来るぞ!』
 その言葉ととともに、一斉に回避行動を取る戦闘機たち。空中で機体をひねりつつ180度回転し、再びネフィリムの周囲を取り囲むと、一斉にミサイルを発射する。
 いくつかのミサイルは迎撃されるが、迎撃されないミサイルもある。迎撃を免れたミサイルがネフィリムに迫り、幾つもの爆発が広がる。
 この米空軍の援護によって、イコンは発艦直後の無防備な瞬間をネフィリムに狙われずにすんだため、かなりの戦力を保持したまま無事に展開することが出来たのであった。
「米軍の支援に感謝する!」
 伸宏はそんな通信を飛ばしてから、接近してくるネフィリムに対して新式ビームサーベルで斬りつける。
 長い槍を持ったネフィリムがそれを受け止めるが、伸宏はすぐさまビームサーベルを引き戻しつつ20ミリレーザーバルカンを発射する。
 それが牽制となってネフィリムに出来た隙に、伸宏は改めてビームサーベルを叩き込む。
 振り下ろしたサーベルは右肩ごと腕を切断し、更に返す刀で水平に切り払ったサーベルが、ネフィリムの銅を両断する。
「量産型だけあって、同じギガースでもワンオフの連中よりは弱いみたいだな」
「伸宏君、艦砲射撃きます。退避を!」
 ソフィアの指示を受け、伸宏は機体を操作する。
 次の瞬間マサチューセッツ、土佐、伊勢、ウィスタリアの四隻の艦船の艦砲射撃が、ネフィリムの群れをなぎ払う。
『ヒュー! さすが規格外の連中だ』
『よし、このまま一気に戦果を稼ぐぞ! 全機、フォーメーション!』
『了解!!』
 そして、勢いに乗った米空軍の援護が、更に続く。
『陸軍も負けるな。SAM発射! 偽天使共は速度も高度もヘリと大差ない! 戦車砲も撃ちこんでやれ!!』
 陸軍からも対空ミサイルが、更には戦車砲がネフィリムに次々と打ち込まれる。
『パワードスーツ隊! 前へ!!』
 そして、パワードスーツ部隊の重機関銃までもが、ネフィリムに叩き込まれる。
 それらの米軍の必死の攻撃もあって、旗艦に近づくネフィリムたちは一掃されたのであった。